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連載PICTETマーケット情報【第33回】

グローバル・マーケット・ウォッチ:ポピュリズム(大衆迎合主義)とどう向き合うか

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マーケットレポート

グローバル・マーケット・ウォッチ:ポピュリズム(大衆迎合主義)とどう向き合うか

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報を転載したものです。

 

ポイント

 投資家は、ポピュリスト(人気取り)ならびに規制強化の政策に注意

 

 

投資家と金融政策がうまくいっていた時代は終わろうとしています、今後は、より困難な時代が来ることが想定されます。

 

なぜ、このように感じるのか。それは現在投資家が、どのような局面にいるかについて把握することが重要だからです。2008年のリーマンショック以降、中央銀行の積極的な金融政策によって、グローバルな景気後退を食い止めることができました。しかしながら、この金融政策には,たちの悪い副作用が含まれていました。中央銀行の膨大な量的緩和政策によって、企業利益が急拡大するとともに、資産運用の世界では超富裕層とそれ以外といった大きな格差が生じたのです。

 

これは、米連邦準備制度理事会(FRB)の人気取り政策によるものと思われます。世間で広く受け止められている見方として、FRBの量的緩和政策は、たった1%の人にしか恩恵をもたらしませんでした。このような評価にもかかわらず、量的緩和政策は危機に瀕した米国経済を救い、雇用情勢を好転させたという見方から、今後の景気後退に備えて、政治に他の金融政策を求めることを支持しています。

 

“ほとんどの投資家は、中央銀行の独立性は所与のものであって、永遠に保障されていると考えていますが、そうはならないでしょう。”

 

違う見方の一つは、中央銀行の財政支出です。これは、「現代貨幣理論」(MMT)の中核をなすものです。MMTの理論的な主張とは、自国通貨を発行する政府は、中央銀行が十分な規模の公的支出を行うことによって、常に完全雇用を達成できるというものです。これは、1930年代のニューディール政策のように、公的支出の財源について悩む必要がないといった見方を現代に焼き直したものです。

 

MMTの理論の有効性については、政策面や学術的な面から激しく議論されています。しかしながら、この理論は人気のある見方であり、様々な政党の政治家から支持されています。

 

こういった政策の結末はというと、極端に市場寄りの政策が導入され、1970年代を通じて投資家にとって厳しい局面をもたらしました。

中央銀行の独立性の終焉

当然のことながら、中央銀行はMMTに基く政策に激しく抵抗します。財政赤字による財政政策は、現代の経済学にとって受け入れ難いものです。それにもかかわらず、これまで、こういった財政政策は多くの人の関心を集めてきました。これは、中央銀行の独立性が低いインフレ率によってもたらされたものだからです(図をご参照下さい)。

 

 

実際、中央銀行の独立性はファイナンス理論の中核を成すものの、あたかも新しい見方のように忘れられることがあります。例えば、1997年のイングランド銀行は、財政政策を執行するだけの役割しか果たしていませんでした。

 

 

今なお、ほとんどの投資家は、中央銀行の独立性は、未来永劫保障されていると見ているようですが、そうはならないでしょう。中央銀行の将来は、はるか昔の姿になると見られています。すなわち、政治家の直接的な指図の下、政府の一機関となることです。

 

[図表]インフレ率と中央銀行の独立性:インフレ率の平均、%、期間:1955年から1988年 縦軸:インフレ率、横軸:中央銀行の独立性、高いスコアはより独立性が高いことを示す。 出所:Alesina,A. and Summers,L. "Central Bank Independence and Macroeconomic Performance: Some Comparative Evidence. " Jorunal of Money, Credit and Banking, Vol.25, No2, 1993年5月、P.151-62より作成
[図表]インフレ率と中央銀行の独立性:インフレ率の平均、%、期間:1955年から1988年
縦軸:インフレ率、横軸:中央銀行の独立性、高いスコアはより独立性が高いことを示す。
出所:Alesina,A. and Summers,L. "Central Bank Independence and Macroeconomic Performance: Some Comparative Evidence. " Jorunal of Money, Credit and Banking, Vol.25, No2, 1993年5月、P.151-62より作成

 

