実践的基礎知識クレジット編(4)<クレジット投資のリスク>

ピクテ投信投資顧問株式会社が、実践的な投資の基礎知識を初心者にもわかりやすく解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するコラムを転載したものです。

クレジット投資のリスク

世界的な低金利環境でより高いリターンを求める投資家は、高い利回りのクレジット投資に期待を寄せがちになります。しかし、高い利回りを追求するあまり、きちんとリスクを把握しないまま投資して、リスクに見合ったリターンを得られなかったり、リスクに見合わない低利回り、高価格で投資を開始してしまう可能性があります。

 

 

クレジット投資には信用リスク単体のものは少なく、複合的なリスクであり、独特のリスクが多いので、どういう種類のリスクで、どのくらいの大きさのリスクなのか、リスクの把握がとても重要です。その上で、得られるリターンは充分なのか、利回りは充分なのか把握することが大切になります。

デフォルトリスクと価格変動リスク

前回までのレポートでご説明したように、クレジット投資には様々な投資対象があり、それぞれに様々なリスクがあります。今回はクレジット投資のリスクをさらに詳しくご説明します。まずはクレジット投資のメインのリスクである信用リスクについてです。信用リスクはデフォルトのリスクと価格変動リスクの2つに大別されます。まず、デフォルトリスクですが、デフォルトとは「債務不履行」のことで、約束されている元利払いが行われなかったり、遅延したりすることを指します。

 

端的に言えば、「100で償還される予定の債券」が100で償還されない、「5年間毎年3の利息が支払われて、合計15の利息がもらえる予定の債券を110で買った場合」が、100で償還され5の利益が出ると期待していたにもかかわらず債務不履行がおきた場合にマイナスリターンになってしまう、といったことが起きるのがデフォルトリスクです。

 

リーマンショック時に急上昇したデフォルト率はその後急速に低下していましたが、足元ではデフォルト率の上昇が見られており、ムーディーズ社の予測によると今後も更に上昇していくと予想されています(図表1)。

 

[図表1]ハイイールド債のデフォルト率推移と今後の予測 (月次、期間:1994年1月~2016年12月、2016年2月以降は予測) ※2016年2月以降はムーディーズ・インベスターズ・サービスによる予測 出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービスのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ハイイールド債のデフォルト率推移と今後の予測
(月次、期間:1994年1月~2016年12月、2016年2月以降は予測)
※2016年2月以降はムーディーズ・インベスターズ・サービスによる予測
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービスのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

そして、ひとたびデフォルトが発生すると、信用リスクをとってクレジット投資を行っている投資家は打撃を受けます。どういった発行体のどういった種類のクレジット商品に投資しているかによってこうしたダメージの発生確率や発生時の被害は異なってきますが、ムーディーズ社の調査によれば、1983年から2015年に発生したデフォルト時の取引価格ベースの回収率は第一抵当バンクローンで66.6%、第二抵当バンクローンで31.8%、第一抵当社債で53.4%、第二抵当社債で49.7%、シニア無担保社債で37.6%、劣後債で31.9%でした(グラフは各データが揃っている過去20年分のみ)。投資額に対してこうした低い回収率となってしまうのが、デフォルトのリスクです(図表2)。

 

[図表2]デフォルト時の回収率  (年次、期間:1995年~2015年)  出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービスのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]デフォルト時の回収率
(年次、期間:1995年~2015年)
出所:ムーディーズ・インベスターズ・サービスのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

次に価格変動リスクです。信用リスクに対する値付け(プライシング)は利回りということになり、「5%の利回りでないと買えない」「5%の利回りがあれば買う」というのが、投資家がその信用リスクに認める価値・価格ということです。投資家が強気になったり、楽観視したり、需要が供給を上回ると、より低い利回り/高い価格で購入することになります。

 

反対に投資家が弱気になったり、悲観視したり、需要が供給を下回ると、より高い利回り/低い価格で購入することになります。ある信用リスクに対して、低い利回り/高い価格で投資した場合、投資開始後により高い利回り/低い価格でないと買ってもらえなくなれば、価格下落による損失を被る可能性があります。これが信用リスクによる価格変動リスクです。

 

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リーマンショック時にはこの価格変動リスクによってクレジット商品の価格は大きく下落しました。また、大幅にディスカウントした価格でも買い手のつかないものもありました。

信用リスクとその他のリスクの複合

クレジット投資とは主に信用リスクをとる投資です。しかしながら、とるリスクが信用リスク単体ということは少なく、様々なリスクを複合的にとるのが通常です。例えばハイイールド債は信用リスクと金利リスク、加えて流動性リスクも存在します。金利リスクが顕在化し、ベース金利が上昇して利回りが上昇し価格が下落することになります(図表3)。

