株式投資で生計を立てる「トレーダー」になるには?

株式市場が好調になると、メディアにはしばしば株式投資で生計を立てる「トレーダー」が登場します。自由で優雅に見える彼らの生活ですが、その実態はどんなものでしょうか。短期投資と長期投資のスタイルの違いをはじめ、トレーダーとして収益を上げる基本を解説します。本記事は、ベストセラー作家で自ら数億円を運用する投資家でもある加谷珪一氏の著書、『“投資”に踏み出せない人のための「不労所得」入門』(イースト・プレス)より一部を抜粋し、不労所得を得るさまざまな方法を分析・解説します。

片手間では難しい短期投資、資金量が必要な長期投資

 株式 

労力   ★★☆☆☆

リスク  ★★★☆☆

リターン ★★★☆☆

難易度  ★★☆☆☆

 

株式市場が好調に推移すると、必ず世間で話題になるのが、投資で生計を立てるトレーダーの存在です。

 

メディアなどに登場するトレーダーの生活は優雅です。市場が開いているのは日本の場合、午前9時から午後3時までですから、仕事はその時間内に確実に終了します。あとの時間は自由気ままに過ごすことができるので、自分の好きなことに打ち込めます。

 

ブロガーやサロンの運営者は、ある種の不労所得者ではありますが、日常的な運営に手間暇がかかることは多くの人が認識しており、完全な不労所得にはならないと感じていると思います。

 

しかし投資であれば、働くという感覚はありませんし、サラリーマンが会社勤めをしながらでも実現できそうなイメージがあります。では実際のところ、どうなのでしょうか。投資には大きく分けて、長期的なスタンスで取り組む方法と、短期的なスタンスで取り組む方法の2種類があります。

 

長期と短期に厳密な定義はありませんが、一般的に長期投資というのは数年単位、短期投資というのは1カ月以内と考えればよいでしょう。短期投資の中には、1日のうちに何回も売買を繰り返すという手法も含まれています(デイトレーディングと呼ばれます)。

 

筆者は株式投資に関する著作もいくつか執筆していますし、実際に自分でも日常的に億単位の金額で株式投資をしています。筆者が得意とする投資スタイルは長期投資で、短期的に高い収益を上げるものではありませんが、株式投資という点ではそれほど大きな違いはないでしょう。

 

そんな筆者の個人的な経験や、投資の世界における一般常識としてほぼ断言できますが、特に短期のトレーダーについては、不労所得者とはおよそ正反対の場所にいます。投資で勝てるようになるためには相当な努力が必要ですし、投資をしていない時間はすべて調査や分析に充てるくらいの覚悟がないとうまくいきません。

 

一方で長期投資の場合、あまり手間はかからないので副業として取り組むこともできますが、利益が限定されるので、豊富な資金量がないと大きな収益にはなりにくいという欠点があります。投資金額が億単位以上になれば、リスクを抑えたうえで、一定の収益を投資から得るというやり方も選択できますが、「億り人(投資によって、億以上の資産を築いた人)」の分野にカテゴライズされる話です。

「短期投資は危険」というイメージが出来上がった理由

多くの人がイメージしているトレーダーは、それほど大きな額ではない資金を短期的なトレードで運用して、一定の収益を得るというスタイルだと思います。つまり短期的な相場の上下で利益を得るスタイルということになるでしょう。

 

世の中では一般的に短期投資と長期投資を比較して、短期投資は危険で長期投資は安全という漠然としたイメージがあるようですが、すべての投資にリスクが存在しているので、短期だと危険で長期だと安全という話ではありません。

 

しかし、短期投資には長期投資にはない特徴があるのも事実です。投資をする以上、誰もが儲けたいと思っていますから、大昔から相場で勝つための理論というものが研究されてきました。近年は金融工学が発達してきたことで、より科学的に市場のメカニズムを解明しようという動きも盛んです。

 

現代金融工学における重要な理論の1つとされているのが、効率的市場仮説です。これは市場というものは常に合理的であり、利用可能な情報をすべて反映して価格が形成されるという理論(仮説)です。

 

自分だけが特別な情報を持っているということはありえず、そうした情報は瞬時に市場で共有化されるので、効率的市場仮説に基づけば、他人を出し抜くのは原理的に不可能であるとの結論になります。この仮説に沿って考えると、株価を予測することはもちろん、成長株や割安株を見つけて大きな儲けを得るということも不可能になります。

