新興国市場の先行きは良好

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報を転載したものです。

 

ポイント

新興国経済は、既に先進国経済を凌ぐ成長を遂げつつあり、景気回復の恩恵を最も大きく受けることが予想されます。

 

昨年2018年の市場の動揺は忘れるべきです。新興国債券市場の先行きは極めて良好で、今年2019年を通じて昨年の下げの反転が見込まれます。

 

このような強気の見方の背景にあるのは、以下の二つの要因です。一つは、世界経済が減速する中にありながら、新興国経済は先進国経済よりも順調に推移していること、もう一つは、世界各国が景気浮揚策を講じていることです。新興国資産には、いずれの経済環境においても、先進国資産を上回るパフォーマンスを上げる傾向が見られたことが、過去のデータから確認されています。

為替動向

世界経済の先行きを占う景気先行指数は、2017年のピークから低下基調を辿っています。新興国経済の先行きが悪化してきたことは確かですが、世界経済の鈍化は、ほぼ先進国経済に起因すると考えます。

 

 

米連邦準備制度理事会(FRB)が昨年12月まで利上げを続けたことに加え、トランプ米大統領の好戦的な通商政策、好調を維持してきた世界の新車需要の減速、更にはイタリアや英国の政局の混乱等の要因が先進国経済の減速をもたらしているからです。

 

これに対し新興国経済の減速は、その殆どがトルコとアルゼンチンの、国内要因に起因する経済の不振を原因とするものです。

 

その結果、新興国の先進国に対する経済成長格差は、昨年を通じて拡大基調となり、2013年以来、最も広がった水準に達しています(図表をご参照下さい)。

 

[図表]成長格差の拡大 青線:新興国と先進国の景気先行指数の格差(前年同月比の変化率(%)、右軸)、赤線:新興国通貨の対ドル・レートの推移(2008年1月1日を100として指数化、左軸)、期間:2011年1月1日~2019年1月1日 新興国通貨:新興国31ヵ国の通貨バスケット 出所:ピクテ・グループ
[図表]成長格差の拡大
青線:新興国と先進国の景気先行指数の格差(前年同月比の変化率(%)、右軸)
赤線:新興国通貨の対ドル・レートの推移(2008年1月1日を100として指数化、左軸)
期間:2011年1月1日~2019年1月1日
新興国通貨:新興国31ヵ国の通貨バスケット
出所:ピクテ・グループ

 

このことは極めて重要です。世界経済の減速が一様ではなく、かつ、新興国経済が先進国経済を上回って成長する状況で、新興国通貨がドルに対し年率平均1.7%上昇したことをピクテの分析は示唆しています。

 

このような傾向は、中国、インド、韓国、ロシア、ブラジル等、主要新興国の通貨で見ると更に鮮明です。当該通貨の対ドルの上昇率は、年率平均4.7%に達し、ラテンアメリカならびに東欧の通貨の上昇率が際立ちます。

 

新興国通貨が、米国の動向から恩恵を受ける可能性も考えられます。

 

FRBは金融引き締め策の転換を決めています。利上げの一時停止に続き、次回の会合については利下げ観測が浮上しており、バランスシートの縮小も前倒しの終了が決まっています。FRBのハト派への転換は、年後半の米国経済の加速を促すと思われますが、差し当たってのところは、強いドル高局面の終焉を示唆しているように思われます。

 

このような状況下、新興国通貨は過去20年強で最も割安な水準に近づいています。上記の要因によって、新興国通貨の対米ドルに対する上昇、更には現地通貨建て新興国債券の上昇が促されると思われます。当該債券のリターンの多くは、通貨の変動によるものだからです。

市場の反発に備える

経済の減速に対応して金融政策を転換したのはFRBに限りません。欧州中央銀行(ECB)は、ユーロ圏経済のてこ入れを図り、貸出条件付き長期性資金供給オペレーションの再開を決めています。

 

 

とはいえ、最も積極的な景気対策を打ち出しているのは、今回についても中国です。中国人民銀行は、融資の拡大を図って、預金準備率の引き下げを昨年中に5回行っており、今後数ヵ月のうちにも追加の引き下げがあると見られています。この間、中国政府は、昨年、規模を縮小していたインフラ投資の積み増しを進めています。

ファンダメンタルズ面での投資妙味

国内経済を取り巻く環境の改善は、新興国債券市場の支援要因になると思われます。慎重なマクロ経済政策とりわけ新興国中央銀行のタカ派寄りの金融政策が示唆しているのは、新興国経済が過去の景気減速局面ほど大きな変動に晒される可能性は低いということです。

 

世界貿易を巡る緊張は、一時懸念されたほどの影響を及ぼすことはないように思われます。新興国は、富を増すに連れて需給の緩みを縮小し、輸出依存度を低下させています。また、中国等の主要国は、経済の発展に伴い、かつては複数の国にまたがっていたサプライチェーンの「国内化」を進め、高付加価値製品の製造を拡大しています。

 

“最も積極的な景気対策を打ち出しているのは、今回についても、中国です”

 

新興国市場が、貿易を巡る緊張の緩和に伴って回復局面を展開する中、投資の好機が提供されています。

 

中でも、ブラジルの投資妙味は極めて高いと考えます。新政権の構造改革を受け、経済の良好なファンダメンタルズが再び注目を集めています。ブラジルに限らずラテンアメリカは、総じて魅力的だと考えます。

 

一方、トルコやアルゼンチはもとより、財政収支や経常収支の不均衡が際立つ新興国の状況は、これまで通り脆弱で、経済が再び悪化に転じる可能性も否めません。

 

新興国経済は、昨年の混乱の後、先進国に勝る経済の強さ(経済の相対的な強さ)と、年後半に予想される広範な景気回復双方の恩恵を受けるものと見られます。

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『新興国市場の先行きは良好』を参照)。

 

 

(2019年4月24日)

 

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1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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