3.企業業績と株式
<現状>
S&P500種指数の19年2月の1株当たり予想利益(EPS)は171.81米ドルでした。前年同月比の伸び率は+6.8%となりました。18年12月が同+18.0%、19年1月が同+9.5%と伸び率の低下が続いています。東証株価指数(TOPIX)の予想EPSは128.43円(同+0.1%)と、前月の同+5.3%から更に伸び率が鈍化しました(いずれも予想はリフィニティブI/B/E/Sベース)。
2月の米国株式市場は、S&P500種指数で前月比+3.0%の上昇となりました。米中関係の改善および米中貿易摩擦の緩和への期待や米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ打ち止め観測の浮上などにより、市場心理が好転したことが背景です。日本株式市場もTOPIXで前月比+2.6%の上昇となりました。
<見通し>
S&P500種指数採用企業のEPSは18年が前年比+23.7%、19年が同+4.0%と19年が前月の同+5.1%から下方修正されました(19年2月28日発表、リフィニティブI/B/E/Sベース)。一方、日本の予想経常利益増益率は18年度(19年3月期決算)が前年度比+5.1%と1月時点の同+7.1%から下方修正となりました。続く19年度(20年3月期決算)は同+7.1%と前月(同+7.5%)よりも若干下方修正となりました(東証1部除く金融、QUICKコンセンサスベース、19年2月28日現在)。米国及び日本の株式市場は、利益の成長率予想は足元では鈍化しているものの、当面、米中貿易交渉の進展などを睨みながらの展開が続く見通しです。
EPSと株価指数の推移(米国)
EPSと株価指数の推移(日本)
4.金融政策
<現状>
FRBは、1月29日、30日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利(FFレート)の誘導レンジを2.25%~2.50%に据え置きました。
欧州中央銀行(ECB)は、1月24日の理事会で政策金利、預金ファシリティ金利(金融機関が手元資金をECBに預け入れる際の金利)を各々0.00%、▲0.40%に据え置きました。
日銀は1月22日、23日に開催した金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決定しました。長期金利の操作目標である10年物国債利回りをゼロ%程度に操作する金融調節を継続し、長期国債を買い増すペースも引き続き年間約80兆円を目処にします。
<見通し>
米国では、FRBが金融引き締めの終了を示唆しました。利上げは打ち止めとなり、バランスシートの縮小も年内に終了すると見られます。
ユーロ圏では、量的緩和が終了した後も、しばらくECBは再投資により国債などの保有残高を維持する見込みです。政策金利は19年12月に預金ファシリティ金利の引き上げ、20年3月には主要リファイナンス金利の引き上げが予想されます。
日本は、経済が緩やかな拡大を続けるものの、物価上昇率が日銀の目標である2%に当面、到達しない見通しのため、金融政策を据え置く見込みです。
各国・地域の政策金利の推移
5.債券
<現状>
米国では、堅調な株式市場などを背景に10年国債利回りが上昇しました。月中は一進一退の動きとなりましたが、米政府が対中関税の引き上げ延期を表明し、米中貿易交渉の合意が近いとの期待が高まったことなどから、月末にかけて上昇しました。月末は2.72%と、前月末比0.09%ポイントの上昇となりました。欧州では、景気に対する懸念を背景にユーロ圏の成長率見通しが引き下げられたことなどを受けて、2月8日にドイツ10年国債利回りが一時0.077%と、2016年10月以来の水準に低下しました。その後、米国が対中関税引き上げの延長を表明したことや、英国の合意なきEU離脱に対する警戒感が和らぎ、ドイツ10年国債利回りは上昇基調となり、月末には0.18%となりました。日本の10年国債利回りは、米長期金利の動向を睨みつつ、マイナス圏で推移しました。米国の社債については、国債との利回り格差が前月末に比べ縮小しました。
<見通し>
世界景気が緩やかながら拡大を続けるという想定のもとでは、欧米の長期金利はやや上昇すると予想されます。ただし、インフレが落ち着いているなか、FRBが景気下振れリスクの増大を理由に、政策金利引き上げに対する姿勢を更に慎重化させたこと、ECBによる利上げ開始の時期が2019年末以降となる見通しであることなどを踏まえると、上昇幅は限定的と考えられます。日本では、景気・物価の勢いが鈍化するとの想定のもと、現行の金融政策の枠組みが維持される可能性が高く、長期金利は低位での安定した推移となる見込みです。
主要国の10年国債利回りの推移
先進国国債の利回り、社債スプレッドの推移
(2019年3月5日)