 

[図表3]ベース金利と上乗せ金利
[図表3]ベース金利と上乗せ金利

 

ベース金利:通貨毎に異なります。基本的には取引通貨を発行している国の国債利回りです。国より信用力の劣る借り手は、国債の利回りよりも低い金利でお金を借りることはできません。貸し手は同じ通貨で同じ金利なら、信用力の高い方に貸そうとするからです。

 

上乗せ金利:国よりも信用力の劣る借り手はそれぞれの信用力に応じた上乗せ金利を加えた金利でお金を借りることになります。どのくらいの上乗せ金利を求めるかは、借り手の信用力や、投資家心理(安い利回りでもいいから買いたい/高い利回りでないと買いたくない)などに応じて変わります。

 

もちろん信用リスクである上乗せ金利が上昇することで利回りが上昇して価格が下落し損失を被ったり、デフォルトにより損失を被ることもあります。

 

債券保有期間中に価格が大きく下落しても、満期まで保有していれば満期には必ず額面で償還されると言う人もいますが、必ずしもそうとは限りません。価格が大きく下落する時にはデフォルトの懸念が高まっていて、買い手はデフォルト時の弁済率・回収率を予想して買付価格を決めているケースが多いのです。そもそも今80の価格で買えるものが1年後必ず100で償還されるなら25%の確定利回りとなり、そんなことが現実的に起こるなら世界中の投資家が飛びつくでしょう。

 

バンクローンの場合は大きな信用リスクと流動性リスクをとることになります。バンクローンは変動金利が一般的なので、金利リスクは限定的で、金利上昇局面では優位性があるとも言われます。ただし、多くのバンクローンは金利が特定の基準を一定期間上回った後でないと、金利が変動しないようになっていて、必ずしも世の中の金利にぴったりと連動するわけではありません。

 

また、もともと非常に信用力の低い借り手、例えばハイイールド債の発行すら困難になっていたり、担保を差し出さないとお金を借りられないような発行体に貸し付けているローンですので、ひとたびクレジット環境が悪化すると、その価値は大きく変化する可能性があります。当然ながらその場合には調達環境が悪化して、最大のリスクであるデフォルトリスクも高まります。すると信用リスクと並んで大きな流動性リスクが顕在化し、大きく価格を下げないと買い手がつかなかったり、それでも買い手がつかなくなったりするケースがあります。

 

そして、劣後債や優先証券などのハイブリット証券にはこれまでにご説明してきたリスクに加えて、破たん時の弁済順位が劣後する株式などのエクイティ投資に近いリスクやコベナンツリスクなども存在します。前者は非常に大きなリスクであり、株式などのエクイティ投資はこの大きなリスクと引き換えに大きなリターンが期待できますが、ハイブリッド証券はそうした大きなリスクがあるにもかかわらず、リターンは限定的でリスクとリターンのバランスを見極めるのが非常に難しい投資と言えます。

 

また後者は発行時の条件や付されているコベナンツや設定されているトリガーイベントによって、その性格が大きく異なってきます。コベナンツとは社債やローンの債務契約を結ぶ際に契約内容に記載される特約条項です。「情報開示義務」「財務制限条項」「担保制限条項」などがあります。

 

条件次第、環境次第で、例えば、格下げなどのトリガーイベントによってコベナンツに抵触し、予定していた利払いが延期される、見込んでいたコール(期限前償還)が行われない、償還日が延期される、大幅に価格下落している普通株式に転換される、全額償却処理(返金なし)といったことがあります。こうした複雑なリスクに見合ったリターンを期待できるのか、その見極めも非常に困難です。

 

またバンクローン同様にハイブリット証券も市場はあまり大きくないため流動性が低く、転売出来なかったり、売却できても大きく価格が値下がりしてしまう場合があります。

リスクの種類と大きさの把握、併せて利回りのバランス

このようにクレジット投資には通常の株式や債券投資にはないような様々なリスクが存在します。信用リスク単体のものは少なく、複合的なリスクであり、独特のリスクが多いので、どういう種類のリスクで、どのくらいの大きさのリスクなのか、リスクの把握がとても重要です。その上で、得られるリターンは十分なのか、利回りは十分なのか把握することが大切になります。

 

 

データは過去の実績であり、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『実践的基礎知識クレジット編(4)<クレジット投資のリスク>』を参照)。

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ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

著者紹介

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