ポイント
なぜ財務基盤が強固な企業は、ESG投資と共通する面があるのでしょうか
投資家は、厳しい経済情勢のもとで、どのようにして株式ポートフォリオを構築できるのでしょうか。
安定した収益構造、健全なバランスシート、および株式が魅力的なバリュエーションで取引されている、といった特徴があれば、財務基盤が強固な企業と呼ぶことができそうです。このような企業は、例え市場の混乱時においても株価が安定して、中長期的にすばらしいリターンをもたらしてくれます。
一方、財務面だけにとどまらない、頑健さと回復力を持った企業が存在します。安定した長期投資を可能とする企業には、環境、社会および企業統治(ESG)の観点から意思決定を下すといった特徴があります。
興味深いことに、財務基盤が強固な企業は、既にESGの観点を取り入れていて、ESGの基準からしても高いスコアを持っています。(図表1をご参照ください)
財務基盤が強固なことと、ESGへの取組みの間には、直感的に何らかの関係があるようです。長年に渡って財務基盤を強化してきた企業は、今後ともこの強みを維持しようと考えます。
このような企業は、財務データ以外の要因が、いかに収益性や財務諸表の悪化につながったかを分析していて、的確な対応を取ってきました。
全般的な強み
どのような企業が、世界で最も財務面で強固であるかを判断するために、ピクテは企業の耐久力を判断する4つの要素を使った、独自の「4P」分析の枠組みを構築しています。4つの要素とは、収益力、慎重さ、防衛力、および株価です。
収益力のスコアとは、信頼性があって予測可能な企業収益を、いかに測定するかということです。この判断基準において、着実な収益の向上、運転資金の借入の低さ、および高いキャッシュ比率が重要なポイントとなります。慎重さについては、企業の業務上および財務上のリスクをどのように査定しているかを測定します。慎重な企業は、自立的かつ制御できる成長を追及し、安定した財務基盤を維持して、結果として倒産する確率が低くなっています。
防衛力を測定することとは、企業のビジネスモデルが持続可能で、活力を持って景気循環のサイクルに沿っているかについて精査するものです。同時に、その企業の株価の変動率や、他の株式との相関関係を分析して、株式のポートフォリオにおけるリスクリターン特性を総合的に判断します。最後に、割高な投資は回避します。この観点から、最も魅力的なバリュエーションの株式を選択します。
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このような4Pの枠組みは、経済情勢に左右されることなく、高いパフォーマンスを提供する株式を選択するレンズの役割を果たしています。
それでは次に、追加の要因として企業のESGの取組みを分析して、さらにリスクを減らして、最も長期的に有望な投資を検討することにしましょう。
従来は、企業は法律に抵触しなければ、特に問題ないと見なされてきました。ところが、弱いESGの特性しか持っていない企業は、道義に反する会社決算や環境に対する不祥事などによって業務上のリスクが増大するため、長期的に業務収益が低下する恐れがあります。
各企業のESGへの取組みを判断するために、ピクテは独自のスコアリングシステムを導入しています。このシステムでは、企業の評判、業務および企業統治上のリスクに焦点をあてて、ピクテが任意に行う分析と、外部のESGの調査結果を融合させます。
図表1が示すように、最も財務的に強固な企業は、ESGについても高い評価を受けています。しかしながら、一部には、財務的には強固な企業にもかかわらず、ESGが十分ではない企業が存在するのも事実です。ESGに関するリスクのある企業については、財務面が強いかどうかにかかわりなく、ピクテの投資対象から除外される可能性が高くなります。
例えば、ある企業の4Pスコアが高かったとしても、製品に関連して企業統治に関するESGのリスクが高かったことから、投資対象から除外したことがあります。このようなリスクは、製品の安全性に関する紛争や、贈賄に関する申し立て、および法律に反するマーケティング手法といったことが含まれます。
ESGにあたっての検討事項
ピクテが想定する、ESGの企業統治が強い企業が多く含まれる株式ポートフォリオは、ベンチマークであるMSCI世界株価指数と比較すると、図表3のようなイメージとなります1。
1 企業の統治の分析において、4つの要素に基きます:経営陣の構成、役員報酬、株主の権利、監査への対応。評価の方法として、地域ごとの最善の方法を採用。十分位の数値を、強固(1~3)、平均(4~7)、弱い(8~10)に分類。
さらに、想定される組入れ銘柄の半分以上が、ゼロ、低い、もしくは並のESGリスクとなっています。このリスクの計測方法は、贈収賄、紛争、製品のリコール、公害や地方公共団体との係争などによって、どれほど影響を受けるかによります2。 そして、このリスクはベンチマークよりも低くなっています。
2 ESGの評価については、厳格さ、再発の可能性、企業の責任や情報の正確性などを勘案。
※当資料で使用したMSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。また、MSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。
記載のデータは、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ディフェンシブ株式とESG投資の関連』を参照)。
(2019年8月21日)
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