4月半ばから豪ドルは軟調
米中貿易摩擦や利下げ観測が背景
■2019年の豪ドルの対円相場は4月上旬にかけて上昇していましたが、その後は軟調に推移しています。
■米中が互いに追加関税の賦課を決定し、米中貿易摩擦の激化懸念が高まったことや、豪州の1-3月期の消費者物価指数の減速や4月の失業率の上昇を受けて、利下げ観測が強まったことが背景です。
豪ドルの対円レートと日豪金利差
RBAは6月に利下げを検討
ロウRBA総裁が講演で言及
■豪州準備銀行(RBA)のロウ総裁は、5月21日の講演で6月4日の金融政策決定会合において利下げを検討する方針を示しました。
■ロウ総裁は、近い将来に利下げを実施しなければ、経済成長やインフレがRBAのメインの見通しより下振れる可能性が高いと述べました。景気の減速や長引く低インフレが利下げの検討を促したとみられます。
■ロウ総裁が明確な形で自主的に利下げの検討に言及したことから、RBAが6月に利下げに踏み切る可能性が高いと考えられます。
消費者物価指数と政策金利
豪政府の財政政策や米中の歩み寄りに期待
■RBAによる6月の利下げの可能性は高いとみられますが、豪ドルについては、これまで利下げを織り込みながら低下してきたことや、投機筋が大幅に売り越していることから、利下げ実施後の下落余地は限定的と思われます。また、今後利下げ打ち止め感が出てくれば、上昇に転じる可能性もあります。
■5月18日の総選挙で与党・保守連合(自由党・国民党)が労働党に勝利し、保守連合が掲げていた所得税の減税やインフラ投資の拡大などの実現性が高まったことは、豪ドルの支援材料になると考えられます。
■米中貿易協議については不透明感が強い状況が続いていますが、両国とも自国の経済・市場に大きなダメージを与えることは避けたいと考えられることから、今後両国が歩み寄り、米中首脳会談の実現など協議が進展することが期待されます。協議が進展すれば、豪ドルにとってポジティブに働くとみられます。
(2019年5月29日)
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