「ロボアドバイザー」は、もはや無視出来ない

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報を転載したものです。

 

 

ポイント

 

資産運用業界では、ロボアドバイザーが急速に主流派の地位を占めつつありますが、このような状況は低コストの金融アドバイスを求める個人投資家にとっては朗報です。ピクテは、人間の助言に加えて「ロボ4アドバイザー」などのデジタル・アドバイザーを積極的に受け入れた質の高い資産運用助言サービスを提供することが、「時代を超えて」ブランドを維持していく唯一の方法だと考えます。

 

資産運用業界は、世界が急速にデジタル化するなかで混乱の様相を呈しています。資産運用アドバイザーは、提供するサービスの一部としてデジタル化を受け入れることを躊躇っているように思われます。恐らく、組織の複雑さや文化的慣性、個人的な関係に大きく依存する業界の特質等が、消極的な姿勢の背景にあるものと思われます。また、セルフサービス・バンキング・ツール等のデジタル・テクノロジー、絶え間なく提供される金融情報、年中無休のネット接続サービス等が投資の意思決定を投資家の手に委ねつつあるという現実が、デジタル化を脅威と感じるアドバイザーを増やしている理由のように思われます。

 

デジタル・バンクは、欧州を中心に世界中でベンチャー・キャピタルの関心を集めており、最近ではその多くが事業のグローバル展開を計画しています。特に、ロボアドバイザーは金融技術(フィンテック)の相対的に大きなトレンドの一部を構成しており、金融業界の主要機関が果たしてきた役割を破壊しつつあります。これは高度なコンピューター・アルゴリズムで、投資家の投資性向やリスク選好を勘案し、顧客に対し堅固かつ個別の戦略的資産配分を、自動的に提案・構築・管理することが可能です。ここには、どの顧客が特定のニュースやマクロ事由の影響を被る可能性があるかを瞬時のうちに見極める能力も含まれます。

 

ゲーム手法やシミュレーションを駆使した顧客教育や販促活動を行い、特定の金融商品の仕組みに係るより高度な知識を提供することで、ロボアドバイザーは顧客の投資を促すことも可能です。また、社内外のレポートや「紙の」記録を学習することで、特定の問題に回答することも可能です。換言すると、ロボアドバイザーは、従来よりも遥かに詳細な情報を含んだ実践可能な顧客別の助言を、コストを大幅に引き下げ、かつてないほど容易かつ速やかに提示する能力を資産運用アドバイザーに提供することが可能なのです。


 

※出所:ピクテ・グループ
[図表1]米国2019年1-3月期のフィンテック投資 (セグメント別)
※出所:ピクテ・グループ

ロボ4アドバイザーは誇大広告ではない

現在のところ、ロボアドバイザー市場の成長は、主に大手金融機関に因るものであり、2019年9月末時点の運用資産残高(AUM)の約80%を2社が占めています。相対的に規模の大きい独立系企業群については、恐らく、事業の拡大が見込まれます。一方で、個人投資家向け市場(アプリ)では手数料の引き下げや廃止の動きが共通テーマとなってきたため、相対的に規模の小さい企業群はこれまで以上に苦戦を強いられることが予想されます。

 

 

手数料を徴収しないビジネス・モデルは、投資テクノロジー業界の真に破壊的な変革の一つだと思われます。資産運用業界の転換点は、ロボアドバイザーと人間のアドバイザーの両方を使った経験のある(個人投資家層から超富裕層を含む)投資家が、双方の助言を提供する金融機関の採用を決断する時点で到来すると考えます。

 

ロボアドバイス・プラットフォームの多くが困難なスタートを切ったことは、銀行にとっては好材料です。ロボアドバイス・プラットフォーム上で提供される既存の商品が、さほど洗練されているわけではないからです。これは、(旧来型の非効率的な計量経済学モデルに基づいているため)先行きが不透明だからなのですが、個別に見ると多くは採算割れになっていることが判明しています。