 

この話はあくまで究極的な市場を想定したものであり、現実の市場はここまで完璧ではありません。したがって、多くの投資家が市場の歪みをうまく利用して、自分だけが大きな利益を得られるよう努力しているわけです。

 

ただ、この理論が発表されて以降、実際の市場がどのような値動きになっているのかについて、何度も調査や研究が重ねられ、一連の研究を通じて、短期的な値動きは限りなく効率的市場仮説に近いということが分かってきました。

 

つまり短期的に見れば、株価の動きは限りなくランダムになっていることが、科学的にほぼ証明されたのです(強調しますが、あくまで短期の場合です)。

 

株価の動きがランダムに近いということであれば、株価を予想することは極めて困難になります。あえていうなら、ギャンブルに近いゲームということになるでしょう。こうした市場で、何も考えずに売買を繰り返しているだけでは、継続的に利益を上げることはほぼ不可能です。

 

こうなると、短期投資は長期投資に比べて難しいという結論にならざるをえません。長期投資は短期投資と比較すれば難易度は低いですが、長期投資で十分な収益を得るためには大きな原資が必要となります。

 

資金が乏しくても高い収益を望む人は、信用取引(借入金を用いて投資すること)を使って短期投資を行うなど、過剰にリスクの高い投資をする結果となり、一気に資産を失う危険と隣り合わせになってしまいます。一連の状況を総合して、短期投資は危ないというイメージが出来上がったものと思われます。

経験則1:取引は「相場がよい時だけ」に限定

では短期的なトレードでは収益を上げることができないのかというと、そうではありません。ごくわずかではありますが、そうした投資を実現している個人投資家は存在していますし、ある程度の経験則も確立しています。

 

もっとも重要なのは向き不向きです。これはあらゆる投資スタイルに共通する話かもしれませんが、それぞれの投資スタイルには向き不向きというものが明確に存在します。もちろんある程度までは努力でカバーできるにしても、短期投資に不向きな人は、あまり上手に投資できません。向き不向きは少し試してみればすぐに分かります。

 

金額を限定したうえで、お試しで投資をしてみて、しっくりこないようなら短期投資で稼ぐことは諦めた方がよいでしょう。ある程度いけそうだという感触を持てた人でも、以下の経験則に沿って投資をすることが重要です。

 

最初の経験則は「相場がよい時だけに取引を限定する」というものです。メディアでは、株式投資などで資産1億円以上を築いた人がよく紹介されますが、こうした億り人が集中して現れるのは、ほとんどが相場が好調な時です。

 

ここ20年を見ても、億り人がたくさん登場したのは、2003年から2007年までの期間と、2013年から2017年までの期間に集中しています。詳しく説明するまでもなく、2003年から2007年までは小泉政権による構造改革相場、2013年から2017年まではアベノミクス相場で、株価が急上昇していました。

 

短期投資は株価の短期的な上下で利益を出す取引ですから、長期的な相場動向は収益にあまり関係しないと考える人も多いのですが、そんなことはありません。短期的なトレーディングであっても、相場全体が伸びている時の方が圧倒的に有利です。多くの人が「買い」で利益を出すわけですから、当然といえば当然の結果といってよいでしょう。

 

これに加えて、相場が伸びていると市場の参加者も増え、流動性も増しますから、買いたい時に買いたい値段で買うことができ、逆に売りたい時には売りたい値段で売ることができます。これは短期的な投資家にとってはとても大事なことです。

 

極論をいえば、短期的な投資家であっても、相場が冷え込んでいる時には投資を控えることが重要です。それまでに蓄積した利益を温存して、次の相場に備える必要があります。この間は利益が得られませんから、じっと我慢して次に備えるという胆力が必要となるでしょう。

経験則2:値上がりの「幅」より「期間」が重要

2つ目の経験則は「日柄と値幅を理解する」ことです。上昇していた株価が一時的に下落することを「調整」と呼びますが、調整には2つの種類があります。1つは「日柄調整」、もう1つは「値幅調整」です。

 

