6月の投資環境
6月の世界株式市場は、MSCI世界株価指数(現地通貨ベース)で上昇しました。
世界の株式市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が講演で利下げの可能性を示唆したことや、5月の米雇用統計で非農業部門雇用者数の伸びが市場予想を大幅に下回ったことなどを背景に、米国の利下げ観測が高まり、月初より上昇基調となりました。中旬以降も、米連邦公開市場委員会(FOMC)で金融緩和姿勢が強まったことや欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁のハト派的な発言を受けて引き続き上昇しました。下旬には米中通商問題に対する不透明感や米国とイランの緊張の高まりなどがマイナス要因となり下落しましたが、月間では大幅な上昇となりました。
業種別では、素材や情報技術、一般消費財・サービスなどが大きく上昇した一方、コミュニケーション・サービスや生活必需品、金融などは市場平均を下回る上昇にとどまりました。
こうした中、水関連企業の株価(現地通貨ベース)は市場を上回る上昇となりました。全てのセクターが上昇となるなか、特に装置製造エンジニアリングセクターは、米中貿易問題に関するポジティブな報道を受け前月の下落から回復し高い上昇率となりました。
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上下水道ビジネスセクターは、ディフェンシブ性と業績見通しの確からしさが評価され株価が上昇しました。保有銘柄の多くが上昇するなか、チャイナ・エバーブライト・インターナショナルの株価は前月末とほぼ同水準でした。中国の環境セクターの良好なファンダメンタルズにも関わらず、株価は昨年の下落から回復してはいません。
しかし、6月に政府は環境セクターの支援を再確認すべく、インフラ設備投資を目的とした特別国債の発行およびごみ分別処理の新しい指針を発表しました。特にごみ分別処理は廃棄物発電において発熱量の増加をもたらし、燃焼の効率を高め、電力の出力を増加させるため、同社は恩恵を受けるものと思われます。
装置製造エンジニアリングセクターでは、ザイレムは、5月に軟調な第1四半期決算を発表し業績見通しを引き下げましたが、地方自治体や産業関連から、特に汚水処理分野において堅調な需要が続いており、市場のボラティリティの高まりに関わらず株価は上昇傾向にあると見られます。フォーチューン・ブランズ・ホーム&セキュリティは、前月、米中の貿易問題によるコスト上昇の影響が懸念され下落しましたが、キャビネット事業の見直しによる増益期待が市場に織り込まれるなどし、株価は上昇に転じ、年初来高値近辺の動きとなっています。また、収益性が高い配管・セキュリティ事業は、順調な改築や改装需要の恩恵を受けています。ノボザイムズは、同社の事業の60%を占める食品・飲料、農業、バイオエネルギー部門などでコモディティ価格の下落の影響を受け、通期の売上げ増加見通しを半分に切り下げたため、株価が下落しました。
環境マネジメント・サービスセクターも上昇しましたが、小幅な上昇に留まりました。ウエイスト・マネジメントは、廃棄物市場では廃棄物の価格・量ともに上昇傾向にありファンダメンタルズが強固であることや、足元の経済見通しが不透明であるなか廃棄物処理銘柄は比較的ディフェンシブ性が高いことが好感され、高い上昇率となりました。また、同社は廃棄物収集の効率を高めており、結果的にサービス面や価格決定力が強化されています。
今後の見通し
米金融政策がより緩和的になるとの期待や中国の景気刺激策などにより世界の経済成長の不透明感に対する市場の懸念は薄れてきていますが、引き続き注視する必要があります。グローバルな2019年の企業業績は2018年より緩やかなぺースで成長すると予想されていますが、GDP成長率見通しは2018年並みとされています。更には、地政学的緊張を背景に市場のボラティリティは高まっています。
水関連インフラへの投資は必要不可欠であり、中長期的に見ると、世界的に事業展開を行う水関連銘柄のファンダメンタルズは堅調であると考えます。温暖化の影響から世界的な気候変動によって引き起こされる干ばつや洪水の問題なども、水関連インフラへの投資を呼び起こしています。中長期的に水関連銘柄は引き続き魅力的な投資対象であると考えます。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2019年6月の水関連株式市場』を参照)。
(2019年7月22日)
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