実践的基礎知識 分散投資編(5)<現実的な調整>

ピクテ投信投資顧問株式会社
実践的基礎知識 分散投資編(5)<現実的な調整>

ピクテ投信投資顧問株式会社が、実践的な投資の基礎知識を初心者にもわかりやすく解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するコラムを転載したものです。

現実的な調整

過去の値動きの相関係数などを使って資産の特徴をとらえ、その組み合わせを考える場合、忘れてはならないのは、過去のデータが示すのはあくまで「過去」の世界であり、投資は「未来」に向かって行うものだということです。実際の分散投資を考える場合には、過去と現在の違いを考えたり、為替の動向も考慮して(必要に応じて為替ヘッジを利用したりするなど)、現実に即した工夫をすることが重要です。

リスク資産のリターンのデータは「過去」の世界のものであり、投資は「未来」に向かって行うもの

中長期の資産配分を決定するうえでは、各種資産クラスの 期待リターンとリスク環境、相関係数といったデータを検証す る必要があります。その場合、忘れてはならないのは、過去 のデータが示すのはあくまで「過去」の世界であり、投資は 「未来」に向かって行うものだということです。

 

 

過去の相関係数などのデータが必ずしもこれから先も当てはまるとは限らないことを念頭におき、「未来」のことは分からないにしても、少なくとも「過去」と「現在」の違いを確認することはできます。例えば、先進国国債市場は非常に大きな市場規模を誇り、かつてはある程度低いリスクで相応に高いリターンを提供してきてくれた資産でした。ところが、先進国の財政悪化などによる信用リスクの増大、先進国の成長率低下などによる利回りの低下で、先進国国債のリスクと利回りのバランスは20年前とは比べ物にならないほど悪化してきました。リスクは相対的に大きくなってきているにもかかわらず、平均利回りは1980年代後半には8%半ばであったものが年々低くなり、2010年代前半には2%まで低下しています(図表1)。このように債券の高いリターンはあくまでも「過去」の世界のものであり、「未来」において期待しにくいものになっていると言えます。これからの「未来」に向かって組むポートフォリオを考えるうえでは、こうした点を考慮することが非常に重要です。

 

[図表1]外国国債の各期間の平均利回り (月次、期間:1985年~2014年) 外国国債:シティ世界国債指数(除く日本) 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]外国国債の各期間の平均利回り
(月次、期間:1985年~2014年)
外国国債:シティ世界国債指数(除く日本)
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

海外資産の場合、為替の影響も考慮のうえ分散投資することが重要

海外資産に投資する場合、現地通貨ベースと円ベースの違いも注意しなくてはならないポイントです。例えば$10の株式と$90の国債に分散投資し、株式が下落して$8になる一方、国債は$92に値上がりし、分散効果が十分に発揮できたとしましょう。しかし、この間にもし$1が100円から80円に円高ドル安が進めば$100×100円=10,000円が$100×80円=8,000円となり、現地通貨ベースでは分散効果が出ているのに、円ベースで見ると結局マイナスになってしまうということもあります。

 

図表2のグラフはリーマン・ショック前後の米国株式と米国国債の値動きを表したものです。上の米ドルベースでの値動きを見ますと、相関係数は-0.07と分散効果が出ています。一方、下の円ベースでの値動きを見ますと、相関係数は0.74と為替の影響を受け分散の効果が出ていないのが解ります。

 

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[図表2]米国株式と米国国債の動き(ドルベース、円ベース) (月次、期間: 2007年6月~2009年1月) 米国株式:MSCI米国株価指数、米国国債:シティ米国国債指数 出所:ブルームバーグのデータを使用し、ピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米国株式と米国国債の動き(ドルベース、円ベース)
(月次、期間: 2007年6月~2009年1月)
米国株式:MSCI米国株価指数、米国国債:シティ米国国債指数
出所:ブルームバーグのデータを使用し、ピクテ投信投資顧問作成

 

このように、実際の分散投資を考える場合には、過去と現在の違いを考えたり、為替の動向も考慮して(必要に応じて為替ヘッジを利用したりするなど)、現実に即した工夫が必要です。

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データは過去の実績であり、将来の運用成果等を示唆あるいは保証するものではありません。

 

 

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