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ポイント

中国はここ1年で、投資家の注目を集める数多くのニュースの発信源となってしまいました。米国との貿易戦争、経済成長の減速、そして直近では新型コロナウイルスと、世界第2位の経済大国に影響を与えてきた一連のニュースに投資家はピリピリしています。こうした状況でこそ、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に注目することが重要です。

 

新型コロナウイルスの急速な感染拡大が2020年1-3月期の中国の経済成長に打撃を与えているのは間違いありませんが、影響の度合いは現時点では不明です。まずは以下の10の要因に注目しています。

 

(1)中国政府の対応

中国政府の新型コロナウイルスの感染拡大に対する反応は早く、ウイルスを封じ込める目的で意図的に短期成長を犠牲にする対策を講じました。これに対し、2002年後半に発生したSARSのケースでは、中国政府がその危機の深刻さを理解するのに2003年4月までかかりました。今回は、より詳細で透明性の高い統計の発表とともに、前回より早期に警告が発せられました。

 

(2)中国経済への影響

SARSにより2003年の中国経済成長は約2%下押しされたと見られます。特に、観光業および関連セクターは最も強い打撃を受けました。また、小売売上高も、2003年1-3月期の+9.2%(前年比)から2003年4-6月期には+6.8%(同)まで落ち込みました。その一方で、不動産セクターや固定資産投資、鉱工業生産は早く立ち直りました。今回も、特に観光業については、同様のパターンが期待できる可能性もあると見ています。2003年以降のe-コマースの隆盛や物流ネットワークの自動化の進展により、小売セクターが受ける影響も少なく済む可能性があります。

 

(3)経済刺激策

世界では潤沢な流動性供給が維持されています。中国人民銀行(中央銀行)は2月3日に1.2兆元の大規模な資金供給を行ない、リバースレポ金利を10ベーシス・ポイント引き下げました。今後は、様々なレベルの需要創出の財政刺激策も期待されます。そうした策が経済成長を下支えし、新型コロナウイルスの発生により縮小した分を相殺すると見ています。中国政府は今もなお、2020年のGDP成長率の目標を6%程度に維持していると考えます。

 

(4)世界保健機関(WHO)

世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスの感染拡大について国際的緊急事態宣言をした一方で、渡航禁止令の発令を一歩手前で踏みとどまりました。その理由は、今回のウイルスは人から人への感染のみで、貿易や貨物輸送は影響を受けないとの判断がされたからです。これにより、感染拡大の抑制に向けた協力関係と財政支援が可能となりました。また、SARSをはるかに上回るスピードで今回感染が拡大した一方で、現時点では致死率は前回より低いことが示されています。

 

(5)中国の消費者

中国の個人消費は、2003年にはGDPの35%程度であったのに対し、現在では約58%を占めています。新型コロナウイルス発生前、中国の小売は堅調さを維持していましたが、(前述の)自動化やeコマースの増加を考慮すれば、感染拡大中に外出できない中国の人々がある程度の消費行動を確保することは考えられます。

 

 

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(6)カレンダー(暦)

中国のいくつかの省では春節(旧正月)の連休期間を2月10日まで延長し、学校は3月の上旬まで休校となりました。海外の民間企業は最低でも3月上旬から下旬までは中国とのビジネスを禁止し、シンガポールでさえも会議がキャンセルとなっています。ウイルス感染が更に拡大するか否かによっては、世界経済は大きな痛手を被ることになるでしょう。中国のビジネス再開時期について注視が必要です。

 

(7)国内経済

徹底的な感染拡大の抑制策を実施することで、消費と資本の海外流出を抑え、自国回帰により中国経済をサポートする可能性が考えられます。国外へ向かっていた投資資金が再び中国企業へ向かうことで、国内経済の支援材料となるケースなどが想定されます。

 

(8)ピーク

2003年4~5月にピークを迎えたSARSの感染拡大は、6月までに終息しました。今回、迅速な対応と世界的な協力が得られれば、ピークが早まる可能性もあるでしょう。経済への影響を占う上で、感染拡大のピークの時期が鍵となります。

 

(9)不動産セクター

新型コロナウイルスの感染拡大前の過去4年間、中国の不動産セクターは高いパフォーマンスをあげていました。当セクターのファンダメンタルズは堅調さを維持しているものの、ウイルス感染拡大のピークが早い時点でやってくるか否かを語るには時期尚早です。2月、3月のデータがどのように推移するか見極める必要があります。買い手の調査を妨げる「封鎖」により、2月のデータは明らかな落ち込みを示すと思われます。更なる下落の兆しが見えるか、もしくは上昇の予兆が見えるかは、3月のデータが鍵となります。需要が回復すれば、2020年下期の中国経済を強く牽引するでしょう。逆に不動産セクターで下降傾向が見え始めたら、中国経済と成長見通しに大きな打撃を与えることになるでしょう。

 

(10)中国をオーバーウェイト

セクター選別に留意は必要ですが、引き続き中国へのオーバーウェイトを維持します。今回の新型コロナウイルスの感染拡大という難局においてもe-コマース関連企業は好業績が見込めると考えられます。新型コロナウイルスの影響が収束した暁には、現在は第一段階にある米中通商協議の進展や、様々な困難から自国経済を守る中国当局の力が、2020年の中国の経済成長を下支えすると考えます。目を見張るような経済成長を遂げたころと比較すれば、中国経済はかなり減速してはいますが、6%という成長目標は(もし達成すれば)世界的に見て高水準なレベルなのです。

 

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国、10のポイント』を参照)。

 

 

 

(2020年2月20日)

 

 

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