平成27年の税制改正により、相続税の基礎控除額が引き下げられ、課税対象となる範囲が広がりました。その課税対象者のうち、約7割もの人が相続税を納めすぎているといわれています。本記事では、相続税を納めすぎてしまう要因について見ていきます。

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土地評価に影響を与える要素が多く、価格設定が困難

◆相続税の納めすぎは珍しくない

 

医療の分野で「セカンドオピニオン」(担当医以外の医師に第2の意見を求めること)が普及しているように、近年、税務の分野でもセカンドオピニオンの利用が広まっているようです。

 

平成27年の税制改正で相続税の課税対象者の裾野が広がり、以前に比べて、相続税に関する専門性をアピールポイントとする税理士事務所も増えてきました。税理士選びの選択肢が広がったことで、反対に「自分の相続税額は高すぎるのではないか?」と不安になる納税者が増えたのかもしれません。 

 

実際、相続税を納めすぎてしまうのは珍しいことではありません。筆者の経験上、セカンドオピニオンを求められたうちの7割ほどは、減額できた可能性があったと考えています。国の税金であるにも関わらず、なぜ相続税を納めすぎてしまうのでしょうか。 

 

◆納めすぎる原因は土地にある 

 

相続税は、金銭に換算できるほとんどすべての財産に課税されます。相続財産の金額の内訳をみると(平成28年分)、「土地」の割合が平均で約4割と最も高いです。相続税の特徴のひとつといえるでしょう。

 

相続税を計算するには、まず相続財産を評価し、その金銭的な価値を把握する必要があります。これを財産評価といい、たとえば普通預金なら相続開始日の残高が相続税評価額となります。 

 

預金ならば評価額を把握するのは簡単ですが、そのような財産ばかりではありません。財産評価のルールは国税庁が公表している「財産評価基本通達」に定められています。そのなかでも土地は、最も評価が複雑で難しいものです。 

 

土地はまったく同じ条件のものがなく、一律の価格設定をするのは困難です。そこで通達では、「路線価」という標準的な土地の単価を基礎として、土地の状況に応じた各種の補正などを行い、評価額を算定することと定められています(主に市街地の場合)。

 

しかし、通達でかなりの量の情報が盛り込まれているにも関わらず、そこにあてはまらないケースが往々にして出てきます。また、そもそも評価する人が、価額へ影響を与える要素に気づかない場合もあります。 

 

これらの理由から、同じ土地でも評価者によって価額がぶれやすくなります。相続財産の4割近くを占める土地の価額が上下するのですから、相続税額に与える影響も大きいといえます。

 

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◆評価差が生じる3つの原因 

 

土地の評価がなぜ複雑なのかというと、その価額を形成する要素が数多くあるためです。ざっくり分類すると、「形状など土地そのものの条件や周辺環境」「法律や条令で受ける規制」「権利関係」の3つがあげられます。 

 

土地の大きさや形状・間口の広さ・奥行の長さ・接道の状況などは土地によって異なります。評価の基礎となる「路線価」は、あくまでも標準的な土地を想定しています。そのため、形が悪く利用しづらい・傾斜している・道路に接していないといったマイナス要素は、減額補正としてきちんと反映しなければ、高すぎる評価額となってしまいます。 

 

次に、不動産関係の法令です。普段あまり意識しないかもしれませんが、土地は法律や都市計画によってさまざまな規制を受けています。たとえば、建設可能な建物の用途や床面積に制限がある場合、当然ながらそれを土地の評価額に考慮しなければなりません。 

 

さらに、権利関係も土地評価額に影響を与えます。たとえば、借地権など他人の権利が付着している土地は、完全な所有権のものに比べて評価額は下がります。

すべての税理士が「不動産」に詳しいとは限らない

◆不動産に強い税理士を 

 

個別性の強い土地は、財産評価のルールはあっても単純な類型化ができず、判断の誤りや減額要因の見落としが起こりやすくなります。そして、土地は相続財産の大きなウエイトを占めていることが相続税を納めすぎる原因となっています。 

 

通達に習熟することはもちろん必要ですが、上記のような減額要因は、現地調査や役所調査を踏まえなければわからないものがほとんどです。これらの調査にはどうしても、不動産に関する知識が必要となってきます。また、通達でカバーされていない事例に行きあたったときに、適正な判断ができるかどうかも経験に左右されます。 

 

「通達を見ながら自分で申告してみよう」と考える方もいるかもしれませんが、土地評価で考慮すべき要素は複雑です。実際に間違いを起こさずに自分で評価するのは、かなり難しいでしょう。 

 

もっとも、ほとんどの人は税理士に依頼するかと思います。その際も、相続税の申告実績が多数ある事務所に依頼すべきです。税理士は税金の専門家ではありますが、不動産については必ずしも精通しているとは限らないからです。 

 

相続税は課税対象者が増えたとはいえ、所得税や法人税に比べるとその案件数は一握りです。「相続税専門」の看板をうのみにせず、年間の申告件数などを確認してみるとよいでしょう。また、多数のスタッフが在籍している事務所なら安心かというと、必ずしもそうではありません。その分、個々のスタッフの習熟度が低いこともありますので注意すべきです。 

 

税理士報酬が安くても、それ以上に相続税を納めすぎては元も子もありません。税理士を選ぶ際は、申告報酬だけに捉われない視点も大切です。

 

◆5年以内なら、納めた後に取り戻すこともできる 

 

最後に、相続税が高すぎることに気づかず納税してしまったときの対応についてお話ししておきます。

 

相続税をはじめとする国の税金には「更正の請求」という手続きが認められています。納税者が税金を申告した後に申告額が多すぎたことに気づいた場合、税務署長に是正を求めることができる手続きで、認められれば納めすぎた金額の還付を受けることができます。 

 

ただし、更正の請求ができる期間は「申告期限から5年以内」です。相続税の申告期限は「相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内」ですので、多くの場合は亡くなってから5年10ヵ月が更正の請求期限ということになります。申告内容のチェックを受け付けている事務所もありますので、気になる方は相談してみるとよいでしょう。

 

 

藤宮 浩

フジ総合グループ/株式会社フジ総合鑑定 代表取締役
不動産鑑定士

 

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