日本経済の成長率低下と金利低下、マイナス金利政策
かつて日本でも高金利の時代がありましたが、現在は低金利が定着しています。国の経済成長率と金利は密接に関わっており、日本の金利低下の要因の一つに経済成長率の低下が挙げられます。また日銀はインフレ目標を達成するためにマイナス金利政策を導入しました。マイナス金利の恩恵を受けるのはお金の借り手であり、最大の借り手である日本の政府が最も恩恵を受けることになります。マイナス金利の導入によってお金の価値を守るための投資の必要性は一層増したと考えられます。
日本経済の成長率低下と金利低下
日本は金利の低い国と言われて久しいですが、なぜ長い間低金利の状態が続いているのでしょうか。かつてのような高い金利は期待できないのでしょうか。その答えを知る上で、金利が高かった頃の日本の状況を考える必要があります。
60年代や70年代の日本は、預金金利が5%を超えるなど今では想像できないほど金利が高い時代でした。その頃の日本の経済には活気があり、経済成長率も高く、「高い金利を払ってでもお金を借りたい」という個人や法人が数多くいました。つまり、高い金利を払って借金したとしても、投資や事業を拡大することで金利以上の利益が期待できるということです。したがって、銀行も預金者から5%を超える高金利でお金を集め、7%で融資するといったことができました。
ところが、現在の日本で「高い金利を払ってでもお金を借りたい」という人はどれほどいるでしょうか。ご存知の通り、日本経済はかつてのような活気を失い、経済成長率も大きく低下しています。このような状況で、かつてのような旺盛な資金需要は望めません。むしろ、運用難のお金が溢れかえっており、優良企業がお金を借りたいと言えば、1%以下の金利でお金を借りることができます。つまり、日本の経済成長率の低下と共に金利低下が起こっているのです。これでは銀行が預金者に1%の金利を払ってお金を集めることはできません。このように経済成長率と金利には密接な関連性があり、経済成長率が高い国は旺盛な資金需要から金利は高くなる傾向にあります。一方、経済成長率の低い国は資金需要が少なく金利も低くなる傾向にあります(図表1、2)。
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日本が高金利の国になるためには、かつてのような高い経済成長の時代を迎えなければ難しいと言えるでしょう。しかし、日本経済が突然高い経済成長の時代に突入することは期待できず、現在の状況が当分続く可能性が高いと考えられます。
日本のマイナス金利政策
2016年1月29日、日本銀行は年率2%の「物価安定の目標」をできるだけ早く実現するために、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入することを決定し、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で緩和手段を駆使することで、金融緩和を進めていくことを発表しました。
マイナス金利の導入により、日本国債の利回りは期間10年までが全てマイナスの利回りとなりました(図表3)。
これは、国債を満期まで保有した場合、マイナスのリターンになることを意味します。つまり安定的に運用しようとしても、お金が減ってしまうことであり、お金を目減りさせずに運用することができなくなってしまったのです。
銀行預金や保険など元本が確保されていてプラスの利回りが維持されているものは、マイナス金利のしわ寄せが預金者や保険契約者ではなく、今のところ銀行や保険会社に生じています。そのため、預金利率が更に引き下げられたり、保険料率が引き上げられたり、保険の新規募集停止などが起こっています。
では、このマイナス金利で一番の恩恵を受けているのは誰でしょうか。金利低下によって恩恵を受けるのは、お金を借りている人です。したがって、日本で一番お金を借りている主体である日本政府が一番の恩恵を受けていると言えます。対GDPの債務比率が250%を超え、1,000兆円以上の債務を抱える日本政府にとって、債務削減は大きな課題です。2%以上の物価上昇率目標も、マイナス金利という手段も、この天文学的に膨れ上がった債務の価値を減らす政策と考えられます。
マイナス金利の導入によって安全資産とされていた日本国債でさえマイナスのリターンに陥ってしまう中、お金を減らさないための投資、お金を守るための投資の必要性は一層増した、と考えられます。
データは過去の実績であり、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『実践的基礎知識投資の必要性編(2)<日本経済の成長率低下と金利低下、マイナス金利政策>』を参照)。
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