家族が集まる年末年始に改めて考えたい相続の問題。本記事では、相続税の過払いが増えている理由と、過払い分を取り戻すことのできる「相続税還付」について見ていきます。※本記事は佐藤和基税理士事務所の佐藤和基税理士の書き下ろしによるものです。

相続税の過払い…原因は相続税に不慣れな税理士

平成27年1月1日から相続税法改正により、相続税の課税対象者が拡大されました。そのため、相続税の節税対策をされる方が増えてきていますが、払い過ぎた相続税を取り戻せるという話はあまり知られていません。

 

 「うちはプロの税理士にお願いしているから大丈夫ですよ!」

 

よく聞くセリフですが、実は相続税に慣れている税理士はかぎられています。プロの税理士に依頼していても、約7割の方は相続税を納め過ぎているのです。その理由について、以下で順を追って説明していきましょう。

 

なぜ還付を受けられるのか?

 

例えば医者であれば内科、外科、耳鼻科、眼科などの専門分野が分かれています。そのため、目の調子が悪いときは眼科に行けばよいと判断することができます。

 

しかし、税理士には肩書が「税理士」しかありません。一般の方は税理士であれば、すべての税金に詳しいと思うかもしれませんが、医者と同じで税理士にも得意不得意があります。大半の税理士は会社の顧問や個人の確定申告などを専門にすることが多く、所得税、法人税、消費税には慣れています。

 

しかし、相続税を専門にしている税理士はかぎられています。特に差が出てくるのが土地の評価です。相続税に慣れていない税理士は普段、土地の評価に接する機会がほとんどありません。土地を評価する際に現地調査、役所調査を実施していないこともありますし、仮に調査をしていても普段接しない仕事のため、減額要素を見落としてしまうのです。土地の評価では税理士によって数百万から数千万の差が出ることが多々あり、場合によっては億単位の差が出ることもあります。

 

相続税の見直しをする際には、まず机上で減額の可能性を検討し、必要に応じて現地調査、役所調査を実施し、土地の利用制限、公法上の制限等の有無を確認し、実務上認められている最大限の評価減要素を探して相続税を減額します。

 

なぜ税理士は相続税に慣れていないのか?

 

税理士が相続税に慣れていない原因として、単純に実務経験を得る機会が少ないことが考えられます。

 

例えば平成28年の死亡者数は1,307,748人ですが、このうち相続税がかかった方は105,880件であり、割合としては8.1%です。これに対して平成30年10月末時点の税理士の数は77,725人であるため、単純計算として税理士1人あたりの年間の相続税申告件数は平均でわずか1.36件となります。

 

※ 平成26年以前は約0.7件でした。

 

この数値からも税理士が相続税に慣れる機会が少ないことがわかるでしょう。

 

また、税理士試験において「相続税法」は必須科目になっていません。このことも、相続税に不慣れな税理士が多い要因になっていると考えられます。

 

相続税還付」の還付対象となる方

 

相続税還付(相続税を取り戻すこと)の対象となる方は亡くなってから5年10ヶ月以内に相続税を納めた相続人となります。仮に期限がぎりぎりの場合でも、5年10ヶ月以内に税務署に対して還付請求をすれば間に合います。

 

また、次回具体的に説明しますが、顧問税理士にも知られずに還付を受けることもできます。実際に納めすぎているケースは10件中約7件ほどですが、不動産を所有している方は特に確率が高くなります。

相続税還付で「1,300万円」を取り戻した事例

実際に還付に成功した事例を紹介します。

 

以前に依頼いただいた方のケースですが、相続税の申告書をお預かりする際に「私は税理士に申告を依頼してしっかりと計算してもらったので、還付になることは絶対にないと思いますよ」とおっしゃっていました。

 

それでも完全成功報酬で損をすることがないことから、ダメもとでの依頼でした。

 

当初申告で約4,100万円を納めていましたが、こちらで土地の評価額を見直したところ、約2,800万円の納税でよかったことがわかりました。

 

依頼者に約1,300万円納め過ぎているため、還付請求をすることで取り戻せると説明をしたところ「なぜこんなにも差がでるのか?」と驚かれていました。

 

依頼者は説明をしても半信半疑でしたが、税務署に対して還付請求を行い、約3ヵ月後には無事に還付が認められ約1,300万円が還付されました。

 

相続税還付にデメリットはない?

 

よくある質問として「前の税理士とは長い付き合いで顧問を依頼しているから、相続税還付の依頼をしたことがばれたくない」というものがあります。しかしこれは、相続人が自らいわないかぎり、ばれることはありません(詳細については、次回説明します)。

 

また、相続人同士で争っている場合には相続人1人で還付請求することもできます。還付手続きに必要なものは「相続税申告書と添付資料一式」のみのためとても簡単です。通常はファイリングして税理士から控えを貰っているはずですので、そのまま相続税還付専門の税理士に預けてください。10人中約7人は納め過ぎの事実が実感できるはずです。

 

「戻ったらラッキー」という考えでよいのでダメもとで試してみてはいかがでしょうか?

 

 

佐藤 和基
佐藤和基税理士事務所 税理士

 

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