相続税を苦手とする税理士は多く、相続税還付の制度を活用するとおよそ7割が過払いであることが発覚するともいわれています。とはいえ、付き合いの長い顧問税理士がいる場合、相続税還付を他の税理士に依頼することがためらわれるケースも多いでしょう。本記事では、顧問税理士に知られずに相続税還付を受ける方法を見ていきます。※本記事は佐藤和基税理士事務所の佐藤和基税理士の書き下ろしによるものです。

顧問以外の税理士に依頼できる還付請求

相続税還付の依頼者の大半は顧問税理士に知られないか気にされています。今後の付き合いのことを考えれば当然だと思いますが、実はそこまで気にする必要はありません。相続税還付を受けたことを顧問税理士に知られずにいることは可能だからです。

 

以下で順を追って説明していきましょう。

 

税務代理権限証書の添付

 

相続税の還付請求をする際には「更正の請求書」という書類に還付になる根拠資料を添付して税務署に提出しますが、税理士に依頼する場合には「税務代理権限証書」という委任状も添付することになります。

 

そのため、税務署からの通知も当初の税理士ではなく、新たに「税務代理権限証書」を添付した税理士(相続税還付を依頼した税理士)に連絡がいきますので、税務署から当初の税理士に情報が漏れることはありません。

顧問税理士に還付請求を知られないためには?

1)還付を受ける口座に注意

 

顧問税理士のいる方ですと、確定申告のために通帳を税理士に渡しているケースがあります。

 

そのため、相続税還付を受ける場合には普段顧問税理士に渡していない通帳で還付を受ける必要があります。

 

顧問税理士に渡している通帳で還付を受けてしまうと、還付の入金から相続税還付の依頼が知られてしまいます。

 

なかにはすべての通帳を顧問税理士に渡しているという方もいますが、その場合には新たに還付を受けるためだけの口座を作ってもらっています。

 

相続税の還付金額は、納め過ぎた税金を返してもらうだけですので、特に所得になりませんし還付を受けるためだけの口座は顧問税理士に見せなくても、確定申告に影響がありません。

 

2)相続財産を売却している場合には注意

 

亡くなってから3年10ヶ月以内に相続財産を売却している場合には、相続税の一部を経費にすることができる相続税の取得費加算という特例を適用しています。

 

そのため、相続税還付に成功した場合には、経費にすることができる相続税が減少するため、所得税の修正申告が必要になってきます。

 

修正申告をせずに放置してしまうと、顧問税理士に知られてしまう可能性があるため、3年10ヶ月以内に相続財産を売却している場合には、相続税還付を依頼する税理士に所得税の修正申告までセットで対応してもらう必要があります。

 

また、相続税還付に成功したあとに所得税の確定申告をするというケースもあると思いますが、その場合には顧問税理士以外に所得税の確定申告を依頼することができれば、それがベストです。

 

ただし、顧問税理士に依頼しないわけにもいかないと思いますので、まずは相続税還付を受けた事実をいわずに当初申告の相続税に基づき顧問税理士に確定申告をしてもらい、そのあと速やかに相続税還付を依頼した税理士に修正申告をしてもらうことで、顧問税理士に知られずに済みます。

 

3)税務署からの書類に注意

 

相続税の還付請求をすると税務署は3ヵ月ほど時間をかけて請求内容をチェックします。

 

何か問題がある場合などは税務代理権限証書を添付した税理士(つまり相続税還付の依頼を受けた税理士)に税務署から電話連絡が入ります。

 

何も問題なければそのまま還付されることになります。

 

結果としては考えられるのは下記の3パターンあります。

 

 ・請求内容をすべて認める

 ・請求内容の一部を認める

 ・請求内容を認めない

 

これらの結果は「更正通知書」という書類で納税者宛に送られてきます。

 

※ 実務上は税務署側の処理の関係で更正の請求書の一部差し替えや、取下げなどを求められることもありますが、細かい話になりますのでここでは割愛します。

 

また、更正通知書が届いたあとに国税還付金振込通知書というハガキも税務署から送られてきます。

 

つまり、合計で2回税務署から書類が届くのですが、顧問税理士のいる方ですと、税務署から届いた書類を封も空けずに渡してしまう方がいます。

 

上記の書類を顧問税理士が見てしまうと相続税還付の依頼が知られてしまいますので、2つの書類についてはきちんと中身を確認して、顧問税理士に渡さないように注意する必要があります。

 

 まとめ 

相続税還付の依頼者の大半が気にされていますが、顧問税理士には知られずに還付請求できることがわかったと思います。

 

以前にあった事例でも、最初にお会いしてから1年以上経ってからようやく2回目お会いして相続税申告書と添付資料一式をお預かりしたことがありました。

 

話を聞くと顧問税理士に知られるのではないかと不安があったようです。

 

その点については今回の記事の内容を説明して大丈夫であると納得して無事にご依頼いただくことができました。

 

最後に納税者の注意点をまとめると下記の3つになります。

 

 1)還付を受ける口座に注意

 2)相続財産を売却している場合には注意

 3)税務署からの書類に注意

 

なかには顧問税理士に対して後ろめたく思う方もいるようですが、相続税還付は納めなくてもよかった税金を取り戻すだけですし、それによって顧問税理士に迷惑がかかることもありません。

 

誰にも迷惑をかけることがありませんので、気軽に相続税還付を依頼することができると思います。

 

 

佐藤 和基
佐藤和基税理士事務所 税理士

 

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