ファクター投資の真髄とは

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報を転載したものです。

 

ポイント

ファクター投資は、最近幅広く採用されています。それでは、ファクター投資の真髄について見ていきましょう。

 

「セル イン メイ(5月に株を売れ)」を聞いたことがない人はいないでしょう。この相場の格言は、米国会議事堂と同じくらいの歴史があります。この格言は、多かれ少なかれ当っているので、投資家に使われ続けています。長い歴史があり、流動性に富み、成熟した米国や英国の株式市場において、投資家は夏の間は株式の投資比率を下げて、10月末のハロウィン頃に比率を上げることによって、株式のリターンを向上させてきました1

 

1.平均すると、11月~4月の半年間の株式のリターンは、5月から10月の半年間のリターンを10パーセンテージ・ポイント程度上回ります。「セルインメイ」の効果は、金融市場で広く認識されています。Andrade, S., V. Chhaochharia, M. Fuerst, “'Sell in May and Go Away' Just Won’t Go Away". FinancialAnalysts Journal, Forthcoming(SSRN2115197), 18.03.2013.

 

季節要因は奇異に聞こえるかもしれませんが、これもファクター投資のひとつと考えることができます。このようなファクター投資は、ある資産クラスにあてはまる明白な特性が、歴史的に見て投資のリターンに具体的な影響を与えてきました。「セル イン メイ」のような簡単な法則は、長年使われてきました。他の例を見ると、例えば小型株に対するファクター投資は、長期間にわたって高いリターンを生み、もっと周期性があり複雑になっています。

 

過去半世紀にわたるファイナンスの分野の、膨大な学術的な研究によって、投資家が信頼して利用しているファクター投資が明らかになりました。実際、ファクターは市場のアノマリー(理論で説明できない例外的な事象)であり、効率的市場仮説とは矛盾するものです。この仮説では、株式市場には利用可能な全ての情報が織り込まれているため、投資家は超過リターンを得ることは出来ないというものです。

 

今なおファクター投資がプロの投資家に使われているという事実は、市場は効率的ではないこと、投資家心理の影響、ならびにポートフォリオの構築方法等において、市場のアノマリーの存在についてもっと洞察を深める必要があるかもしれません。

 

例えば、あるファクターは、損失を回避したり気まぐれに行動するといった、投資家の投資行動のゆがみから生じるものです。また一方では、景気循環の特定の期間だけしか投資しないということもあげられます。他のアノマリーは、見つかるとすぐに裁定取引で消滅するものもあれば、規制上の制約から、例えば低リスクの資産と多くの負債を抱えている特定の投資家の存在を裏付けます。

ファクターにはどのようなものがあるか

ファクター投資の範囲は、非常に広いものです。カレンダーのファクターを見ると「セル イン メイ」は、数多い季節的要因のひとつに過ぎません。同様に、サンタクロース相場や1月効果といった、株式市場はクリスマスの次の週に上昇して新年度入りすることがあげられます。決して、よくあるような四半期末効果や月替わり効果とは呼ばれていません2

 

2.Swinkels, L., van Vliet, P.“An Anatomy of Calendar Effects,” Journal of Asset Management  13(4), 2012 pp. 271-286.

 

しかしながら、プロの投資家は5つのファクター投資に注目しています。(図表を参照)

 

※緑色:高PER、灰色:低ボラティリティ、赤色:高ROA、紫色:高モメンタム、オレンジ色:小型株   ※MSCI ACWI株価指数の、それぞれのファクター要因に基づいてランクしたスタイル別ポートフォリオ。上位四分位を選択して、トータルリターンと比較。期間:1987年12月31日~2019年8月7日   出所:ピクテ・アセット・マネジメント
[図表]MSCIACWI株価指数に対するファクター投資のリターン ※緑色:高PER、灰色:低ボラティリティ、赤色:高ROA、紫色:高モメンタム、オレンジ色:小型株
※MSCI ACWI株価指数の、それぞれのファクター要因に基づいてランクしたスタイル別ポートフォリオ。上位四分位を選択して、トータルリターンと比較。期間:1987年12月31日~2019年8月7日
出所:ピクテ・アセット・マネジメント

 