 

プラットフォームの抱える問題は、手数料の引き下げと人間の資産運用アドバイザーの排除とに過度に注力してきたことに起因します。投資パフォーマンスに対する投資家の不満によって、経費を減らすほど利益が上がるという仕組みがフィンテックのスタートアップにとっては持続不可能なモデルであることが判明するかもしれません。

 

一方、プライベート・バンクにとっては、資産運用業界の最前線に留まっていることを証明する絶好の機会が提供されています。事業を改善し、ラグジュアリーブランドのように、長期間変わらない、極めて質の高い、新しいデジタル商品を提供することが好機を生かすことにつながると考えます。

 

実際のところ、現時点のロボアドバイス・ソリューションはプライベート・バンクの既存商品に統合され、洗練度の高い「ロボ4アドバイザー・サービス」に進化していくものと思われます。また、資産運用アドバイザーが速やかに、苦労せず、賢明なソリューションを顧客のために探る過程で、コンピューター・ネットワークやロボットがこれまで以上に決定的な役割を果たすことが証明されると考えます。現在進行中のデジタル破壊は、従来型の投資家と資産運用アドバイザーとの関係に取って代わるのではなく、各種の運用サービスを補完する決定的に重要な要素として浮上するように思われます。

 

こうした状況を考えると、「ロボアドバイスは資産運用業界に影響を及ぼさない誇大広告に過ぎない」と決めつけてしまうのは賢明だとは思われません。明確で説明が容易であり、しかも「知的な」一連のマルチアセット・システマティック(ルールベース)戦略のうち、信頼性が高く、証拠の裏付けのある戦略は、近い将来、顧客ポートフォリオのコア投資を補完するサテライト投資として採用されることになるかもしれません。

 

このようなルールベース戦略が提案する資産配分の多くが(ETFを投資対象とする)パッシブ運用によって行われるのは低コストで透明性が高いからであり、また、ロボブローカーが、継続的な最適化による資産配分を月次あるいは四半期ベースで行うからです。

 

人間のアドバイザーが決定したルールと監視の元で最適ポートフォリオが構築された後、「デジタル・トレーダー」は機械学習モデルを使って顧客に最良の売買タイミングを計り、投資の自動運用を行います。このような「ロボ4アドバイザー」のアルゴリズムは、顧客ごとにポートフォリオの分析と見直しを行うことが可能です。また、税の最適化や市場リスクの変動、日々のクレジットカードの利用状況やライフイベントなども勘案したアドバイスを、科学的な根拠に基づいて行うことも可能なのです。

 

※出所:ピクテ・グループ
[図表2]デジタル・インベストメント・マネジャーの預かり資産残高 (米国、個人投資家対象)
※出所:ピクテ・グループ

まとめ

ロボアドバイザーは、デジタル業界の成長に資するだけでなく、リスクの逓減ならびにパフォーマンスやリスク管理の改善等を通じて資産運用業界に成功をもたらす鍵になり得ると考えます。多くの分野で競争に直面する金融機関は、フィンテック企業との効果的な連携を図り、フィンテック企業を競合相手と見るのではなく、新しいアイディアや専門的なテクノロジーの源泉、即ち、顧客によりよい経験を提供するという共通のゴールに向けた同志と見なすことで、大きな恩恵を受けることが出来ます。銀行は、デジタル技術を受け入れることが顧客関係の質を損なうのではなく、顧客に対する価値提案の改善を通じて顧客との関係を劇的に改善するのだということを速やかに理解すべきです。投資家は、従来型の資産運用とデジタル・リレーションシップが共存できることを着実に感じとっていくでしょう。フィンテックは今後も普及し続け、戦略的なフィンテック投資を行わない銀行は取り残される可能性があります。

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『「ロボアドバイザー」は、もはや無視出来ない』を参照)。

 

 

(2019年11月6日)

 

 

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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