市場の反転に備えよ

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報を転載したものです。

 

2019年年初以降、新興国株式の予想PERは米国株式と再び格差が拡大し、過去15年でみても相対的な割安感が強まっていると考えられます。新興国は引き続き高い成長力が見込まれることに加えて、短期的にも米ドル高懸念の後退や政策による景気下振れリスクの抑制などが期待できます。今後、バリュエーション水準が高く過熱気味の市場から、よりバリュエーション水準に魅力がある新興国株式などに投資資金が向かう可能性が高まっていると考えられます。

相対的な割安感がよりいっそう強まる新興国株式

新興国株式のバリュエーション(投資価値評価)指標は、相対的な割安感をよりいっそう強めています。新興国株式と米国株式の予想株価収益率(PER)の格差に注目すると、2019年年初以降、再び差が拡大し、足元では過去15年間でみても、割安な水準に達しています(図表1参照)。

 

月次、期間:2004年10月末~2019年10月末 ※予想PERはMSCIによる  ※米国株式:MSCI米国株価指数、新興国株式:MSCI新興国株価指数  出所:トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]過去15年間の新興国株式と米国株式の予想株価収益率(PER)の推移 月次、期間:2004年10月末~2019年10月末
※予想PERはMSCIによる
※米国株式:MSCI米国株価指数、新興国株式:MSCI新興国株価指数
出所:トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

2019年年初以降も、米中貿易戦争の深刻化・長期化への懸念、世界経済の減速懸念に加えて、地政学的なリスクの高まりなどを背景に、投資家がリスク回避の動きを強める局面があり、一般的にリスクが高いと考えられる新興国株式から、相対的に経済が堅調と考えられていた米国株式などに資金が流入したとみられます。

 

長期の株価パフォーマンスを比較しても、これまで新興国株式は大きく下落するなど値動きが大きいながらも、長期トレンドとしては潜在的な成長力の高さなどから、米国株式を上回るパフォーマンスを示してきました。しかし、2019年以降、米国株式が新興国株式をついに逆転する現象がみられています(図表2参照)。

 

月次、米ドルベース、期間:1987年12月末~2019年10月末  1987年12月末=100として指数化  ※米国株式:MSCI米国株価指数、新興国株式:MSCI新興国株価指数すべて配当込み  出所:トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]長期でみた新興国株式と米国株式の株価パフォーマンス推移 月次、米ドルベース、期間:1987年12月末~2019年10月末
1987年12月末=100として指数化
※米国株式:MSCI米国株価指数、新興国株式:MSCI新興国株価指数すべて配当込み
出所:トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

歴史的にみても米国株式の時価総額は高水準になっている

足元では、相対的に景気が安定しているとみられる米国株式市場へ投資資金が流れた結果、世界の株式市場における米国株式の比率(時価総額ベース)は過去からみても高水準に達しています(図表3参照)。

 

月次、米ドルベース、期間:1993年12月末~2019年10月末  ※すべてMSCI各国・地域指数の時価総額(MSCI全世界株価指数における割合)  出所:トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表3]全世界株式における国・地域別ウェイト 月次、米ドルベース、期間:1993年12月末~2019年10月末
※すべてMSCI各国・地域指数の時価総額(MSCI全世界株価指数における割合)
出所:トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

確かに、米国は世界第1位の経済大国ですが、2018年の世界経済に占める米国の経済規模は約24%に過ぎません。一方、世界第2位の経済大国・中国を筆頭とする新興国の経済規模は、いまや世界経済の約40%を占めるに至っています。こうした経済規模の状況から考えると、足元の世界の株式市場はやや不均衡な状態にあるとも考えられます。

 

こうした中で、バリュエーション水準が高く、過熱気味の市場から、今後、バリュエーション水準に魅力がある新興国株式などへ投資資金が向かう可能性があると考えられます。特に、足元の市場を取り巻く懸念が後退する局面では、反転の動きが強まる可能性があると考えられます。

新興国には依然として相対的に高い経済成長力がある

足元では懸念も残る新興国ですが、中長期的に見れば、先進国を上回る経済成長力を有しているとの見方に変更はありません。その根拠の1つには、「人口増加」があります。

 

 

特に新興国には若年層の人口が多いことが魅力です。こうした人々が所得を増やすことで「消費」が拡大し、これが経済成長の原動力となることが期待されます。もちろん、経済成長を実現する要素には、資本や生産性といった他の要素も重要ですが、「人口増加」は重要な要素の1つであることに変わりありません。

 

新興国、先進国ともに、人口増加率は漸減傾向にありますが、依然として新興国の人口増加率は先進国のそれを上回っています(図表4、5参照)。

 

足元で新興国株式市場は米国株式などに比べて低調となっているものの、今後、中長期的にみれば相対的に高い経済成長力を背景に、新興国株式は先進国株式を上回るパフォーマンスが期待できると考えられます。

 

年次、米ドルベース、期間:1966年~2018年 出所:ブルームバーグデータを使用しピクテ投信投資顧問作成  注1:ここでの新興国は世界銀行の分類による中・低所得国とした
[図表4]新興国注1の経済成長率と人口増減率 年次、米ドルベース、期間:1966年~2018年
注1:ここでの新興国は世界銀行の分類による中・低所得国とした
出所:ブルームバーグデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

