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連載PICTET・投資初心者のための実践的基礎講座【第43回】

実践的基礎知識 クレジット編(2)<投資適格社債、ハイイールド社債、ディストレスト証券投資について>

実践的基礎知識 クレジット編(2)<投資適格社債、ハイイールド社債、ディストレスト証券投資について>

ピクテ投信投資顧問株式会社が、実践的な投資の基礎知識を初心者にもわかりやすく解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するコラムを転載したものです。

投資適格社債、ハイイールド社債、ディストレスト証券投資について

社債投資において一般的にBBB格相当以上を投資適格社債、BB格相当以下をハイイールド社債と言います。投資適格社債はハイイールド社債に比べ利回りは低い傾向にあるものの、相対的に信用リスクや流動性リスクが小さいといった特徴があります。一方、ハイイールド社債は投資適格社債よりも利回りは高い傾向にありますが、信用リスクや流動性リスクが大きいという特徴があります。ディストレスト証券投資とは、破綻した企業の債券や株式に投資を行うことを指します。

社債の種類 ~投資適格社債とハイイールド社債~

社債の種類は大きく分けて、投資適格社債とハイイールド社債に分けることができます。一般的に格付がBBB格相当以上の債券を投資適格社債、BB格相当以下の債券をハイイールド社債と言います(図表1)。格付は信用力を表し、格付が高く信用力の高い債券は、国債の利回りに対する上乗せ金利が少なく、利回りは低めです。一方、格付が低く信用力の低い債券は、上乗せ金利が多く、利回りも高くなります。では、それぞれの特徴やリスクについて考えていきましょう。

 

[図表1]格付による社債の種類 出所:ムーディーズ、S&Pのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]格付による社債の種類
出所:ムーディーズ、S&Pのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

投資適格社債

投資適格社債の特徴の一つ目は、ハイイールド社債に比べて利回りは低いものの、相対的に信用リスクや流動性リスクが小さいという点です。投資適格社債は、ハイイールド社債と比べて信用力が高く、年金基金など安定的な運用を行う投資家は、投資適格社債を中心に、あるいは投資適格社債に限定して投資をする傾向が見られます。

 

 

二つ目の特徴として、市場が比較的大きく、流動性が高いという点があげられます(図表2)。世界の投資適格社債の市場規模は、2016年5月末時点で1,000兆円以上あります。流動性が高い市場のメリットは、ある程度まとまった金額の売買注文が出ても市場が吸収してくれるということです。これも投資適格社債の価格の安定性の一因となっています。一方、流動性の低い資産は、まとまった金額の売りや買いが出てしまうと市場が吸収しきれず、価格が大きく変動してしまう可能性があります。

 

[図表2]社債の市場規模  2016年5月末時点、単位:兆円  注)HY:ハイイールド  新興国HY社債:The BofA Merrill Lynch High Yield US Emerging  Markets Corporate Plus Index  ユーロHY社債:The BofA Merrill Lynch Euro High Yield Index  米国HY社債:The BofA Merrill Lynch US High Yield Index  投資適格社債:The BofA Merrill Lynch Global Corporate Index  世界社債:The BofA Merrill Lynch Global Corporate & High Yield Index  出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]社債の市場規模
2016年5月末時点、単位:兆円
注)HY:ハイイールド
新興国HY社債:The BofA Merrill Lynch High Yield US Emerging
Markets Corporate Plus Index
ユーロHY社債:The BofA Merrill Lynch Euro High Yield Index
米国HY社債:The BofA Merrill Lynch US High Yield Index
投資適格社債:The BofA Merrill Lynch Global Corporate Index
世界社債:The BofA Merrill Lynch Global Corporate & High Yield Index
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

投資適格社債はある程度、信用力の高い債券のため信用リスクは限定的ですが、金利リスクはあります。ベース金利の上昇により利回りが上昇した場合には、当然価格が下落する可能性があります。

 

現在、先進国主要通貨のベース金利は歴史的な低水準にあります(図表3、4)。したがって、今後ベース金利が上昇することで、投資適格社債の利回りが上昇し価格が下落してしまう可能性には注意が必要です。

 

[図表3]米国10年国債利回りと名目GDP成長率の推移 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表3]米国10年国債利回りと名目GDP成長率の推移
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

[図表4]投資適格社債の利回りの推移 期間:1996年12月~2015年9月 投資適格社債の利回り:The BofA Merrill Lynch Global Corporate Index 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表4]投資適格社債の利回りの推移
期間:1996年12月~2015年9月
投資適格社債の利回り:The BofA Merrill Lynch Global Corporate Index
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

 

では次にハイイールド社債の特徴について考えていきましょう。

ハイイールド社債

ハイイールド社債の一つ目の特徴は、やはり利回りの高さです。ただし、投資適格社債と比べて利回りは高いものの、相対的に信用リスクや流動性リスクが大きい傾向があります。債券でありながらハイリスク・ハイリターンの投資先と言えます。リターン面では利回りが高いだけでなく、発行体企業の財務状況や業績、信用力や信用評価などが改善することで債券価格の上昇も期待できます。もちろん逆のケースで価格が下落することもあります。

 

二つ目の特徴は、信用リスクです。ベース金利が上昇することで、債券利回りが上昇し、債券価格が下落してしまうリスクは投資適格社債と同様にありますが、やはりハイイールド社債の特徴として認識しておくべきは信用リスクの大きさです。信用リスクは、発行体企業の財務状況の悪化等で元利金の支払が遅延したり、行われなかったり、額面元本を下回る額で償還されたりするリスクのことを言います。また、信用力の悪化や投資家心理の変化などにより、上乗せ金利が拡大し、債券価格が下落してしまう可能性もあります。

