実践的基礎知識 為替編(5)<円安の効用>

ピクテ投信投資顧問株式会社が、実践的な投資の基礎知識を初心者にもわかりやすく解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するコラムを転載したものです。

通貨安は輸出を有利にする

円安は良いもの、円高は悪いものという風潮がありますが、果たしてそうなのでしょうか。円高にも円安にもそれぞれメリットとデメリットがあります。例えば、通貨安は輸出を有利にします。日本から輸出をする場合で、具体的に考えてみましょう。

 

日本で8,000円で作った商品を10,000円で販売すると、2,000円の利益になります。この商品を輸出する場合、例えば米国に$1=80円の時に輸出すると10,000円÷80円=$125で販売して2,000円の利益が得られます。

 

$1=80円から100円、120円と円安が進むと8,000円で作ったものを日本円価格の10,000円相当額で販売し続けても、外貨価格を安くしていくことが出来ます。10,000円は、$1=100円の時には$100、$1=120円の時には$83になります。円安に合わせて安い外貨価格で販売しても同じ2,000円の利益が得られます。

 

(図表1:ケース1)。一方、円安が進む局面で同じ外貨価格で販売した場合は、日本円での利益が多くなります(図表1:ケース2)。$100で販売し続ける場合、8,000円で作った製品を$1=80円の時に$100で販売すると、日本円の8,000円で販売することになり、利益はありません。$1=100円の円安になれば、$100=10,000円ですので、8,000円で作った製品は2,000円の利益が得られます。さらに、$1=120円の円安になれば、$100=12,000円ですので、4,000円とより多くの利益が得られます。

 

[図表1]円安の輸出への効用

 

このように、自国の通貨が安くなることによって、より安い外貨価格で販売しても同じ日本円額の利益を得ることができ、同じ外貨価格で販売すればより多くの日本円ベースの利益を得られることになりますので、通貨安は輸出を有利にします。これはブラジル人にとってのブラジルレアル安、オーストラリア人にとっての豪ドル安も同様です。

自国通貨安はインフレを招く

一方で、自国通貨安は輸入品の価格を上昇させます(図表2)。例えば、鉄を1単位あたり$100で輸入するケースで考えてみましょう。

 

$1=80円の場合、$100の鉄は8,000円ですが、$1=100円になれば10,000円、$1=120円になれば12,000円になります。

 

 

このように自国通貨安は輸入品の価格を上昇させますので、インフレ率の上昇を招きます。

 

また、自国通貨安は輸入品に対する購買力を低下させ、自国通貨建て資産を相対的に目減りさせます(図表3)。

 

1億円で買える海外資産や輸入品は円安になれば、その分だけドルベースで買える額が減ります。$1=80円の時には$125万分買えたものが、$1=120円になれば$83万分しか買えません。買える額は$42万分も減ってしまいます。

 

このように円安は日本円で海外資産や海外企業、輸入品を買う力を低下させます。資源のない日本が、資源を輸入して加工し完成した製品を輸出する上で、通貨安になることだけにメリットがあるとは言えません。

 

日本は経済成長率が低くなり、少子高齢化が進行中で、今や過去に貯めた資本ストックが最大の武器と言っても過言ではありません。日本人が海外資産を購入しようとする時、円安が進行すればするほど円ベースで購入できる海外資産は減ってしまいます。また日本企業が海外企業を買収する時にも円安は不利となります。このように、円安は決して幸せなことばかりではありません。

 

円高の時は日本円で沢山の海外資産を買うチャンスです。円高を嘆くのではなく、円高と円安のそれぞれのメリット・デメリットを認識し、円高の時は円高の時にしかできないことをするべきなのではないでしょうか。

 

[図表2]自国通貨安による輸入価格の上昇

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『実践的基礎知識 為替編(5)<円安の効用>』を参照)。

 

(2016年10月7日)

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

著者紹介

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