投資家に多くの夢を与える「ベンチャー投資」。しかし、その投資対象は甘く見ても玉石混交であり、情報の見極めにはかなりの眼力が必要です。ここでは、エンジェル投資家を目指す人が身につけるべき基礎知識を伝授するととともに、これからますます活性化するであろうベンチャー投資の醍醐味をお伝えしていきます。

夢もリスクもある「ベンチャー投資」だが…

ベンチャー投資――。様々な金融商品投資を行う人にとって、この言葉には大きな期待や夢、ときには甘美な憧憬を抱かせるものではないでしょうか。しかしその一方で、未上場株詐欺といった犯罪行為も存在し、不安やリスクもまた、同様に無視できない大きさであるといえます。

 

そもそもベンチャー企業とは何か。エンジェル投資家とは何か。そして、エンジェル投資家になると、一体どの程度儲かるものなのか。基礎知識のない人が、インターネットから正確で有益な情報だけをすくい取るのは、並大抵のことではありません。

 

本連載では、ますますその数を増やしているベンチャー企業と、それにともなって増加する投資資金の流れを追いながら、これからエンジェル投資家になる人たちに向け、「ベンチャー投資」について、その実態や今後の方向性を解説していきます。

エンジェル投資家が求めるのは「金銭」だけではない!?

筆者はこれまで、監査法人にて上場準備企業の監査、その後に公認会計士専門の教育と人材紹介のビジネスから多くの上場準備企業と構築したネットワーク、そして現在はベンチャー企業の役員やアドバイザリーの業を通じて、IPOやM&Aの実態というものに触れてきました。IPOゴールだと叫ばれる企業や経営者を目の当たりにしながらも、IPOで必ずしも経営者が資金的に裕福になれるとは限らない現実や、簡単には達成できないはずのIPOを実現した企業群に複数投資している投資家が存在する事実など、まだまだ「ムラ社会」である界隈の奥底は深く、見えない部分も多いのです。

 

その一方で、「エンジェル投資家」の多くはビジネスが大好きであり、投資先の起業家を真剣に応援しているという点は事実であると認識しています。

 

一般にイメージしやすいエンジェル投資のEXIT(投資回収)機会であるIPO、これを実現した企業群に投資しているエンジェル投資家は、現状ではそのほとんどがEXIT経験のある起業家かもしくはそのボードメンバー、そうでなければ投資を生業としてきた投資家ばかりです。

 

後者は利益追求としての投資スタンスを崩さない傾向はありますが、前者はリスクを取って起業をしてきたメンバーであるためか、投資先の会社に対して資金だけでなく、自身の知識や経験に基づいた経営アドバイスや人脈の紹介など、多岐にわたりサポートを行っています。

 

 

そのようなエンジェル投資家の話を見聞きして感じたのは、エンジェル投資を行うことで、彼らはIPOやM&Aの達成から得られる金銭的な期待以外のものをベンチャー企業から受け取っているのだろうということです。

ベンチャー企業が「エンジェル投資」を受け入れる理由

そもそもエンジェル投資を受け入れるベンチャー企業とは、どういった企業なのでしょうか。「ベンチャー企業」という言葉には様々な定義がありますが、筆者は「ビジネスに高い成長可能性・革新性・新規性などを備えている企業」ととらえています。

 

そのベンチャー企業がエンジェル投資を受け入れる理由として、消極的な側面・積極的な側面それぞれについて、下記があげられると考えらえます。

 

●消極的な側面

 

設立して間もない若いベンチャー企業はしばしば、融資・出資ともに資金調達が困難です。実績が十分でないばかりか、アイディアしか持ち合わせていないことも少なくありません。そのため、銀行融資は限られ、ベンチャーキャピタル等からの調達もバリュエーションが低く設定されてしまい、その後の事業展開が大きく制限されます。

 

このような状況で、形式的な審査に縛られることなく、経営者自身の想いで調達できる可能性があるのが「エンジェル投資」という選択です。

 

●積極的な側面

 

活動原資としての資金を得られるだけでなく、エンジェル投資家からヒト・モノ・情報といった様々な恩恵を受けられるという点から、エンジェル投資を積極的に受ける起業家も少なくありません。

 

ベンチャー界隈が「ムラ社会」と呼ばれる理由は、先輩や仲間である起業家を「エンジェル」として迎え入れ、その経験談や人脈をレバレッジにして成長を目論むことで、閉ざされた世界のなかでエンジェル投資が完結することがあります。とはいえ、このようなエンジェル投資を受け入れたすべての企業がIPOできるわけではありませんし、またどの「ムラ」にも所属していないベンチャー企業も数多く存在しています。

応援する企業の成長を「見守り、寄り添う」楽しみ

ベンチャー企業を経営する起業家は、熱い想いと大きなビジョンを持っています。一方で、経営資源としての必要なリソースを十分に持ち合わせていないことも一般的です。

 

このような起業家の夢の実現に向けて、資金だけでなく様々な形で応援することが「エンジェル投資」であると筆者は考えます。この投資は財産形成や資産運用という形ではなく、ある意味「タニマチ」と考えたほうがわかりやすいかもしれません。自分が応援する企業や起業家が成長し、想いを実現していくプロセスに寄り添って、それを楽しむ投資とでも言いましょうか。

 

では、実際にエンジェル投資を行うには、莫大な資産や起業経験、EXIT経験がないとできないのでしょうか。それらについては、次回の記事で詳しく説明していきたいと思います。

 

 

朝倉 厳太郎

公認会計士

合同会社gtra and company 代表執行役

KidsDiary株式会社 取締役CFO

株式会社M&Aクラウド 監査役

 

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