 

三つ目の特徴は流動性リスクの大きさです。ハイイールド社債の市場規模は、先ほどご紹介した適格投資社債に比べて非常に小さく、世界最大の米国ハイイールド社債市場ですら、時価総額150兆円程度です。ハイイールド社債の流動性リスクは投資適格社債よりも大きく、近年、実際に流動性リスクが顕在化した出来事がありました。それは、リーマン・ショックです。リーマン・ショック時、投資適格社債の価格指数は高値から安値まで12%程度の下落だったのに対し、ハイイールド債の価格指数は高値から安値まで40%以上下落しました。

 

また低金利が長く続いてしまった弊害も指摘されています。リーマン・ショック後の金融市場の混乱を鎮めるため、各国中央銀行は大規模な金融緩和を実施し、金利は大きく低下しました。金融市場の混乱が落ち着き始めると、低利回りの先進国国債や投資適格社債から「信用リスクをとってもいいからもっと高い利回りがほしい」という資金が信用力の低いハイイールド社債などに流れ込みました。

 

これらの資金は次第に「リスク感覚の鈍った、利回りばかりを追い求める資金」となり、ハイイールド社債などの価格を押し上げ、債券利回りはリーマン・ショック前よりも低下しました(図表5)。

 

[図表5]ハイイールド社債の価格と利回りの推移 期間:1996年~2015年 HY:ハイイールド HY社債:The BofA Merrill Lynch US High Yield Index 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表5]ハイイールド社債の価格と利回りの推移
期間:1996年~2015年
HY:ハイイールド
HY社債:The BofA Merrill Lynch US High Yield Index
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

また、リスク感覚の鈍った利回りばかりを求める資金は、ハイイールド社債を発行する企業側にとって有利な状況を生み出しました。通常の金利水準であれば債券を発行することができないような財務状況の悪い企業でさえも発行ができたり、担保の取り扱いが緩い条件での発行が横行するなど、質の悪いハイイールド社債も出てくるようになりました。こうした中でFRBのイエレン議長は2014年6月18日のFOMC後の会見で、過熱するハイイールド社債市場に警鐘を鳴らしています。

 

さらに欧米系大手投資銀行(証券会社)がこれまでのようにハイイールド社債の注文を積極的に取り次がなくなる可能性があり、今後、流動性リスクに拍車がかかることも予想されます。

 

債券の売買は、株式のように取引所に注文を出すのではなく、投資銀行と相対で行います。投資銀行はディーラーとして、債券の売り手と買い手に値段を提供しています。例えば、ハイイールド社債Aを売却したい投資家に対し90の売値を提供し、逆にハイイールド社債Aの買い手に対しては100の値段を提示します。差額分10がディーラーである投資銀行の儲けです。リスクの高い債券ほどこの差額が大きく、ディーラーである投資銀行に大きな利益をもたらしましたので、投資銀行はこれらの業務を拡大していました。

 

しかし、リーマン・ショックでその流れが一変します。リスクの高い債券を多く保有していた欧米系大手投資銀行は多額の損失を計上し、投資銀行はリスクの高い事業からの撤退や縮小を始めました。その中にハイイールド社債などリスクの高い債券の積極的な取次業務の縮小も含まれました。投資銀行がかつてのようにハイイールド社債の取引に積極的に関与しなくなったことで、ハイイールド社債の流動性が低下することが懸念されています。

 

そしてハイイールド社債の取次業務縮小に伴い、大手投資銀行がディーラーとして取引に必要な在庫も減らしています。これら在庫の一部は、投資信託などを通して個人の投資家へ渡っています。今後、個人投資家が投資信託の解約などを通じて、ハイイールド社債を売却した場合、これまでのように投資銀行が引き受けることは難しくなっており、買い手不在によって価格が下落する可能性があることに注意が必要です。

ディストレスト証券投資

ディストレスト証券投資とはオルタナティブ投資(代替投資)の一つです。主に、ヘッジファンドやプライベートエクイティファンドなどによって、破綻した企業の株式や債券に投資をすることを言います。破綻した企業の債券や株式を購入し主要な債権者となることで、企業を清算した後、優先的に弁済を受けます。したがって、ディストレスト証券投資を行う上で重要なことは、どれだけ債券や株式を安く購入することができるかということと、どのくらいの回収率が見込めるかということです。

 

ディストレスト証券投資の特徴は、株式や債券など伝統的な資産と値動きの相関性が低いという点です。伝統的な資産のみで構築したポートフォリオに組み入れることで全体の値動きを抑え、より高い分散効果が期待できます。

 

一方、リスクは流動性が非常に低い点です。破綻企業の株式や債券といった一般的ではない資産に投資しており、買い手を見つけるのが非常に難しいためです。

 

このように投資適格社債、ハイイールド社債、ディストレスト証券投資は、まったく異なる投資対象と言えるほど性格が大きく異なります。そして、それぞれが抱えているリスクも異なります。これらに投資する際は、これから取るリスクに対して期待できるリターンが見合っているかどうかを自分自身で判断することが重要です。

 

 

データは過去の実績であり、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『実践的基礎知識 クレジット編(2)<投資適格社債、ハイイールド社債、ディストレスト証券投資について>』を参照)。

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ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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