今年の欧州株は軟調に推移
■欧州株式市場の動向を、代表的な株価指数であるストックス欧州600で見ると、2018年は軟調な展開となっています。昨年後半を直近のピークに欧州の経済成長が緩やかに減速していることに加え、米国の保護主義的な通商政策や、欧州域内の政治的な不透明感が続いていることなどから、株価の上値が重くなっています。
欧州株式と1株当たり予想利益の動向
企業業績は緩やかに拡大
■欧州企業の今年や来年の業績は、増益が続くと見込まれていますが、その拡大幅は2017年に比べて緩やかなものとなりそうです。欧州域内の堅調な雇用や賃金の増加が内需を支えるほか、ユーロ安も業績をサポートすると見られます。
■欧州域内では、政治的な不透明要因が増しています。イタリアでは、ポピュリズム政党による新政権の2019年度予算は過剰に財政拡張的なものとなっています。欧州委員会は、イタリアの予算案が欧州連合(EU)の財政ルールに違反しており、制裁手続き入りが適正だとの報告書を作成しているなど、対立が続いています。
■また、英国のEUからの離脱(Brexit)に関しては、25日に開催された緊急のEU首脳会議で離脱協定案が正式に合意されました。ただし、英国内では閣僚が相次いで辞任するなど、メイ政権は難しい舵取りを迫られています。
12月は政治イベントが集中、不透明感の払拭となるかに注目
■イタリアでは、政府は当初の予算を修正し、財政赤字目標を最終的にGDP比で2.2%程度に下げる妥協案を検討中ですが、EUサイドはこれも不十分との見方を示しており、調整は今後も難航しそうです。英国では、12月11日に英国議会での離脱協定案の採決が予定されていますが、これも一筋縄ではいかなさそうです。このほかドイツでは、メルケル首相が州議会選挙大敗の責任を取る形で、12月に予定される与党党大会での党首選への不出馬を表明しており、後任が親メルケル氏となるか、反メルケル氏となるかなどが注目されています。
■一方、米中貿易摩擦については、今週末のG20サミットで予定されている米中首脳会談で、中国が米国に提出した142項目の行動計画に対して、どのような合意内容が示されるのかが注目されています。
(2018年11月29日)
関連マーケットレポート
2018年11月16日 離脱協定の合意で再び動き出した『Brexit』
2018年11月06日 党首退任の『メルケル』、首相続投できるのか?