税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
農地としての保全を目的とした「生産緑地」
◆厳しい行為制限と引き換えに税金の優遇がある
生産緑地とは、市街化区域にある農地のうち、農地として保全することを目的として市区町村の指定を受けたものをいい、主に三大都市圏に分布しています。
生産緑地地区の指定を受けるとその土地での農業経営が義務づけられ、農業経営に関係のない建築物を建てたり、宅地を造成したりといったことはできなくなります。一方で、固定資産税が大幅に軽減されるほか、一定の要件のもとに相続税の支払いを先延ばしできる制度(相続税の納税猶予)などを利用することが可能です。
生産緑地の指定を解除できるのは「指定後30年が経過したとき」「主たる従事者(農業経営の中心的人物)が死亡したとき」「主たる従事者が怪我や病気など何らかの故障によって農林漁業に従事することが困難になったとき」のいずれかに該当する場合のみです。
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◆2022年問題はどう影響するか
制度が始まった1992年当時、バブル末期で路線価はピークに達していました。相続税の負担を避けるため、多くの農家が生産緑地の指定を選択しました。
現在、全国に約1万3,000haある生産緑地のうち、およそ8割が制度開始時に指定を受けたものです。2022年に、指定の解除が可能となる30年をむかえます。解除に先立ち、市区町村に生産緑地を買い取るよう申出を行う必要がありますが、ほとんどの自治体が財政難を抱えるいま、買い取ってもらえることはほぼありません。農業の後継者不在などを理由に解除が進み、宅地が市場に大量供給された結果、不動産価格の下落が起こるのではないかと危惧されています。これが「2022年問題」と呼ばれるものです。
実際にどれだけの生産緑地が解除されるのか、はっきりとした見通しは立っていません。農業を続ける意思のある層や、相続税の納税猶予を利用している層は一定数いることから、解除に踏み切るのは全体の2割程度と目されます。しかしそれでも、一定量の宅地が供給されることになるため、市場への影響は少なからずあるものと予想されます。
生産緑地は、その多くが路線価の高い地域にあり、かつ原則として500㎡以上と都市部では大きい土地です。言い換えれば宅地分譲や中高層住宅に適した土地であり、こうした土地の売却や活用が一斉に進行するならば、生産緑地所有者に限らず、賃貸経営をしている方も軽視はできません。
「特定生産緑地」制度の効果は限定的
◆国の対処も効果は限定的
2022年問題に対処するため、国は「特定生産緑地」という新たな制度を設けました。これは、指定から30年を経過する生産緑地について、市区町村より新たに「特定生産緑地」の指定を受ければ、買い取り申出ができる時期が10年延長されるというものです。その10年が経過する前に指定の更新を受ければ、さらにその時期が10年延びます。
特定生産緑地の指定または指定の更新を受けない場合、相続税の納税猶予が認められるのは、現に納税猶予を利用している相続人に限られます。その相続人が亡くなった際には、該当の土地を相続する新たな相続人は納税猶予を利用することができません。猶予を受けられなければ、相続時に多額の税負担が生じることになるため、現状で猶予を受けている人の多くは特定生産緑地の指定を受けるものと思われます。
国は現在、「生産緑地を解除させない」方針で動いています。しかし、すべての生産緑地所有者が納税猶予を受けているわけではありません。制度を利用していない人のなかには解除を選択する人も出てくるものと予想され、この点における国の施策の効果は限定的といわざるを得ません。
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◆問題にどう対処すべきか
それでは、生産緑地所有者やその家族はどのように対処すべきでしょうか。まず農業を続ける意思がある、または農業後継者がいる場合は、2022年を迎える前に特定生産緑地の指定を受けるべきでしょう。
次に、農業を続ける意思がなく、かつ農業後継者もいない場合です。相続税納税猶予を受けていない場合は、特定生産緑地の指定を受けないこと、また主たる従事者が寝たきりであるなど故障理由に当てはまるならば2022年を待たずして生産緑地を解除することも、選択肢としてありえます。
相続税納税猶予を受けている場合、主たる従事者の故障を理由として生産緑地の指定を解除してしまうと、これまで猶予されていた多額の相続税等を支払わねばならなくなり、得策ではありません。2022年を前に主たる従事者が亡くなることがあれば、その時点で生産緑地の買い取り申出を申請すべきでしょう。一方、2022年を目前にして主たる従事者がまだまだお元気ということであれば、特定生産緑地の指定を受けて2022年以降も土地を維持し、その方が将来亡くなった時点で、生産緑地を解除するのがよいと考えられます。
ただし、生産緑地を継続するか否かの判断には多角的な検討が必要です。生産緑地を誰が相続するのか、解除後の固定資産税や相続税の負担に耐えられるのか、また解除した場合に有効活用できるのかといったことが検討課題となってくるでしょう。
藤宮 浩
フジ総合グループ/株式会社フジ総合鑑定 代表取締役
不動産鑑定士
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