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1980年代前半に、ピクテ・アセット・マネジメントに長年勤務しているロルフ・バンズは、企業の市場価値とリスク調整後の株式のリターンの関係を分析しました。長期にわたって、小型株のほうがパフォーマンスが良い傾向にあることが分かりました。これは恐らく流動性の効果によるものと見られます。投資家は潜在的に、簡単に売却できない銘柄については、より高い付加価値を求めるからです。別の見方をすると、小型株に対するアナリストの調査が行き届いていないことから、投資家が超過利益を享受できる非効率性が存在すると考えます。

 

 

バリュエーション:

低い株価収益率(PER)もしくは株価純資産倍率(PBR)の企業は、長期的な観点からすると超過収益を生む可能性があります。ひとつの見方として、短期的には市場の動きがバリュエーションの効果を打ち消しますが、やがては株価は正当な水準に回帰していくからです。しかしながら、バリュエーション面での間違った株価の水準が長く続くことがあります。2008年のグローバルな株価暴落時以来、成長株はバリュー株をアウトパフォームし続けています。このような状況が逆転するには、景気後退局面になる必要があるかもしれません3

 

3.“There’s still only one winner in the growth versus value fight,” Financial Times 20.10.2018 https://www.ft.com/content/dda25e30-d383-11e8-a9f2-7574db66bcd5

 

モメンタム:

投資家は、価格が上昇しつつある株式や債券の組入れを増やし、価格があまり動かない銘柄の組入れを減らす傾向にあります。モメンタムのファクターは、歴史的に見て特に効果的な投資戦略ですが、マーケットの急落時等には大きな損失を被ることがあります。

 

優良企業:

高い利益率や市場シェアを持つ企業は、長期的にアウトパフォームする傾向にあります。そのため総資産利益率やその伸び率が、このファクターの目安となります。企業の体質はバリュエーションに通じるところがあります。つまり、長期にわたって優良企業を過小評価する可能性があることです。

 

ボラティリティ:

低いボラティリティの株式や債券のポートフォリオは、高いボラティリティのものと比較すると、相対的に高いリターンとなっています。一般的に投資家は、リスクに見合ったリターンを期待することから、ボラティリティが高いものを選好します。ところが、実態は逆となっています。

分散投資のメリット

いくつかのファクターは、相当データを分析しないと判別できないものです。クオンツ運用のケースでは、市場価格から政府の統計、ならびに個別企業の分析といった何万ものデータ系列における何億ものデータを検証して、超過リターンの源泉を見出そうとしています。いくつかのファクターについては、市場全体が認識する以前に、短期的にしか効果を表さないかもしれません。

 

ファクターを明確化して、的確に運用につなげることによって、投資家は市場平均を上回るリターンを獲得することが出来ます。株式のファクターは、ポートフォリオ構築のひとつの要素となります。

 

ある株式のポートフォリオが、計画的に、例えばバリュー、グロース、低ボラティリティのファクターから構築されていると、地域や国に分散して投資していることになります。なぜなら、バリュー、グロース、および低ボラティリティといったファクターは、景気循環において別々の局面で高いリターンを出すからです。

 

“ファクターは明確化して、的確に運用につなげることによって、投資家は高いリターンを得ることができます”

 

しかしながら、投資のあらゆる局面において、このファクターが最適と保証できるわけではありません。いくつかのファクターは、時間的なメリットに頼る傾向にあって、定められた時間軸ではお互いが矛盾した動きになることがあります。例えば、魅力的なバリュエーションの企業が、モメンタムの要因によってさらに割安になることがあります。他の例では、多くの景気循環のサイクルでは平均的なリターンであっても、短期間では超過リターンが上げられないことがあります。あるファクターは、しばらくは効果的であっても、市場参加者に幅広く利用されると効果が消滅することがあります。

 

 

いくつかのファクターが、なぜ歴史的に見て長く続いているかについて理解することが、ファクター投資にとって最も重要なポイントです。そして、ファクター投資を実施するにあたって、このような投資がどれくらい普及しているかを評価することも同様に重要です。同時に、あるファクターは、ものすごいデータ分析とバックテストの結果にすぎない、机上の空論かもしれません。

 

確かなことは、市場が存続する限り、いろいろなファクター投資が投資家によって利用されていくということです。

 

※当資料で使用したMSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。また、MSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ファクター投資の真髄とは』を参照)。

 

 

(2019年9月17日)

 

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ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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