子どもの教育費の準備、老後資金の貯蓄など、資産形成を目指す人たちにとって、現在は「投資」が欠かせない選択肢となっています。そのなかでもリスクを低減する効果があるインデックス投資は、投資初心者にも熟練者にも、魅力的な商品の一つです。運用総資産約600兆円、低コストのインデックス運用を行うバンガードのCEOであるティム・バックリー(Tim Buckley)氏が、インデックス運用のメリットについて解説します。

インデックス運用のメリットを信じ続けるということ

筆者:ティム・バックリー

 

投資に確実なことなどありません。市場は変動しており、急上昇していたセクターが下落に転じることもあるなど、過去の実績が将来の成功を保証してくれるわけではありません。こうした不確実性を知っても、老後資金を貯蓄したい、子供を大学に進学させたい、あるいは事業を始めたいと考えている投資家の皆さまにとって少しの慰めにもなりません。

 

インデックス運用は、予測不能な事態の回避や投資費用の一部を補う手段を提供してくれます。インデックス・ファンドは、市場リターンの獲得という非常に明確な使命の下、何百万人もの投資家の皆さまに、最低限のコストで市場リターンを得る道を開いてきました。インデックス運用のメリットはよく知られているものもあれば、そうでないものもありますが、いずれも投資の全体的な状況を変えたという点で、評価されるに値するものです。

インデックス運用の4つのメリット

低コストであること。インデックス運用は低コスト運用の代名詞と言われていますが、そこには相応の理由があります。つまり、最終的に投資家の皆さまの手元に残るリターンが大きいことです。さらに、インデックス運用が成功したことで、業界全体のコストが引き下げられました。過去15年間で、インデックス・ファンドの経費率の加重平均は0.28%から0.09%に低下しましたが、アクティブ・ファンドは0.83%から0.58%に低下しました。バンガードの調査によると、インデックス・ファンドという選択肢がなければ、1990年代初頭以降に投資家の皆さまが支払ったコストは2,000億ドル近く増えていたでしょう。

 

分散を可能にすること。インデックス・ファンドは、かなりの低コストで世界的な分散投資を提供しています。1976年にバンガードは初の個人投資家向けインデックス・ミューチュアル・ファンドを設立しましたが、それ以前は、投資家の皆さまが容易にポートフォリオを分散できる機会は限られていました。例えば、1969年に米国のミューチュアル・ファンドが保有していた株式の銘柄数の中央値はわずか44でした。しかし現在、投資家の皆さまは米国のあらゆる株式に0.04%のコストで投資することができ、世界中に分散された債券と株式のポートフォリオもわずか0.07%のコストで保有することができます。私が28年前にバンガードに入社した当時、これほどの低コストで世界規模の分散投資が可能になるとは想像もしませんでした。

 

シンプルであること。アドバイザーや金融機関に資産運用を委託する投資家が増加したことで、インデックス運用の別の利点が浮き彫りになりました。それは、ポートフォリオの構築プロセスがシンプルなことです。そのおかげでアドバイザーは、より付加価値を高める業務に集中することができます。「値上がり」株を探さなくても、インデックス・ファンドを使って顧客のポートフォリオを構成できるため、顧客の長期的な財務上の成果を左右する運用目標の設定や投資行動のコーチングに、より多くの時間を充てることができます。

 

優れたガバナンス。インデックス運用が普及するにつれ、優れたガバナンスに対する私たちの提唱活動も活発になっています。バンガードは投資家の皆さまに対して、数年、数十年にわたってその利益を保護し、投資価値の最大化を図る責任を負っています。私たちのファンドの投資先企業が、優れたガバナンスを有し、(目先の決算ではなく)長期的な業績に目を向けている企業となることを確保することがインデックス・ファンド運用会社としての私たちの責任の中核をなしています。

インデックス運用は、さらに成長の余地がある

近年、インデックス運用は大きくなり過ぎたと言われていますが、私はそうは思いません。

 

現在、米国のミューチュアル・ファンドに占めるインデックス運用の割合は40%に満たず、多くの投資家がポートフォリオの手数料を払い過ぎている可能性があります。また、米国株式市場の時価総額に占めるインデックス・ファンドの割合はわずか15%です。さらに、インデックス・ファンドは典型的な長期保有投資であるにもかかわらず、米国の証券取引所の売買高の5%にも達していません。したがって、インデックス運用は一般的に考えられているほど大規模とは言えません。

