バンクローン、劣後債、優先証券について
クレジット投資には前回ご説明した社債以外にも様々な投資対象があります。バンクローン、劣後債、優先証券等の証券は、相対的に利回りが高いという魅力があり、日本の投資信託市場でも近年よく活用されるようになってきていますが、それぞれどのような仕組みなのか、どのようなリスク(信用リスク、流動性リスク、期限前償還、コベナンツリスクなど)があるのか、などをよく理解した上で投資することが重要です。
バンクローンの特徴
バンクローンは市場では通常レバレッジドローンと呼ばれるもので、銀行等の金融機関が主に投資適格未満(BB格相当以下)の事業会社等に対して貸付けたローン(貸付債権)を転売したもののことです。主に投資適格未満の相対的に信用力が低い企業に対する貸付債権であるため、投資適格債券(BBB格相当以上)等と比較して信用力が低い分、相対的に利回りが高くなっています。
同一発行体について比較した場合、バンクローンは一般的に担保が付与されていて、無担保社債等に比べて債務の弁済順位が高いのが特徴です。バンクローンの金利は主に変動金利となっていて、通常、基準となる短期の市場金利(LIBOR等)に一定の金利が上乗せされ、30日から90日など一定期間ごとに見直しが行われます。
バンクローンの注意点
バンクローンには通常担保がついているため、仮にローンの借り手企業が倒産しても無担保社債等より多くの投資資金を回収できる可能性があります。しかし、これはあくまでも同一発行体での比較であり、発行体の異なる無担保社債と有担保バンクローンでの比較に当てはまるものではありません。
つまり、ハイイールド債のポートフォリオとバンクローンのポートフォリオで「バンクローンのほうが安全性が高い」というような比較は出来ません。
バンクローンには、一般的に債務が一定水準を超えないよう借り手に義務付ける財務制約条項(コベナンツ)等が付与されます。しかし、バンクローンの中にはこうした財務制約条項が無いものや緩いものなど、借り手優位なものが増えているため注意が必要です。
また、コベナンツ・ライト・ローンと呼ばれる財務制約条項(コベナンツ)が緩く、貸し手のリスクの高いローンがあることに注意が必要です。
また、バンクローンは変動金利のため、金利上昇局面では固定利付債より優位と思われがちですが、多くのバンクローンは金利が特定の基準を一定期間上回った後でないと、変動金利が“変動”しません。逆に、金利低下局面では、借り手は新たに低い利率のローンを借りることで、既存のローンを額面で返済する(期限前償還)ことが出来るため、投資家としては投資期間における高い利回りを確保することが出来なくなる可能性があります。金利変動リスクが限定的であるとはいえ、次に説明する信用リスクや流動性リスク、前述のコベナンツリスクを大きくとることになることもしっかり認識しておく必要があります。
多くのバンクローンには担保がついているとはいえ、主に無担保での借入れが困難な投資適格未満(BB格相当以下)の事業会社等へのローンですので、債務者である事業会社等の経営状況が悪化するなどの信用リスクが高まった場合、市場動向とは別に価格が下落する可能性が高く、注意しておく必要があります。また、市場全体に信用リスクが高まった場合にも、価格が下落するなど、信用リスクの動向にも影響されます。
加えて、バンクローンの市場参加者は機関投資家などに限られているため、売りたいときに必ず売れるとは限らず、相対的に流動性が低いことにも注意が必要です。相対的に流動性が低いために、相対的に価格変動も大きくなる傾向にあるため、市場の下落時に思いのほか大きく値下がる可能性が高い点にも注意が必要です。リーマンショック時には、こうしたことから約27%下落しました。
資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部
劣後債の特徴
劣後債とは、通常の債券と比べて債務の弁済順位が低くリスクが大きい分、相対的に高い金利を支払うことを約束した債券です。
破産や会社更生手続きの開始など劣後特約で定められた「劣後事由」が発生すると、一般無担保社債などの一般債務の支払いが劣後債よりも優先されます。企業が発行する劣後債は、その企業の清算時に、残余財産の弁済(支払い)順位が優先される一般無担保社債と弁済順位が最も低い株式との中間的性格を持っています。金融機関の発行する劣後債については、一定の制限の下、自己資本比率規制上において資本として計上することができることから、金融機関の資本増強策として利用されることがあります。
