任意売却物件とはそもそも何か?
任意売却物件とは、住宅ローンの返済が滞っている物件が裁判所の命令で「競売」によって清算される前に、金融機関など債権者の了解をもらって、普通物件と同じように売却される物件のことを指します。不動産投資で成功するにはどうすればいいのか。本連載では、個人投資家の皆さんに、任売物件の魅力やその投資法などについて紹介していきたいと思います。
まず、我々のような不動産投資のプロが不動産売買で最も重視するのは「仕入れ値を安くする」ことです。いかに格安な不動産を手に入れるかどうか、ということです。
近江商人の言葉に「利は元にあり」というのがありますが、「商売とは、仕入れてしまった後であれこれ売る方法に苦労するよりも、売れるものを安く仕入れることが利益を生む」という意味ですが、不動産投資にも同じことがいえます。むろん「安かろう悪かろう」では困ります。良質の物件をいかに格安な価格で入手できるかが重要になります。格安な不動産を仕入れる方法はいろいろですが、実はプロであっても掘り出し物に巡り合える機会はそうそうあるものではありません。
そこで、我々は競売や任売物件にもビジネスの照準を合わせるわけですが、競売物件は、競売件数が大きく減少しており、なおかつ法整備がなされて一般の人でも参加できるようになった今では「掘り出し物」にめぐり合うのは不可能に近いため、任売物件への注目度がますます増しています。ここでは任売物件について、さらに掘り下げてみたいと思います。
成功するためには「コスト管理」も重要に
任売物件の売買で成功するためには、最低でも市場価格より2割は安い物件を手に入れるところがポイントですが、きちんとコスト管理をすることも重要になってきます。任売物件の売買に成功するための手順とともに手続きにかかる費用を見ていきましょう。ざっと以下のような手順とコストになります。
❶物件探し
物件探しそのものにはコストは不要です。
❷ローンの組成
物件の売買契約を結ぶ段階で、ローン組成が可能かどうかをチェックします。コストはむろん不要です。
❸売買契約成立(購入)
不動産会社に「仲介手数料」を支払います。物件価格の3%+6万円(消費税別)。さらに「印紙代」や「登録免許税」「不動産取得税」などがかかります。
❹任売物件の賃貸運営
賃貸物件の運営には、「管理料」や「修繕費」などのメンテナンス費用が掛かります。通常は不動産会社もしくは不動産管理会社に管理料を支払って管理してもらうことになります。物件の近くに住んでいれば、自分で管理する方法も可能です。
❺固定資産税など
不動産は保有しているだけで、「固定資産税」や「都市計画税」が毎年課税されてきます。
❻ローン返済
変動金利で融資を受けている場合は、金利上昇によって返済金が上昇する場合もあります。
❼売却(転売)
不動産会社に仲介手数料を支払います。さらに不動産の売却によって「譲渡所得税」がかかります。物件を購入してから売却した年の1月1日時点で5年以下であれば「短期譲渡所得」、5年超であれば「長期譲渡所得」となり税率も変わってきます。譲渡所得にはマイホームを売却した場合には3000万円の特別控除がありますが、マイホームではない場合にはありませんから、これもあらかじめ計算して、5年以内に売却しても大丈夫なのか、あるいは5年超の長期譲渡所得適用まで待ったほうがいいのかを、きちんと考えておく必要があると思います。
以上のような手順とコストがかかるわけですが、このあたりのコストについてもきちんと自分で勉強して調べておく必要があります。たとえば、個人ではなく「法人」として会社を設立してビジネスをすれば、利益はすべて法人税扱いにできることも、知っておくといいでしょう。信頼できる不動産業者に相談してみるのもよいかもしれません。
【不動産の取得にあたって必要なコストの目安】
【不動産売買にかかる仲介手数料】
任売物件の購入から売却までのプロセスを紹介しましたが、これらのプロセスの中でも特に重要なポイントがいくつかあります。たとえば「ローンの組成」ですが、これはいわゆる「資金調達」を意味します。資金調達同様に「物件選び」や「修繕管理」も重要になってきます。
次回より、「資金調達」「物件選び」「修繕管理」の3項目について詳細に解説していきます。