「日柄」とは、株価が下落してから、時間がどのくらい経過したのかということを意味しています。これに対して「値幅」は、価格がどのくらい下がったのかという意味になります。

 

どちらも重要な概念ですが、特に気を配る必要があるのは、値幅ではなく日柄の方です。多くの人は株価にばかり気を取られて、時間についてあまり考慮に入れません。その結果、大きな損失を抱えてしまいます。

 

一般的に株価の下落が落ち着き、反転するまでには、一定の「時間」が必要となります。時間が短い場合には、いくら値下がり幅が大きくても、株価はさらに下がる可能性が高いのです。

 

[図表]「日柄調整」と「値幅調整」
[図表]「日柄調整」と「値幅調整」

 

短期的な売買で利益を上げる投資家にとって、株価が大きく下落した時は、買いを入れるチャンスです。しかし日柄を理解していないと、とんでもないことになってしまいます。

 

もう十分下がったと思って買いを入れると、そこから株価はさらに下落し、焦った投資家は、そこで損切り(さらなる損失を避けるため、損を承知で売りを出すこと)をしてしまいます。たいていの場合、損切りしたあたりから株価は上昇を開始し、大きな機会損失まで抱えるという結果になってしまいかねません。

 

このような時は、価格ではなく、下落が始まってからの日数に着目した方が、底入れのタイミングなどを把握しやすくなります。たとえば、下落が始まってから3日が経過して、まだ下がっているとすると、反転する可能性の高いタイミングはさらに5日後といった具合に、後ろにズレ込んでいくのが普通です。日柄の分析でよく用いられるのが、フィボナッチ級数です。詳細は割愛しますが、1、2、3、5、8、13、21と数が増えていく級数で、相場反転の時間予想によく用いられます。感覚的には、株価の調整が長引いたら、上向くにはさらに時間がかかると考えればよいでしょう。

 

この話は上昇相場にも適用できます。相場の上昇がある程度続いた場合、すぐに下落に転じることはなく、さらに長期にわたって上昇が続く傾向が強いということを忘れてはなりません。多くの人が「バブルだ!」などと批判しているタイミングでは、まだまだ株価は上がります。本当に株価が下がるのは、みなが上昇を疑わなくなった時です。

 

一方、値幅について考える場合には、金額ではなく割合(パーセンテージ)で考えることが重要です。

 

2018年の12月25日、米国株の下落を受けて、日経平均株価が1000円以上下落するという出来事がありました。市場では1000円超の下落という言葉が独り歩きして、一部の投資家は狼狽(ろうばい)して株を売ってしまったようです。

 

しかしながら、下落幅について絶対値で議論してもあまり意味はありません。2019年6月現在、日経平均株価は2万円前後ですが、日経平均が2万円の時の1000円は5%です。量的緩和策がスタートした2013年の日経平均株価は1万円でしたから、同じ5%の下落ということになると絶対値では500円です。

 

つまり、その時の株価水準によって、絶対値が持つ意味は変わってくるため、原則として値幅について議論する際には、割合を使った方がよいということがお分かりいただけると思います。値幅についても、パーセンテージで理解すれば、反転のタイミングをつかむヒントになります。

相場格言「半値八掛け二割引」とは?

値幅についてよく知られている相場格言に、「半値八掛け二割引」というものがあります。これは株価がピークから下落に転じた時、どのくらいまで下がるものなのか、ゴロ合わせ的に語られるものです(もともとは商売における値引きの目安と言われています)。

 

株価が半額になって、そこから8掛けになり、さらに2割引ということですから、最終的に株価は、0.5×0.8×0.8=0.32になります。つまり3分の1になるまでは、買いを入れてはいけないという意味です。言い替えれば、半分程度の下落では、まだまだ警戒が必要ということにもなるでしょう。

 

この格言に科学的根拠はありませんが、ある程度の法則性は見いだすことができます。しかもこの経験則は投資対象を問いません。

 

2017年の年末から2018年の年初にかけて、仮想通貨であるビットコインの価格が暴落しました。ビットコインは株式投資と異なり、極めて投機性の高い商品ですが、それでも人が投資しているのは同じですから、値動きに本質的な違いは生じません。

 

2017年12月に220万円を突破していたビットコイン価格は、そこから急激に下落し、最終的には2018年2月の初旬に70万円前後まで値下がりしたところで反転しました。220万円の3分の1は約70万円ですから、おおよそ合っていることになります。