こうしたことから、劣後債は得られるリターンを「利回り」で表示できるという特性を持つものの、裏を返せばリターンは株式と違って限定的であり、一方で株式などの資本性証券に近いリスクを負うことに注意が必要です。資産より債務が多い「債務超過」状態で発行体企業が破綻すると、債務を弁済した後の残余財産を受け取る権利を持つ株式の価値は大きく下がり、多くの場合、ゼロに近づきます。同様に、劣後債も大幅な債務超過状態での破綻が懸念される場合など、弁済率が低くなると考えられる場合、その価値が大きく下落する傾向があります。
劣後債の注意点
劣後債には繰上償還条項が付されている場合が多く、満期償還前に償還されるケースも多く見られます。つまり、満期まで保有できないことも想定しておく必要もありますし、また、繰上償還されないケースもありますので、投資期間を特定することが難しくなります。金利低下局面で繰上償還されると、価格上昇を享受できないことがあります。
また、破綻や会社更生手続き開始などのデフォルト時には債務の支払順位が一般債務よりも低くなっているため、額面に対し相対的に低い回収率となるリスク(信用リスク)が存在します。したがって、発行体の経営状況などにも注意を払う必要があります。市場の信用リスクの動向にも注意する必要があるのはバンクローン同様です。
また、劣後債は売りたいときに必ず売れるとは限らず、流動性の低さにも注意が必要です。相対的に流動性が低いために、相対的に価格変動も大きくなる傾向にあるため、市場の下落時に思いのほか大きく値下がりする可能性が高い点にも注意が必要です。
優先証券の特徴
劣後債よりも弁済順位が劣り、普通株式よりも“優先”される証券を優先証券と言います。優先証券は配当の支払や破綻時の残余財産の弁済順位において普通株式よりも優先し、債券よりも劣後します。一方で優先証券は配当・利息や弁済順位において普通株式に優先します。
優先証券の注意点
優先証券は債務の弁済順位が劣後債にも劣るため、破綻や会社更生手続きなどのデフォルト時には、額面に対し劣後債よりも低い回収率となるリスクが存在します。
このため破綻が懸念されたり、財務内容や業績が悪化すると劣後債よりも大きく値下がりする傾向があります。また、大幅に価格下落した普通株式に転換される場合もあります。
また、劣後債同様に、繰上償還条項が付されている場合が多く、満期償還前に償還されるケースも多く見られます。満期まで保有できないことも想定しておく必要もありますし、また、繰上償還されないケースもありますので、投資期間を特定することが難しくなります。金利低下局面で繰上償還されると、価格上昇を享受できないことがあります。
優先証券には、利息・配当の支払繰延条項がついているものがあります。発行体の業績の著しい悪化などで、利息・配当の支払が繰延べられる可能性もあります。
利息・配当の繰延べには、累積型と非累積型の二種類があります。累積型であれば、文字通り支払われなかった利息・配当が繰延べられ累積していきますが、非累積型ですと利息・配当は繰延べられるのではなく、支払が排除される、つまり支払われないことになります。この点には注意が必要です。
加えて、バンクローン、劣後債と同様に流動性の低さにも注意が必要で、売りたいときに必ず売れるとは限りません。相対的に流動性が低いために、相対的に価格変動も大きくなる傾向にあるため、市場の下落時に思いのほか大きく値下がる可能性も高い点にも注意が必要です。こうしたことから、リーマンショック時にはトータルリターン指数で約37%下落しました。
信用リスクについてもバンクローン、劣後債と同様に注意すべき点の一つにあげられます。バンクローン、劣後債、優先証券等の証券は、相対的に利回りが高いという魅力がある反面、様々な注意を要することをよく理解した上で投資することが重要です。
データは過去の実績であり、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『実践的基礎知識クレジット編(3)<バンクローン、劣後債、優先証券について>』を参照)。
カメハメハ倶楽部セミナー・イベント
【11/19開催】相続税申告後、
約1割の人が「税務調査」を経験?!
調査の実態と“申告漏れ”を
指摘されないためのポイント
【11/19開催】スモールビジネスの
オーナー経営者・リモートワーカー・
フリーランス向け「海外移住+海外法人」の
活用でできる「最強の節税術」
【11/23開催】ABBA案件の
成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト
「音楽著作権」へのパッション投資とは
【11/24開催】事業譲渡「失敗」の法則
―M&A仲介会社に任せてはいけない理由
【11/28開催】地主の方必見!
相続税の「払い過ぎ」を
回避する不動産の評価術