欧州不動産市場:希少な利回りの源泉

欧州/ユーロ圏

ピクテ投信投資顧問株式会社
欧州不動産市場:希少な利回りの源泉

投資のプロフェッショナルである機関投資家からも評判のピクテ投信投資顧問株式会社マーケット情報。専門家が明快に分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報を転載したものです。

 

不動産市場が、魅力的な利回りを追求する長期の投資家に、豊富な投資機会を提供し続けられる理由とは何でしょうか?

 

「トリュフ」を探そうなどとは思わないことです。プラスの実質利回りを提供する投資の機会を見つけるのは、いまや至難の業だからです。このような状況下、欧州の不動産は、数少ない有力な市場の一つとなる可能性があります。

 

世界の主要な中央銀行の多くが金融緩和政策を継続する環境では、特に年金基金等の、相対的に長期の債務を持つ機関投資家の間で、不動産投資の魅力が損なわれる可能性は低いと考えます。

 

ただし、人気は市場価格に反映され、投資が増えるほど、バブルが形成される可能性も高まります。

 

期間:2007年1月1日~2019年10月31日 出所:ピクテ・アセット・マネジメント
[図表1]旺盛な不動産需要、世界の不動産への直接投資金額(百万米ドル) 期間:2007年1月1日~2019年10月31日
出所:ピクテ・アセット・マネジメント

 

資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部

 

住宅需要の変遷

不動産市場に影響を及ぼす構造的な要因を理解することが重要です。

 

一例を挙げると、社会が高齢化しつつあることです。欧州連合(EU)では、65歳以上の人口全体に占める比率が10年前の6分の1から5分の1に増加し、2100年までには3分の1に迫るものと予想されています。

 

単身世帯も急増しており、2015年には、欧州連合統計局(ユーロスタット)が統計を取り始めてから初めて、二人世帯を上回りました。手ごろなサイズの住居の取得がますます困難となり、2階建てで寝室が3つの典型的な家族用の一軒家は、多くの場合、もはや現実的でも魅力的でもなくなっています。

 

出所:ピクテ・アセット・マネジメント
[図表2]単身世帯の増加、EU28ヵ国の単身世帯比率(%) 出所:ピクテ・アセット・マネジメント

 

高齢者向けの住宅や小さな住宅に対する需要が増加の一途をたどる中、共有スペースを備えたサービス付きの共同住宅が増え続けており、こうした傾向が不動産市場に大きな影響を及ぼしています。

 

住居用不動産投資を検討する際には、不動産市場に対する規制の動向を理解することも重要です。最近ベルリンで、約150万戸の住宅の家賃を向こう5年間凍結する法律が施行されましたが、デンマークや英国等、ドイツ以外の欧州各国でも同様の施策が議論されています。

 

商業用不動産の先行きも、取り立てて明るいというわけではありません。他のセクター同様、構造的変化に直面しつつあるからです。実際の店舗を構えた小売店は、向こう一年、英国市場を中心に大きな圧力にさらされる公算が高いと考えます。オンライン・ショッピングが勢いを増すにつれて、英国以外の地域でも同様の状況が予想されます。

 

英国の都市の目抜き通りに店舗を構え、2019年中に家賃の値下げ交渉に成功した小売店は枚挙に暇がありません。このような環境で店舗物件への投資を正当化するには、特殊な状況にある極めて割安な物件を見つけることが必要です。

 

一方、欧州の多くの国や都市ではオフィス賃貸料が、2020年の年間を通じて上昇する公算が高いと考えます。これは、オフィスの入居率が高止まりしているためです。こうした状況は、南欧の空や海の玄関口に位置する都市に特に顕著に見られます。

 

とはいえ、景気循環の最も後期の局面にある現在、割安感があるように見受けられる多くの地域には、総じてそれなりの理由があります。例えば、ポルトガルの首都リスボンの不動産市場は、欧州域内の主要都市の不動産市場よりも高い価値を提供する市場として言及されることが多いですが、流動性リスクを勘案すると妥当な価格設定のように思われます。

 

英国も、欧州諸国との比較では割安に見えますが、ここでも、相対的に低い不動産価格が相対的に高いリスクを反映していることに注意が必要です。昨年12月の総選挙における保守党の圧勝後も、英国のEU離脱(ブレグジット)を巡る不確実性が払拭されない状況が続いているからです。EUとの貿易交渉は、英国政府が目標とする一年間の期限を超えて継続する可能性があります。とはいえ、英国に魅力的な投資の機会がないというわけではありません。投資の機会は豊富でも、投資の開始時点を極めて慎重に判断することが必要だということです。

 

2020年はミクロ経済の視点から投資の機会が発掘できると考えます。マクロ経済の観点から特定地域の市場への投資を決めるのではなく、個別物件の利点を考慮した投資に徹するべきだと考えます。

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『欧州不動産市場:希少な利回りの源泉』を参照)。

 

 

 

(2020年1月30日)

 

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【12/10開催】
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?

 

【12/10開催】
不動産「売買」と何が決定的に違うのか?
相続・事業承継対策の新常識「不動産M&A」とは

 

【12/11開催】
家賃収入はどうなる?節目を迎える不動産投資
“金利上昇局面”におけるアパートローンに
ついて元メガバンカー×不動産鑑定士が徹底検討

 

【12/12開催】
<富裕層のファミリーガバナンス>
相続対策としての財産管理と遺言書作成

 

【12/17開催】
中国経済×米中対立×台湾有事は何処へ
―「投資先としての中国」を改めて考える

 

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録