年金受給額の減少、受給年齢の引き上げ…国民の不安を煽るような報道・情報に溢れている現代。テレビを見ても、「難しい問題を取り上げるばかりで、具体的な解決策がわからない…」という人も多いのではないでしょうか。そこで本連載では、株式会社マイエフピー代表取締役・家計再生コンサルタント/ファイナンシャルプランナーの横山光昭氏が、お金の知識を、幅広く、そしてわかりやすく解説していきます。

将来の支出、想像するだけで気が重くなるけど…

前回は、老後2000万円問題などを取り上げながら、お金にまつわる基礎的な知識について解説しました(関連記事『年金受給見込み額「17万円」、老後が不安…貯金もできてない』)。本記事では、自分に適した「お金を貯める」方法について解説していきます。

 

私たちの人生には、日々の生活費のほかに、まとまった額のお金が必要となる場面が多くあります。結婚をしたり、子供の教育費がかかったり、住宅を購入することもあるでしょう。マイカーを買い換える、ということもあるかもしれません。もちろん、老後のための資金を蓄えていくことも忘れてはいけません。

 

自分や家族の考え方、価値観によって必要となる金額は変化するものの、結婚すると、新居の準備・新婚旅行等も含め、平均で総額300〜400万円ほどかかります。その後、子どもが誕生した場合、塾や習い事などの学校外活動費を含めると、高校までで600万円、大学では600万円ほど必要です。

 

日々の生活費のほかに、ローンの返済や大きな支払いに向けての貯金をしながら、さらに老後資金を貯めるというのは大変なことです。では、どのように貯めていくとよいのでしょうか。

「節約は仕事に支障が出そうで嫌だな…」

お金を貯めたいと家計相談にきた会社員のBさん(32)は、1年後を目標に彼女(30)と結婚したいと考えています。

 

少しずつ結婚式場などの情報を集めていますが、自分の貯金が少なく、十分な準備ができていないまま新婚生活に入るのではないかと心配しています。

 

貯金を増やすにはムダな支出を減らせばいいことはわかっているものの、一生懸命働いて生活している今、ムダな支出は思い当たりません。食費を抑えたり、交通費をケチって歩いたりするなど、無理な節約も考えましたが、「いや~仕事に支障が出そうで嫌だな…」と思ってしまいます。とはいえ、「そうもいっていられないほど生活がキツくなる」ことも実感しています。

 

貯金するために大切なのは「自分が『何に』『いくら』使って生きているのか」を知ること。つまり自分の支出を把握することです。

 

相談時のBさんは、自分の食費や水道光熱費に毎月いくら支払っていて、飲み会などもいくらかかっているのかを把握していませんでした。かろうじて知っていたのは、家賃と定期代程度です。

 

このままやみくもに節約をしても、本当に必要なお金(食費/自己投資金)を削って、お腹を空かせたまま生活送って…せっかくのチャンスを逃すことになりかねません。

 

そうならないためには、自分が何にいくらのお金を使って生きているのかをある程度把握しないと、どの支出を削減すべきかがわからないままになってしまいます。

「消費・浪費・投資」3つに分類して考えてみよう

この場合、「支出を把握する」というと「家計簿をつけなくちゃいけないんじゃないの?」と思うかもしれません。確かに記録は必要ですが、難しく考える必要はありません。

 

月ごとに口座やクレジットカードから引き落とされる金額は、通帳やインターネットから確認ができます。あとは日々財布から出るような費用がいくらかかっているのか、大まかにでも把握できればよいのです。

 

初めから細かく食費、日用品、生活費…などと、費目に分類するのが面倒ですよね。まずはお金を使ったときに、「消費・浪費・投資」といった3つの「使い方の基準」を記録をする簡単な方法で十分です。

 

この場合、「消費」は生きるために必要な支出を指します。適正な食費、水道光熱費、家賃など、生活に必ず必要な支出のことです。「浪費」は明らかな浪費、いわゆる無駄使いです。そして「投資」は自己投資と金融投資(将来への投資)の2つを含みます。

 

それぞれの使途の理想的な割合は、「消費:浪費:投資=70:5:25」(世帯年収800万以下の場合)です。この数字に近づくと、お金が貯まりやすくなると考えられます。