 

世間では「前例のない暴落」などと大騒ぎでしたが、投資の経験が豊富な人なら、特に驚くような話ではなく、底入れもある程度は予想できたはずです。

 

最終的に株価は、値幅と日柄の両方が十分に消化されて初めて反転することができます。値段が十分に下がっても、日数が経過していない状態の場合、さらに下落する可能性が高いでしょう。一方、値段があまり下がっていなくても、日数が十分に経過しているのであれば、それで調整は終わりになる可能性もあるわけです。

 

基本的に日柄が足りない場合には、同じ方向性が継続し、日柄を十分に確保している場合には逆方向になる可能性が高いと考えてよいでしょう。つまり、日柄と値幅の両方が株価に影響を与えますが、日柄の方がより強い影響を与えているということになります。

経験則3:「早い段階からの参加者」が圧倒的に有利

3つ目の経験則は、「できるだけ早く参戦する」という話です。この話は2つ目の経験則と密接に関係しているのですが、株価は通常、金額ではなく割合で上昇します。

 

たとえば、1000円だった株価が上昇して1500円になったと仮定しましょう。この時値上がりした金額は500円ということになります。では、1500円になった株価がもう一段上昇した場合、同じ500円の上昇で2000円になるのかというと、そうではありません。

 

1000円から1500円の上昇は50%の上昇なので、次も同じように50%上昇する可能性が高いのです。1500円の50%ということは、2250円と計算されます。つまり、株価は上昇すればするほど、絶対値としてさらに値上がりが加速していくのです。

 

これは何を意味しているのかというと、早い段階から投資に参加した人が、圧倒的に有利なゲームになるということです。上昇する相場に早い段階から参戦できた人は、最終的には何倍、何十倍に資産を増やせる可能性がありますが、株価が上がってしまってから参戦した人は、その後さらに相場が長期に継続しない限り、大きな利益は得られません。

 

しかも、相場の期間が長くなるにつれて、参戦する投資家の顔ぶれも変わってきます。株価が反転し、上昇相場がスタートした直後は、多くの人がその事実に気付いていません。

 

このタイミングで市場に参入してくるのは、たいていが変化に敏感な個人投資家で、彼らはかなりの確率で利益を上げることができます。その後、相場に参戦してくるのが、ヘッジファンドなど、機動的な機関投資家です。プロの投資家の取引のボリュームが厚くなると、いよいよ一般的な機関投資家が加わってきます。

 

そして、最後の最後に投資をスタートするのが、これまで株式投資に否定的だった個人投資家です。彼らが参戦してくる頃には、1つの相場は終了し、株価は下落に向かいますから、初期段階で投資を開始した投資家は、その前に売りに転じて利益を確保します。

 

初期段階から投資を決断することにはリスクがともないますが、こうしたリスクを取ったからこそ、その投資家は大きなリターンを得ることができます。逆にいえば、投資において、最後に参戦する人にだけはなってはいけないということがお分かりいただけると思います。

 

これまで説明してきた「相場がよい時だけに取引を限定する」「日柄と値幅を理解する」「できるだけ早く参戦する」という3つの経験則を忠実に守っていれば、投資で成功する確率はグッと上昇するはずです。

 

 こんな人にオススメ! 

 

◎ハイリスクに耐える胆力がある(短期)。

◎堅実で、長いスパンで投資を考えられる(長期)。

◎政治や経済の情勢に関心がある。

 

加谷 珪一
経済評論家

 

経済評論家

東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っており、ニューズウィーク日本版、現代ビジネスなど多くの媒体で連載を持つ。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。

加谷珪一オフィシャルサイト http://k-kaya.com/

著者紹介

連載“投資”に踏み出せない人のための「不労所得」入門

本連載は、特定の金融商品の推奨や投資勧誘を意図するものではありません。また、投資にはリスクがあります。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。なお、執筆者、製作者、イースト・プレス、幻冬舎グループは、本連載の情報によって生じた一切の損害の責任を負いません。

“投資”に踏み出せない人のための「不労所得」入門 

“投資”に踏み出せない人のための「不労所得」入門 

加谷 珪一

イースト・プレス

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