米中間選挙の結果がヘルスケア市場に与える影響

バイオ医薬品

ピクテ投信投資顧問株式会社
米中間選挙の結果がヘルスケア市場に与える影響

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報を転載したものです。

 

2018年11月6日に米国の中間選挙が実施され、上院で共和党、下院で民主党が多数派を占める「ねじれ議会」となることが決定しました。有権者の関心が高かったヘルスケア政策について、薬価の問題などで共和党、民主党両党による超党派の取り組みが進められる可能性があり、今後の動向が注目されます。

ヘルスケアが争点となった米中間選挙は、上院で共和党、下院で民主党が勝利

2018年11月6日、米国で中間選挙が実施されました。事前の予想通り、共和党が上院で過半数を維持した一方、下院は民主党が過半数を獲得したことから、今後2年間は、いわゆる「ねじれ議会」になることが決定しました。

 

各報道機関の調査によると、民主党が国民皆保険を目指したオバマケア(医療保険制度改革)の維持などを争点としていたことから、今回の中間選挙ではヘルスケアに対する関心が、経済政策や移民政策を上回り、もっとも高くなっていました。

医療費の膨張などがヘルスケア政策への米国有権者の関心を高める

米国では過去20年間にわたり、医療ケアサービスや処方薬の価格は、消費者物価を上回って上昇しており、このことが米国の有権者のヘルスケア政策に対する関心を高める一因となったと考えられます。1998年1月から2018年9月の消費者物価(全項目)の伸びが年率+2.2%であったのに対し、医療ケアサービスが年率+3.7%、処方薬が年率+3.6%と、消費者物価(全項目)を上回る伸びとなっています(図表参照)。

 

[図表]米国の処方薬、医療ケアサービス、全項目の物価指数推移

月次、期間:1998年1月~2018年9月 ※各項目は、米国消費者物価指数の構成項目 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
月次、期間:1998年1月~2018年9月
※各項目は、米国消費者物価指数の構成項目
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

一方で、医療ケアサービス、処方薬、消費者物価(全項目)の2018年1月から9月の前年同月比上昇率の平均値は、医療ケアサービスおよび処方薬が+2.1%であるのに対し、消費者物価(全項目)は+2.5%となっています。トランプ政権誕生以降も、高額の薬価は注目を集めていましたが、今年に入り医療ケアサービスや処方薬の価格上昇率が消費者物価の伸びを下回るペースにまで鈍化していることは、薬価引き下げに対する圧力を和らげる可能性があります。

オバマケアの廃止に関しては、今後、議会で俎上に載ることはなさそう

今後の動きとしてまず注目されるトランプ大統領が目指していたオバマケアの廃止・改革については、議会で俎上に載ることはないと考えます。2017年にトランプ大統領は、オバマケアの改廃法案を上下両院ともに共和党が多数であった連邦議会に提出しましたが、一部の共和党議員の反対があったことから、撤回に追い込まれました。

 

資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部

 

今回の中間選挙を終えて、「ねじれ議会」となったことで、新法の成立などにはオバマケアの維持を主張してきた民主党の同意が必要となり、廃止は一層、困難になったといえます。

薬価の引き下げなどは超党派の取り組みとなる可能性、具体策の発表に注目

一方、薬価の引き下げについては超党派の取り組みとなる可能性があります。

 

トランプ大統領は、10月にメディケアの薬価引き下げ案を発表するなど、薬価引き下げに取り組んできました。一方、下院議長に就任すると言われているナンシー・ペロシ氏も、以前より薬価の問題を優先順位の高い問題として据えています。中間選挙後、ペロシ氏はヘルスケア政策を、インフラ整備とともにトランプ政権と超党派で取り組める領域であると強調しています。

 

 

現時点では、今後どのように超党派での取り組みが行われ、どのように効率的に薬価をコントロールしていくのかといった先行きが不透明な点について、具体策の発表が待たれる状況にあるといえます。

 

中間選挙の結果が医薬品企業に与える影響については、短期的には、特に株式市場のセンチメントという観点から、ネガティブであると考えます。

 

ただし中長期的には、透明性が向上し、度を越えた価格設定がされなくなり、患者の大きな金銭的な負担を避けることにつながるシステムを構築することは、未だ満たされていない医療ニーズを満たすような画期的な新薬の開発などの真のイノベーションを提供する企業にとって恩恵をもたらすものと考えます。

 

※将来の市場環境の変動等により、上記の内容が変更される場合があります。当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】もご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米中間選挙の結果がヘルスケア市場に与える影響 』を参照)。

 

(2018年11月15日)

 

ピクテ投信投資顧問株式会社

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

【3/27開催】遺言はどう書く?どう読む?
弁護士が解説する「遺言」セミナー<実務編>

 

【3/27開催】いま「日本の不動産」が世界から注目される理由
~海外投資家は何に価値を見出すのか

 

【3/27開催】「マイクロ法人」超活用術
~法人だからできる節税とは~

 

【3/28開催】「相続手続き」完全マスター講座
~相続人調査、財産調査、遺産分割協議~

 

【3/30開催】次世代のオルタナティブ投資
「プライベートクレジット投資」とは

 

あなたにオススメのセミナー

    【ご注意】
    ●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
    ●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
    ●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
    ●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
    ●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
    ●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
    ●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
    ●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
    ●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

    人気記事ランキング

    • デイリー
    • 週間
    • 月間

    メルマガ会員登録者の
    ご案内

    メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

    メルマガ登録
    TOPへ