発見された遺言は「長男に著しく有利な内容」だった
【亡くなられた方】滋賀花子(母親、配偶者はすでに死亡)
【相続人】滋賀太郎(長男)、大津びわ子(長女)、滋賀次郎(二男)
【財産(遺産)】土地数筆、預貯金
【その他】遺言書有
<相談内容>
母である滋賀花子が亡くなり、長男が「遺言書を発見した」といってきました。しかし、その内容は長男に著しく有利なものでした。
しかも、メモ用紙に走り書きしたものですし、筆は踊っています。書かれた日時をみると、母がすでに痴呆症で、自分の名前もいえないときのことです。無理に書かされたに違いありません。
また、母が亡くなる前に、長男は一定の不動産を自分のものへ名義変更していました。このような、おかしなことばかりがあるなか、長男は遺言書のまま遺産分割を進めようとしています。納得できません。何とかしてほしいです。
相続財産の調査と、弁護士照会による情報を洗い出し
<解決方法>
相続財産の調査を行うと同時に、裁判所にも協力いただき、弁護士照会による情報の洗い出しを行いました。
当職らが代理人になったこと、遺言の内容に関わらず公平に分割したいこと、特別受益を受けていることを内容とした文書を、長男・滋賀太郎に対して送付しました。滋賀太郎と電話で話すことが出来ましたが、当方の主張がまったく伝わらず、相手の主張を一方的に述べるのみで話し合いになりませんでした。それと並行して、相続財産の捜索を始めました。
滋賀太郎は、そのまま手続きを進めるため、遺言の検認手続きをしてきましたので、家庭裁判所へ行き、当職らも立ち会いました。遺言の内容は、遺留分を考慮したギリギリのもので、ミミズが躍ったような字でありながら、表記方法は分数を使うなどかなりしっかりしており、母・滋賀花子の病状からは整合性がとれないものでした。
引き続き当職らは、滋賀太郎に対して話し合いによる解決を試み続けましたが、あまり効果がなく、仕方なく裁判所の手を借りることにしました。弁護士会照会によって、銀行口座の異動明細、証券会社の取引履歴、滋賀花子のカルテ(治療経過、痴呆症の程度を確認するため)等を洗い出しました。
遺言を無効とすることを前提として、遺産総額を洗い出し、ほぼ公平に分割ができました。特別受益については、滋賀花子の夫からの名義変更も多々あり、多少こちらが譲歩しました。
調停にはなりましたが、合意が得られたこと、依頼者が満足していただいたことはとてもよかったです。