投資家は、中央銀行の独立性が失われる例を、既にいくつか見ることができます。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、昨年頻繁にトルコ中央銀行の政策決定に加わり、とうとう中央銀行の総裁を任命することにも成功しました。フィリピンのロドリゴ・ドゥトルテ大統領は最近、投資家の同意を得ることなく、同じ政治的なスタンスを持つ人物を、フィリピン中央銀行の総裁に就けました※1。このような中央銀行の総裁人事は、新興国に留まっているわけではありません。どちらかというと、先進国の方が目立ってきています。

 

※1 https://ft.com/content/cea85b72-3f2c-11e9-b896-fe36ec32aece

 

米国ではドナルド・トランプ大統領が、FRBが過度に金融引締め政策を実施していると、事があるたびに批判してきました。一方、イタリアのポピュリスト政権は、欧州中央銀行(ECB)に対して、債務問題について圧力を掛け、実際、債務の上限を環境によって変動させることを要求しています。

 

確実なことは、自由な財政支出はお金を空からばらまくヘリコプターマネー、もしくはもっと目標を定めた判断基準で、過去10年間実施してきた量的緩和政策よりも、より広い範囲に恩恵が及ぶと思われます。これは、英国の左翼政党である労働党の、「人民のための量的緩和」とも呼べるものです。しかしながら、この場合も新たな副作用を生むことと思われます。

投資家への警告

政府債務による財政政策は、通常の量的緩和では生じない、ある程度のインフレをもたらします。量的緩和は、投資家を安全な国債から、リスクの高い資産へ誘導することによる資産効果に基いています。一方、ビジネスに対するセンチメント(心理)に火をつけて、支出を増やし、最後には企業が雇用を増やすことによって経済が成長していきます。対照的に、財政支出もしくは移転は、もっと直接的です。資金は、直接的に、もっと支出を増やしたい分野に向かいます。この方法は、景気が停滞している時に効果を現します。しかしながら、景気後退局面が終わると、余った資金が、あまりにも少ないモノを追い求めることから、手の付けられないインフレを生じさせることになります。

 

同時に、財政赤字の国が、このような政策をとれば、海外の債権者を危機に陥れます。つまり、通貨は下落し、国債の利回りは激しく上昇し、インフレ率も悪化します。

 

経常収支と財政収支が大きな赤字の国々が、最も悪影響を被ります。そして、堅実な資産と収入の不平等が存在する国においては、人気のある政策を求める、より多くのポピュリストからの反動を受けることになります。

 

そして、インフレ率と賃金の上昇は、企業の利益幅と利益率を縮小させます。もし、インフレ率と賃金が、歴史的に見ても高水準の場合は、企業利益の落ち込みは大きくなります。

 

通常、企業が市場において独占的もしくは寡占的な売り手の場合、利益率を守ることが可能です。しかしながら、大衆に迎合しがちなポピュリスト政権は、企業に対して、いろいろと制約を課してくる傾向にあります。これは、ロビー活動などで利権を獲得しようとする企業を規制することが考えられます。また、このような政府は、法人税の引上げやキャピタルゲイン課税の強化によって、財政赤字を相殺しようとします。特定の業種、例えば金融は、特に影響を受ける傾向があります。対照的に、インフラ関連企業は恩恵を受ける傾向にあります。同様に、財政支出の拡大によって恩恵を被る、ヘルスケアや教育関連も特にメリットがあります。

 

投資家は、最低限、インフレ率に対応する必要があります。不動産や金といった実物資産は、前者が増税されたり、後者は何の利息を生まないものの、インフレ時に保有されると見られます。

 

商品も同様に恩恵を受けますが、グリーン経済、すなわち「持続可能な環境に優しい経済」に関する企業の方が、より長期的に恩恵を受けることが可能です。同時に、テクノロジーやコミュニケーションの分野における規制の強化は、新たな高い成長率の企業を生むことにつながります。

 

政治動向が変わりやすい状況下、投資家が機動的に対応し、例外的といえるぐらいの情報量を持つ必要があると思われます。別の言い方をすると、今後の運用を取り巻く環境は、微妙な調整を要する投資が必要となり、うまく駆け引きを行うことも大事と考えます。

 

※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『グローバル・マーケット・ウォッチ:ポピュリズム(大衆迎合主義)とどう向き合うか』を参照)。

 

 

(2019年3月27日)

 

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1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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