仮想通貨も対象に!? 「デジタル遺産」に相続税はかかる?

近年、ネット銀行口座、ネット型保険といった、いわゆる「デジタル遺産」と呼ばれる財産をめぐる相続トラブルが後を絶ちません。なかでも、いま注目されているのが「仮想通貨」です。所有者が定めたパスワードがわからない限り、仮想通貨を取り出せず、相続人は手に入れることができません。本記事では、そのような「取り出せない遺産」でも、相続税の課税対象となるのかを解説していきます。

「利用できない仮想通貨」も相続税の課税対象に!?

ここ数年で、よく耳にするようになった「デジタル遺産」という言葉をご存じですか? 技術の革新が進み世の中が便利になるのと比例し、資産の在り方も、インターネットなどのデジタル環境を介する機会が増えきてました。わかりやすい例が仮想通貨です。自身や家族が亡くなったとき、このような資産は「デジタル遺産」となりますが、このデジタル遺産に関してのトラブルが増えてきています。残された遺族はどのように対応すればよいのでしょうか。

 

◆デジタル遺産とは

 

デジタル遺産とは一般的に、デジタル機器やインターネットのなかにある財産を指します。遺品となれば、文書や画像データなども含まれますが、遺産なので、当然財産となるものが対象となります。そのなかでも、特にトラブルになりやすいデジタル遺産としては、以下のものが考えられます。

 

●ネット銀行の口座

●ネット証券などを利用した有価証券(株など)

●ネット型保険

●FX(外国為替証拠金取引)口座

●仮想通貨

 

◆デジタル遺産のトラブル

 

上記のようなデジタル遺産で一番問題となるのは、当然お金の問題です。インターネット上だけで完結するものであると、相続人がそもそも存在を知らなかったり、知っていてもアクセスできなかったり、得られるはずであった資産が得られないものがあります。反対に、利用料金の請求や負債、税金などといったお金が発生する、得られるどころか損害が発生してしまう遺産まであるのです。

 

◆仮想通貨によるデジタル遺産トラブル

 

これらのようなデジタル遺産のなかでも、今注目を集めているが仮想通貨です。仮想通貨取引をしている方には、価値の爆発的上昇から「億り人」などと呼ばれ、莫大な資産を築いた人もいます。しかし、資産となった仮想通貨は、当事者が死亡してデジタル遺産となった際、大きな問題となる可能性があるのです。

 

 

◆税金の問題――国税庁の見解――

 

①相続税に関する見解

 

平成30年3月23日に行われた参議院の財政金融委員会において、「仮想通貨は資金決済法上、代価の弁済のために不特定の者に対して使用できる財産的価値と規定されているので、相続税が課税される」という答弁があり、国税庁長官は、仮想通貨にも相続税を課税する考えを明らかにしました。

 

②パスワードに関する見解

 

ここで問題になるのは、仮想通貨を保管しているウォレットなどが、被相続人が設定したパスワードによってロックされているケースです。被相続人が相続人に対してパスワードを知らせていなかったら、相続人はウォレット内の仮想通貨を利用できません。その場合でも、相続税は当然に課されてしまうのでしょうか。

 

これに対し、国税庁長官は同委員会で「パスワードを知っていたか否かは、当事者しかわからないことであり、真偽の判定が困難であるため、現時点においては、不知を理由に課税財産に該当しないとすることは、課税の公平の観点から問題がある」とし、相続した仮想通貨のパスワードを知らない場合でも、相続税が課される可能性があると税務当局が解釈していることを明らかにしました。

パスワードは「アナログ媒体」での保管を

◆相続の問題――デジタル遺産トラブルにならないための対策とは――

 

取引所に残された仮想通貨も立派な「遺産」です。仮想通貨取引をしていた人が亡くなれば、相続の問題が発生します。自分の死後、残された遺族がデジタル遺産によるトラブルに巻き込まれないために、生前行えることはあるのでしょうか。

 

①取引所、ウォレットなどのパスワード類は、アナログ媒体での保管をしておく

 

上記でも述べたように、仮想通貨の取引所は2段階認証など高度なセキュリティ対策が講じられています。仮想通貨取引所自体が2段階認証をしていることもさることながら、スマートフォンやパソコン自体にもロックをかけているのが一般的です。こうなると、3段階、4段階の認証・パスワードが必要となることでしょう。

 

特定の機種のスマートフォンやパソコンでは、パスワード認証を既定回数以上誤ると、自動的に記録が削除されてしまう機能が設定されていることもあります。削除されてしまえば、手掛かりを探すことすら困難となります。このような事態に陥らないためにも、仮想通貨取引所やウォレットのパスワードは、アナログ媒体でも保管しておくことが望ましいといえます。

 

パソコン内にデータとして残すといった方法もありますが、ウイルスによる流出などの危険性を考えると、CD-ROMなどに取引所やウォレットの情報とID、パスワードを記録し、金庫などで保管するほうが流出の可能性は低いでしょう。

 

②相続人になり得る人にはあらかじめ伝えておく

 

デジタル遺産トラブルの対策として確実なのは、やはり相続しうる者に対して、あらかじめ仮想通貨資産、取引があることを通知しておくことです。しかし、さまざまな事情から、すべてを伝えることは難しいと考える方は多いでしょう。

 

その場合、アナログ媒体で記録をしておけば、被相続人の死後、遺族が資産を発見しやすく、相続の手続きがスムーズに進められる可能性が高まります。資産を発見できず、負債が発生することへの予防にもなります。

 

③業者に依頼する

 

相続人の視点から考えると、デジタル遺産など発見しづらい資産を、どのように知ることができるでしょうか。

 

デジタル遺産問題が世の中に知られるようになってきてからは、パスワード解除からデータの抽出などといった、デジタル遺産の回収サービスを行う業者が増えてきています。故人が、スマートフォンやパソコンなどをひんぱんに利用しているなら、専門業者に依頼することを検討してみましょう。仮想通貨はもちろんのこと、そのほかの資産も確認できるかもしれません。

 

 

◆まとめ

 

人は、いつかは死にます。天寿をまっとうできればよいですが、病気や事故など不慮のものであれば、残された家族の悲しみは計り知れません。一方、仮想通貨などまだまだ未発達な金融資産は、その価値が乱高下するなど、日々変わり続けています。ほんの少しだった仮想通貨が、数ヵ月、数年で莫大な金額に変貌する可能性も決して否定できません。

 

残された遺族が資産を得られないトラブルや、知らずに税金が課されるなどの金銭的な問題を残さないためにも、生きているうちに、「もしも」の対応を考えておくことがよいのではないでしょうか。

 

 

中野 秀俊

グローウィル国際法律事務所 代表弁護士

 

グローウィル国際法律事務所 代表弁護士みらいチャレンジ株式会社 代表取締役
SAMURAI INNOVATIONPTE.Ltd(シンガポール法人) CEO東京弁護士会インターネット法部会 会員
明治大学 法学部 法制研究所 客員講師 

早稲田大学政治経済学部を卒業。大学時代、システム開発・ウェブサービス事業を起業するも、取引先との契約上のトラブルが原因で事業を閉じることに。そこから一念発起し、弁護士を目指し司法試験を受験。司法試験に合格し、自身のIT企業経営者としての経験を活かし、IT・インターネット企業の法律問題に特化した弁護士として活動。特に、Fintech分野については、専門的に対応できる日本有数の法律事務所となっている。

著者紹介

連載家族が集まる年末年始だから本気で考えたい!「相続」特集 ~弁護士・中野秀俊氏

  • 仮想通貨も対象に!? 「デジタル遺産」に相続税はかかる?

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