年次、米ドルベース、期間:1966年~2018年 ※経済成長率は名目ベース 注2:ここでの先進国は世界銀行の分類による高所得国とした  出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表5]先進国注2の経済成長率と人口増減率 年次、米ドルベース、期間:1966年~2018年
※経済成長率は名目ベース
注2:ここでの先進国は世界銀行の分類による高所得国とした
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

いっそうの米ドル高懸念の後退は新興国株式にとってプラス

米ドル相場の動向は新興国株式市場にとって重要です。過去の実績では、米ドル高の進行は、新興国株式市場にとって逆風となり、新興国株式の対先進国株式相対株価パフォーマンスは、米ドルと逆相関の関係がみられてきました。2018年の新興国株式の株価パフォーマンスも、米ドル高基調が続く中でマイナスの影響を受けました(図表6参照)。

 

月次、米ドル、期間:1995年1月末~2019年10月末 ※米ドルの実効為替レート:主要26通貨に対する貿易加重米ドル指数 ※新興国株式:MSCI新興国株価指数、先進国株式:MSCI世界株価指数、すべて配当込み、米ドルベース ※新興国株式の対先進国株式相対株価パフォーマンス:グラフの線が上に向いた場合は新興国株式が先進国株式をアウトパフォーム、グラフの線が下に向いた場合は新興国株式が先進国株式をアンダーパフォーム 出所:トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表6]新興国株式の対先進国株式相対株価パフォーマンスと米ドルの実効為替レートの推移 月次、米ドル、期間:1995年1月末~2019年10月末
※米ドルの実効為替レート:主要26通貨に対する貿易加重米ドル指数
※新興国株式:MSCI新興国株価指数、先進国株式:MSCI世界株価指数、すべて配当込み、米ドルベース
※新興国株式の対先進国株式相対株価パフォーマンス:グラフの線が上に向いた場合は新興国株式が先進国株式をアウトパフォーム、グラフの線が下に向いた場合は新興国株式が先進国株式をアンダーパフォーム
出所:トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

足元の米ドルの実効レートの水準は、2000年以降の平均を大きく上回るドル高水準にあることを示しています。

 

米連邦準備制度理事会(FRB)は2019年1月末に追加の利上げを当面見送る考えを示し、同年7月には利下げに踏み切りました。以降も9月、10月に追加利下げを行っています。米国の金融緩和への転換は、米ドル高懸念を後退させる可能性もあると考えられます(図表7参照)。

 

日次、期間:2014年3月5日~2019年10月31日 出所:トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表7]米ドル圏の流動性及び米ドル・インデックス 日次、期間:2014年3月5日~2019年10月31日
出所:トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

足元で、いっそうの米ドル高懸念が後退していることは、新興国株式の相対パフォーマンスを改善する可能性があると期待されます。特に、米ドル建てで取引される関係から資源価格は、米ドル安によって上昇が期待されます。資源輸出国にとっては資源価格の上昇は経済にとってプラスの影響をもたらすため注目されます。

新興国は経済の下振れリスクに対する金融政策等の政策余地が大きい

世界経済の先行きについて懸念が残る中、欧米など主要国が金融緩和等の政策対応を行っています。新興国各国においても利下げを実施する国が増えていますが、新興国については、今後もさらなる金融緩和や財政出動余地が比較的大きく残っているとみられ(図表8参照)、短期的な経済成長の下振れリスクもある程度抑えることができると考えられます。

 

2019年11月時点 出所:CEICのデータ等をもとにピクテ・アセット・マネジメント
[図表8]新興国に政策余地は残されているか? 2019年11月時点
出所:CEICのデータ等をもとにピクテ・アセット・マネジメント

バリュエーション水準が割安な今、市場の反転に備えを

予想PERの観点からみると、新興国株式は先進国株式に対して相対的に魅力があると前述しましたが、株価純資産倍率(PBR)でみるとどうでしょうか。

 

 

新興国株式のPBRは1996年8月以降の平均を下回る水準にあり(2019年10月末時点で1.61倍)割安感があると考えられます。

 

過去の実績では、PBRの水準とその後のリターンには高い相関性がみられ、実績PBRが低水準をつけた後には、良好なリターンを示してきました。

 

米中貿易問題の行方など足元の市場を取り巻く懸念については今後も注視していく必要があると考えます。しかし、米中通商交渉において部分合意に至ったことはプラスのニュースです。さらに、政策支援などにより、中国をはじめ新興国各国の景気が下支えされ、さらには、持ち直す可能性もあります。こうした場合、市場の流れは大きく変わり、これまで見過ごされてきた新興国株式などが大きく反発する可能性もあります。バリュエーション水準が割安な今、来るべき市場の反転に少しずつ備えをすすめることも重要であると考えます。

 

月次、期間:1996年8月末~2019年10月末 ※新興国株式:MSCI新興国株価指数  出所:トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表9]新興国株式の実績PBR推移 月次、期間:1996年8月末~2019年10月末
※新興国株式:MSCI新興国株価指数
出所:トムソン・ロイター・データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

月次、期間:1999年6月末~2019年10月末 ※新興国株式:MSCI新興国株価指数 ※リターンは円換算、配当込み ※上記グラフ上の直線は近似線出所:トムソン・ロイター・データストリーム、ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表10]新興国株式の実績PBRと5年間リターン(年率)の分布 月次、期間:1999年6月末~2019年10月末
※新興国株式:MSCI新興国株価指数
※リターンは円換算、配当込み
※上記グラフ上の直線は近似線出所:トムソン・ロイター・データストリーム、ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『市場の反転に備えよ』を参照)。

 

 

(2019年11月14日)

 

 

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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