●海外では、オランダのASMLや米国のマイクロン・テクノロジーなどの株価は年初から50%超の上昇。
●国内もアドバンテストなどが好調、半導体関連銘柄は市況回復を織り込み下値リスクは限定的に。
米中協議は楽観できないが、貿易問題の影響を受けやすい半導体関連銘柄は年初から大幅高
世界の金融市場では、依然として米中貿易摩擦問題の行方を注視する状況が続いています。ただ、9月5日に米中両国が閣僚級協議を10月初めに開くことで合意すると、その後は、市場にやや安心感が広がったように思われます。また、香港で発行されている英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは9月10日、中国が米農産物の購入拡大で10月に合意する可能性があると報じました。
しかしながら、米中協議については、これまでの経緯を踏まえると、あまり楽観はできないと考えています。こうしたなか、米中対立の影響を受けやすい半導体関連銘柄に改めて目を向けると、実は、年初から大幅に上昇していることが分かります。7月25日付レポート「半導体関連銘柄が上昇~その背景と今後を考える」で、半導体関連銘柄の下値リスクは後退しつつあると指摘しましたが、今回はその後の動きを検証します。
海外では、オランダのASMLや米国のマイクロン・テクノロジーなどの株価は年初から50%超の上昇
まず、海外の半導体関連銘柄の動きを確認します。7月の決算発表で前向きな見方を示した、オランダの半導体露光装置世界最大手、ASMLと、台湾の半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は、米中の対立が激しさを増した8月に入り、ともに株価がやや低迷しました。しかしながら、その後は持ち直し、年初からの騰落率はASMLが+58.3%、TSMCが+16.0%となっています(図表1)。
また、米金融大手ゴールドマン・サックスが7月に投資判断を引き上げたのは、米マイクロン・テクノロジー(メモリーを主力とする半導体製造大手)、米ラムリサーチ(半導体エッチング装置世界最大手)、米アプライド・マテリアルズ(半導体製造プロセスをほぼ全てカバーする半導体製造装置世界最大手)でした。これらの株価も8月は低調でしたが、年初からの騰落率は、順に+55.7%、+70.3%、+53.3%と、S&P500種株価指数の+18.9%を大幅に上回っています。
国内もアドバンテストなどが好調、半導体関連銘柄は市況回復を織り込み下値リスクは限定的に
次に国内の半導体関連銘柄の動きを確認します。代表的な7銘柄の年初来騰落率は、いずれも日経平均株価の+6.9%や東証株価指数(TOPIX)の+4.3%を大きくアウトパフォームしています。特に好決算を発表したアドバンテストは、年初来騰落率が+96.6%に達しており、東京エレクトロン、SCREENホールディングス、信越化学工業とともに、9月に年初来高値を更新しています。
スマートフォンやパソコンのデータ保存に使う半導体メモリーの大口取引価格は安定に向かっており、在庫は7-9月期頃からピークアウトし始める可能性があります。ただ、在庫の水準が総じて高いため、生産が回復し、投資再開が決定される時期は、早くて2019年末から2020年1-3月期頃とみられます。足元の半導体関連銘柄の株価は、すでにこのような動きを織り込んでおり、仮に調整が入った場合でも、下値は限定的と思われます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『最近の半導体関連銘柄の動き』を参照)。
(2019年9月11日)
市川雅浩
三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト