技術革新や規制強化による風力発電と太陽光発電のコストの大幅低下で、導入量が拡大し、電力市場に革新的な変化をもたらし始めています。自然エネルギーへのシフトと設備投資の拡大は規制下の公益企業の利益増要因になり注目です。
自然エネルギー革命の注目ポイント~コスト大幅低下で、公益企業の増益要因に
21世紀に入ってシェール革命に次いで、技術革新により次のエネルギー革命「自然エネルギー革命」が急速に進んでいます。風力発電と太陽光発電の導入量が拡大し、電力市場に革新的な変化をもたらし始めています。
国際エネルギー機関(IEA)は世界の自然エネルギーの全発電容量に対する割合が2015年の31%から2040年には50%に拡大すると予想しています(図表1参照)。
![[図表1]世界の電源別発電設備容量の推移 期間:2015年~2040年(予想)※2015年実績、2016年推定、2017年~2040年予想 ※CSP:Concentrated Solar Power、集光型太陽熱発電 出所:IEA(WORLD ENERGY OUTLOOK 2017)のデータを使用しピクテ投信投資顧問](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/0/5/500/img_05900806459ad016bb62e17cb20b8f6269019.jpg)
期間:2015年~2040年(予想)
※CSP:Concentrated Solar Power、集光型太陽熱発電
出所:IEA(WORLD ENERGY OUTLOOK 2017)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
拡大の背景には、①規制強化、②環境重視の社会的な流れ、③蓄電池やスマートグリッドなどの技術革新、④風力・太陽光発電の低コスト化などがあげられます。
自然エネルギーへのシフトと設備投資拡大は制度上、規制下の公益企業の増益要因になる一方、運用コストの低下で電力料金を大きく引き上げる必要がないため消費者にとっても好ましく、様々な面からメリットがあり、好循環のサイクルが期待されます。
技術革新により自然エネルギーの発電コストが大幅に低下
自然エネルギー拡大の背景の大きな要因のひとつに、自然エネルギーの発電コストの大幅な低下があります。蓄電池やスマートグリッド、発電設備などの技術革新により、平均的な発電コスト(LCOE注2)は2010年~2017年にかけて、太陽光で-72%、陸上風力で-25%低下しています(図表2参照)。
![[図表2]主な自然エネルギーの発電コスト 2010年、2017年 注1:G20諸国の2017年の化石燃料による火力発電費用(予測) ※各発電コストは国際的な均等化発電原価 出所:国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/3/b/500/img_3bae12dc84d5300343e489e7e957a0da60886.jpg)
注1:G20諸国の2017年の化石燃料による火力発電費用(予測)
※各発電コストは国際的な均等化発電原価
出所:国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
また、自然エネルギーの発電コストは補助金や税額控除などを除いても、現在コスト面で火力発電と比べて、遜色なく、条件によっては下回る水準ともなっており、さらなる低下が期待されています。
自然エネルギーの設備投資拡大は規制下の公益企業の増益要因に
規制下の電力料金をはじめとした公共料金の計算方法は複雑で国や地域によって異なりますが、単純化すると、料金は発電施設の資産価値(レートベース)に対して一定の利益を確保する算定レート(ROEなどが元になる)を掛けて、燃料費などのコストをプラスして設定されます(図表3参照)。
![[図表3]認可公共料金の設定例 ※認可ROEは、規制下の公益企業が電力料金を設定する上で認められたROEの上限水準です。算定レートはこの認可ROEと負債コスト(借り入れコスト)を勘案したレートとなります。これを発電施設等の純資産に乗ずることで、確保できるおよその利益が算出されます。公益企業は設備投資を増やすと電力料金の値上げが可能になり、利益を増やすことができるので、設備を更新して停電などが発生しないように十分な電力供給が行えるよう促す仕組みとなっています。](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/b/b/640/img_bb8f986a1484476fe92742911b32ee4f62301.jpg)
※認可ROEは、規制下の公益企業が電力料金を設定する上で認められたROEの上限水準です。算定レートはこの認可ROEと負債コスト(借り入れコスト)を勘案したレートとなります。これを発電施設等の純資産に乗ずることで、確保できるおよその利益が算出されます。公益企業は設備投資を増やすと電力料金の値上げが可能になり、利益を増やすことができるので、設備を更新して停電などが発生しないように十分な電力供給が行えるよう促す仕組みとなっています。
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このため、設備投資を拡大し、発電施設の資産価値が増加すればするほど、増益要因となる仕組みになっています。米国の例でみると、米国の民間の電力関連インフラ投資の拡大にともない、利益が増加しています(図表4参照)。
![[図表4]米国民間企業の電力関連インフラ投資額(左)と米国電力企業の1株あたり利益(右) 年次、期間:1990年~2017年 ※米国電力企業1株当たり利益:S&P米国電力企業株価指数構成銘柄の1株当たり利益平均 ※米国民間企業の電力関連インフラ投資額:太陽光、風力、送電線等の設備投資を含む ※一株あたり利益は12ヵ月平均 出所:米国経済分析局(BEA)、ブルームバーグのデータをもとにピクテ投信投資顧問作成](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/3/0/500/img_30ee5eb169f9e0414c57c111aadf973f90588.jpg)
年次、期間:1990年~2017年
※米国電力企業1株当たり利益:S&P米国電力企業株価指数構成銘柄の1株当たり利益平均
※米国民間企業の電力関連インフラ投資額:太陽光、風力、送電線等の設備投資を含む
※一株あたり利益は12ヵ月平均
出所:米国経済分析局(BEA)、ブルームバーグのデータをもとにピクテ投信投資顧問作成
自然エネルギーへのシフトは、火力に比べて燃料費がかからず、電力料金が上昇しにくい
規制下の公益事業で、火力発電に替わって、風力や太陽光などの自然エネルギーの設備投資を拡大した場合には、設備投資の増加で電力料金を押し上げる要因が増えても、燃料費はかからず、減価償却の増加などを含めても運用コストが火力発電などよりも低いことから、電力料金を大きく引き上げる必要がなくなります。
米国中心に企業、株主、消費者、規制当局にとって好循環のサイクルに期待
太陽光、風力発電への設備投資拡大は、企業側には増益のメリット、株主は増配、消費者は電力料金の上昇が抑えられる、環境にもやさしい、規制当局にとっては、電力料金は抑えられたままなので、政治的な値下げ圧力がかからないなど、各立場からもメリットがあり、特に規制下の公益事業比率の高い米国中心に公益事業の好循環のサイクルの恩恵が期待されます(図表5参照)。
ただし、発電用地の確保、資金調達、規制当局の認可などをはじめ、クリアするべき事項もあり、シフトの流れに大きく出遅れた企業はリスクとなる点には注意が必要です。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『自然エネルギー革命がもたらす公益業界の知られざる注目点』を参照)。
(2019年6月5日)
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