投資信託の分配金
投資信託の分配金は、投資信託の純資産から支払われます。つまり、基準価額の「一部を外に出す」のと同じです。分配金が支払われると、「外に出した分」=分配金分だけ基準価額は下がります。分配対象収益(分配可能原資)は、原則として値上がり時には増えますが、値下がりしても減りません。そのため、分配対象収益は基準価額よりも多くなる場合がありますが、もちろん基準価額以上に分配することは出来ません。
分配金はどこから支払われるか
投資信託の分配金は、預貯金の利息や債券の利金など元本とは別に支払われるものとは異なり、投資信託の純資産から支払われます。つまり基準価額の「一部を外に出す」のと同じです(図表1参照)。
分配金が支払われると、「外に出した分」=分配金の分だけ、基準価額は下がります。例えば、分配金を支払う前の基準価額が10,500円の投資信託が、500円の分配金を支払うと、その分配金の額だけ基準価額は下がり、分配金支払後の基準価額は10,000円になります(図表2参照)。
分配金は投資信託の一部を部分的に換金するのと同じ効果を持ちます。
分配金が多く支払われるファンドのほうが儲かると誤解されている方もまだ多いようですが、分配金が多い(≒たくさん換金する)ほうが分配金が少ない(≒少なく換金する)よりも儲かることにはならないと考えると理解しやすいと思います。
分配対象収益(分配原資)とは
ところで、投資信託の分配対象収益(分配原資)は投資信託の会計上、①配当等収益(経費控除後)、②有価証券売買益・評価益(経費控除後)、③分配準備積立金、④収益調整金の4つの項目から構成されています。
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このうち、①と②は当期に発生した収益、③と④は設定来の留保収益等から計上されます。
また、分配対象収益(分配原資)は、単なる会計上の区分に過ぎません。別枠で現金が確保されているものではなく、前述のように分配金は純資産の中から支払われ、支払った分純資産(基準価額)が減少します。
分配対象収益(分配原資)と基準価額
分配対象収益(分配原資)は、原則として値上がり時には増えますが、値下がりしても減りません。そのため、分配対象収益(分配原資)は基準価額よりも大きくなる場合があります。
図表4を例に見てみましょう。当初10,000円の基準価額で設定された投資信託の例です。
第1期決算日には基準価額が20%上昇し、分配金支払前の基準価額は12,000円に上昇しました。このときの期間損益は2,000円の評価益となり、この2,000円分が分配対象収益として計上されます。
第2期も基準価額は上昇し、15,000円になり、第1期からの期間損益は3,000円の評価益となり、この3,000円分が分配対象収益に加算計上され、分配対象収益は5,000円となります。
第3期に基準価額が大幅に下落し、9,000円になりました。このときの期間損益は6,000円の評価損になりますが、この6,000円分の損失は分配対象収益を減額せず、欠損金として繰越されます。その結果、分配対象収益は第2期同様に5,000円のままになります。つまり、値下がりしたのに分配対象収益は減りません。
次の第4期にも基準価額は大幅に下落し、4,000円になりました。期間損益は5,000円の損失ですので、第3期同様に欠損金に加算され、繰越欠損金は11,000円になります。分配対象収益は第2、3期同様に5,000円のままです。この第4期には分配対象収益が5,000円と基準価額の4,000円よりも多くなっています。
また、第5期に基準価額が大幅に回復し、9,000円に上昇し、期間損益として5,000円の評価益が発生しても、繰越欠損金の補填に充当されます。この欠損金が解消されなければ、分配対象収益は増加しません。
このように、分配対象収益が基準価額を上回る場合もあることには注意が必要です。分配対象収益が基準価額より多いといっても、もちろん基準価額以上に分配することはできません。
データは過去の実績であり、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『実践的基礎知識 投資信託編(3)<投資信託の分配金>』を参照)。
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