テクノロジー・セクター:長期的な投資魅力に変化なし

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報を転載したものです。

 

テクノロジー・セクターには、スタート・アップ企業や全く新しい機器を提供する企業のように、変動の大きい企業がすべてではありません。テクノロジー・セクターは、長期的には投資魅力の高いセクターであることには変わりがありません。

 

 

ここ最近、オンライン配車サービスを展開するリフト(米国)やウーバー(米国)などの新たなビジネス・モデルを展開する企業のIPO(新規株式公開)がテクノロジー・セクターにおけるニュースの中心で、注目を浴びてきました。投資家はこれらの企業の株式を飛びつくように購入し、その後すぐに売却するという状況にありました。こうした短期的な売買は明らかに市場を不安定にします。

 

しかし、こうした状況がテクノロジー・セクターの全体を示しているわけではないと考えます。実際に、MSCI世界株価指数の情報技術セクター(米ドルベース、配当含まず)は、2019年年初来、5月末までで+15%超の上昇となり、全てのセクターの中でも最も上昇率が大きくなりました。

 

この背景の一つには、長期的な構造的トレンドから同セクターは大いに恩恵を受けると期待されることがあると考えられます。私たちの日常生活の中でテクノロジーが果たす役割は、日に日に大きくなっています。長期的な視点を持つ投資家は、短期的な市場の「ノイズ」は無視し、長期的にみた潜在的な成長魅力を重視します。1990年代後半のITバブル期と比べると、今日のテクノロジー・セクターの企業はファンダメンタルズ(基礎的条件)の点で全く異なっています。

 

まずは、現在、多くのテクノロジー企業で利益が出ている点です。市場環境が厳しくなった局面でも、持ち堪える余地があります。

 

米国の中型テクノロジー企業全体についてみてみると、フリー・キャッシュ・フローは3.49億ドルと20年前(4,600万ドル)に比べて大幅に増加しています。そして、利益額では、S&P500構成企業全体の利益の約1/5を占めます。1998年にはこれが約10.3%でしたので、大きく改善しています。

 

さらに、株式のバリュエーション(投資価値評価)水準です。もちろん、数年前に比べると魅力は薄れてはいますが、それでもITバブル期に見られたような過剰なまでの割高感はないと考えられます。

 

米国のソフトウェア・セクターのバリュエーション水準を、ITバブル期の水準と比べてみると、現在は依然として魅力的な水準にあると考えられます。株価/フリー・キャッシュ・フロー比率をとってみると、現在はITバブル期の約半分、配当利回りは3倍も高い水準です。

 

[図表1]さらに魅力が増す~米国のソフトウェア・セクター
[図表1]さらに魅力が増す~米国のソフトウェア・セクター

 

また、現在のテクノロジー・セクターで起こっている革新は、あらゆる産業に影響が及ぶものであり、この点もITバブル期のものとは異なるとみています。

 

例えば、(人工知能)についてみてみると、アルファベット(米国)傘下のグーグルは、彼らが提供する検索エンジンをよりよいものとするために、買収したイギリスのAI企業DeepMind社の技術やRankBrain(機械学習システム)などを通してAI技術の開発に取り組んでいます。アマゾン(米国)はAI技術を、同社が提供する「アレクサ」に加えて、顧客の購入履歴を学習し、今後の購入動向の予測を行うといったことに活用しています。マイクロソフト(米国)が提供するAIアシスタント「Cortana」は機械学習をベースに、製品の需要予測などを行います。フェイスブック(米国)ではAI技術を、自然言語処理やニュース・フィードのリアルタイム分析、顔認証ソフトウェア(97%の精度で判別可能)などに活用しています。

 

2030年までに、AIは世界のGDPを14%(約15.7兆ドル分に相当)押し上げる効果があると期待されています。

 

[図表2]経済効果 ~2030年における「AI」の世界GDPヘの貢献度
[図表2]経済効果 ~2030年における「AI」の世界GDPヘの貢献度
 

AIの活用が広がる中で、より大容量のデータ・ストレージ、より安全性の高いデジタル・セキュリティ、より高速なネットワークなどが求められるでしょう。

 

クラウド・コンピューティングは、急増する従量課金制のデータ収集における課題の解決に向けて進化を遂げつつあります。ある調査によると、同分野の売上高は2017年から2022年までに5倍に拡大することが見込まれているとのことです。これは単なるはじまりにすぎず、クラウド・テクノロジーへの投資はさらに拡大が期待できると考えています。

 

ネットワークについては、5G(第5世代移動通信システム)が、無線通信のさらなる高速化・低遅延化の実現に貢献するものと期待されます。

 

米国ではベライゾンが今年末までに30都市での5Gサービスの開始を目指しています。日本、韓国、中国でも5G対応が進められており、2025年までには世界中で5Gサービスが開始されるとみられています。

 

デジタル分野でのセキュリティ強化については、当面、「ブロックチェーン」の活用などが考えられます。

 

仮想通貨バブルは崩壊した可能性もありますが、これはむしろブロックチェーン技術自体にとってはいいニュースかもしれません。ブロックチェーン技術が実際に世界中で利用されているアプリケーションに活用されていくものと期待されます。ブロックチェーンは、データを断片化し、機密性を高めることができるため、銀行業務やオンライン・ショッピング、企業の人事情報、物流分野など様々なところで活用されます。2030年までに、ブロックチェーン技術は3.1兆ドルの経済価値を生み出すとの予想もあります。

 

 

もちろん、すべての産業、すべての投資には「リスク」が伴います。これまで紹介してきた様々なテクノロジーについても例外ではありません。

 

特に、米国やユーロ圏の規制当局によるサイバー・セキュリティに対する規制の厳格化などにみるように「規制」強化の動きや、米中貿易戦争の深刻化・長期化の影響などが、足元では脅威となるでしょう。

 

こうした脅威やリスクの影響について注視していくことは重要ですが、こうした状況が株式市場においてアノマリーを生み出し、中長期的にみると良好な投資の好機となる場合があります。特に、テクノロジー銘柄については他のセクターの銘柄に比べると、こうしたことが起こる可能性が高いとみています。

 

現在のテクノロジー・セクターは、過去のITバブル期に比べると、より分散化され、より収益性も高い企業が存在しており、依然として長期的な投資魅力が高いセクターであることには変わらないと考えます。

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『テクノロジー・セクター:長期的な投資魅力に変化なし』を参照)。

 

 

(2019年6月14日)

 

 

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1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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