 

記録を続けていくうちに「消費が多いけど、本当にムダはなかったか」「投資が多いけど、本当に投資になっているのか」、など支出の内容を振り返ることが容易になり、ムダな支出を抑えるきっかけになります。そして「実際、食費はかけていたんだろうか」といった興味を持てたら、少しずつ費目で把握していけばよいのです。

 

手書きで記録をするのではなく、それぞれ消費・浪費・投資用と、3つ用意した箱にレシートをわけて入れておき、曜日を決めて集計してもよいでしょう。

 

今はキャッシュレス決済が普及してきているので、アプリの支出記録をもとに集計、振り返りをすることもできます。自分に合った方法で、まずは支出を把握しましょう。大雑把でも問題はありません。

 

レシート
レシート

 

この話を聞き、Bさんは家計簿の記入の継続に自信がないとのことだったので、レシートを3つの箱にわけることから始めました。レシートのもらい忘れはメモで代用です。

 

3ヵ月ほど続けると、自分の支出傾向が見え、ムダもわかってきました。お金を簡単に管理するだけで、食事などの心配をすることなく、また無理にガマンなどしなくても、毎月お金が残る暮らし方ができるようになってきました。こうして残った金額は、毎月先取り貯金をしても問題がない金額です。

「使う貯金」と「貯める貯金」を別口座で貯めよう

貯金の最低限の目安は、毎月の生活費の「7.5ヵ月分」です。しばらく大きな支出の予定がない方や、会社員で収入がある程度安定している方などは、手取り月収の7.5ヵ月としてもよいでしょう。

 

貯金を始める前に、まず「使う貯金」口座と「貯める貯金」口座の2つを作りましょう。そして、7.5ヵ月のうちの1.5ヵ月分を、毎月増減する「使う貯金」口座に貯めます。一見、矛盾した表現に思えるかもしれませんが、「使う貯金」とは、冠婚葬祭、急な病気やけがの治療といった突発的な臨時支出の際にも対応するための「生活費貯金」として捉えてください。

 

支出を抑えた暮らし方を意識し、1.5ヵ月分あった貯金を正常に管理するだけで、(時折減ることもあるかもしれませんが)徐々に1.7ヵ月分、2.0ヵ月分と貯金額が増えてくる人は多いはずです。

 

そしたら、「使う貯金」で発生した余剰分を、「貯める貯金」口座へ移します。最低6ヵ月分を目標として貯蓄していきましょう。この貯金は、いざというときの防衛資金くらいに捉え、基本的には切り崩してはいけません。近い将来、必要となる「結婚資金」「教育費の一部」を入れてもいけません。あくまで、万が一何かあったときでも、生活を保障するための貯金です。

 

この貯金も貯まったら、「増やす」段階に移ります。

 

老後資金やずっと先にかかる教育費など、すぐには使わない、長期的に必要なお金を想定し、増やす段階です。貯金も一つの選択肢ではありますが、超低金利時代の今、最善の策を探してみてください。

「貯める習慣」さえつけば支出が増えても挽回できる!

Bさんの今の生活費は約30万円ですから、7.5ヵ月分を貯めるとなると、「225万円」ですね。加えて、結婚資金を貯金することが、今の目標です。

 

ちなみに、相談前の貯金額は約200万円でした。この3ヵ月で支出を整え、毎月5万円の貯金が可能となったので、ボーナスも貯めると、1年で100万円以上貯めることが可能です。

 

あとはどのような結婚式を開くのかによって必要な金額が異なるでしょうから、貯めてからのご結婚でもよし、ささやかな結婚式でもよし、(貯金から引き出すことはあまりオススメしませんが)一時的に支出をして、ご結婚後、ご夫婦で貯金作りに取り組まれるのもよいと思います。貯める習慣さえできていれば、一時的に減ってもまた挽回できますからね。

 

人生は一度きり。お金を貯めるだけが幸せではないので、ご自分なりの判断で加減していただきたいところです。

 

 

横山 光昭

株式会社マイエフピー 代表取締役

家計再生コンサルタント

ファイナンシャルプランナー

 

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