 

 注記:いずれも2018年12月31日現在のデータ。米国の登録済みファンドの資産はモーニングスターを使用(ファンド・オブ・ファンズおよびマネーマーケット・ファンドを除く)。米国株式ファンド市場のシェアはモーニングスター・カテゴリーグループの米国株式とセクター別株式のミューチュアル・ファンドおよびETFを使用。債券ファンド市場のシェアはモーニングスター・カテゴリーグループの債券(課税)ミューチュアル・ファンドおよびETFを使用。米国株式市場の時価総額はCRSPトータル・マーケット・インデックスを使用。米国債券市場の時価総額はブルームバーグ・バークレイズ米国ユニバーサル・インデックスを使用。発行済み証券の保有比率および売買高は利用可能なデータに基づく最良推定値。  出所:モーニングスター、ファクトセット、CRSP、ブルームバーグ・バークレイズ、ArcaVisionのデータに基づきバンガードが算出。
 注記:いずれも2018年12月31日現在のデータ。米国の登録済みファンドの資産はモーニングスターを使用(ファンド・オブ・ファンズおよびマネーマーケット・ファンドを除く)。米国株式ファンド市場のシェアはモーニングスター・カテゴリーグループの米国株式とセクター別株式のミューチュアル・ファンドおよびETFを使用。債券ファンド市場のシェアはモーニングスター・カテゴリーグループの債券(課税)ミューチュアル・ファンドおよびETFを使用。米国株式市場の時価総額はCRSPトータル・マーケット・インデックスを使用。米国債券市場の時価総額はブルームバーグ・バークレイズ米国ユニバーサル・インデックスを使用。発行済み証券の保有比率および売買高は利用可能なデータに基づく最良推定値。
出所:モーニングスター、ファクトセット、CRSP、ブルームバーグ・バークレイズ、ArcaVisionのデータに基づきバンガードが算出。

 

これらの規模を見る限り、インデックス運用が市場を動かし、非効率性を生み出す可能性はそれほど高くはありません。市場の動きは、アクティブ運用のマネージャーが市場価格を決定することにより生じているのです。

 

インデックス運用の規模はまだピークに達していません。実際には、さらに成長の余地があると私たちは考えています。インデックス運用は規模の経済による恩恵を受けます。運用規模の拡大により効率性が損なわれたり、コストが上昇することはありません。私たちはグローバル市場には未開拓の部分があり、そこに低コスト投資の恩恵をもたらす機会があると考えています。

 

インデックス・ファンドは確実にそのニーズを満たすことができるでしょう。あまりにも多くの投資家が、インデックス運用で獲得できるリターンに対して、高すぎる手数料を支払っています。また、インデックス運用型の株式ファンドは普及してきていますが、債券ミューチュアル・ファンドに占めるインデックス運用の割合はわずか27%程度です。

 

 

バンガード

 

※当記事の閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『バンガードCEOが語る「インデックス運用」の4つのメリット』を参照)。

 

【ご留意事項】
●バンガードのファンドについて詳しくお知りになりたい場合はvanguardjapan.co.jpをご覧ください。ファンドの投資目的、リスク、費用、経費、およびその他の重要な情報は、目論見書に記載されています。投資前によくお読みになり、ご検討ください。
●バンガードETFにおける受益証券の設定または交換は、通常数百万ドル単位のクリエーション・ユニット(原資産バスケットおよび現金)の引き渡しによってのみ行われます。投資家は、流通市場においてバンガードETFの受益証券の売買を行い、証券取引口座にこれらの受益証券を保有しなければなりません。その際、投資家は仲介手数料を課されます。また、ETF購入の際には基準価額を上回る金額を支払い、あるいは売却時には基準価額を下回る金額を受け取る可能性があります。
●債券ファンドへの投資は金利、信用、およびインフレリスクを伴います。
●分散投資は、利益を保証するものでも、損失を防止するものでもありません。
●株式や債券への投資は、カントリー・リスク、地域リスク、通貨リスクなどのリスクを伴います。新興国市場を基盤とする企業の株式は、国と地域の政治リスク、経済リスク、為替変動リスクを伴います。これらのリスクは特に新興国市場で高くなります。
●すべての投資にはリスクが伴い、投資元金を割り込む可能性があります。分散投資は利益を保証するものでも、損失を防止するものでもありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、バンガード、幻冬舎グループは責任を負いません。

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