7月は香港市場が調整
アジア・オセアニア全体では小幅上昇
■7月末時点のアジア・オセアニアのリート市場は、年初来でシンガポールが+20.9%、香港が+16.4%、オーストラリアが+23.0%となりました。7月単月では、アジア・オセアニア全体では前月末比+0.4%と小幅に上昇しました。ただ、香港が中国本土への容疑者引き渡しを可能とする「逃亡犯条例」改正案を巡るデモなどの影響を受けて、同▲4.9%と大きく下落しました。
8月も香港市場の調整が続く
香港デモの長期化が要因
■香港市場は、8月に入ってからも下落基調が続いています。「逃亡犯条例」改正案をきっかけとするデモが過激化しているためです。香港リートは14日現在で7月末比▲5.4%となっています。特にデモや暴動の影響から小売店舗の営業に支障をきたすようになった宝飾店やドラッグストアの業績が落ち込み、また、不動産市況にも陰りが見え始めました。12日にはデモ隊が空港を占拠するなど一段と混迷の度合いが増しています。
利回りがバッファーとなろう
■デモが過激化していく中で、中国人民解放軍が出動するのではないかと、緊張の度合いが増しています。ただ、人民解放軍が香港に出動する可能性は少ないと思われます。仮に中国人民解放軍が介入すれば、一国二制度が崩壊するとの懸念から香港の不動産市況の急落を招き、国際金融市場においても香港への信認が一気に低下する恐れがあります。これは、中国政府にとっても政治的・経済的に大きな失態となります。天安門事件が起こった1989年当時と比較すると世界経済に占める中国のプレゼンスは格段に大きくなっており、国際社会からの批判が避けられない武力行使に発展する可能性は低いと考えられます。
■当⾯、香港リートは神経質な動きになると予想されますが、⾹港政府が事態打開に向けて動き抗議活動が鎮静化に向かえば、リート市場も次第に落ち着きを取り戻すとみられます。香港リートは足元で配当利回りが上昇しており、下支えとなりそうです。また、アジア・オセアニアリート全体では今回の影響は軽微であるとみられます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『香港のデモなどが重石となり、調整色を強める』を参照)。
(2019年8月15日)
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