相続・事業承継のトラブルの種として意外に多いのが、「引き継ぐもの」が明確になっていないケース。相続の段階になって想定外の財産が次々に出てきて、やがては親族がその財産を取り合うといった激しい“争族”に発展することもあります。

会社にある隠れた財産まですべて洗い出す

オーナー社長の財産の多くは自社株式、これは間違いありません。しかし、事業承継はその移転だけで終わりではありません。自社株対策のメドをつける作業と並行してそれ以外の財産をしっかり洗い出しましょう。

 

具体的には、会社にある隠れた財産から仕事には直接関係していない個人財産まで、会社と個人の財産のすべてをきれいに洗い直して整理します。例えば、オーナー所有の不動産で会社の本社ビルや工場敷地などに提供しているものや、親から受け継いだ骨董品や美術品、金庫の奥に眠っている有価証券類など、一切合切を洗い出してください。

 

 

 
財産の洗い出しは、後継者以外の法定相続人の相続対策にも大いに役立ちます。
 
後継者はすべての株式を承継しますが、多額に評価された株式の承継を知れば、配偶者は別にしても兄弟などの相続人から、不満が出てくるおそれがあります。そのようなときでも、株式以外の財産があれば、他の相続人に分けることで不満を抑え、株式承継をスムーズにしてくれます。
 
そのためにも、自分の財産を相続する法定相続人が確定したら、自分の本当の全財産を知るために「相続財産目録」を作成してみましょう。まずは、相続人の誰にどの財産を引き継がせるのがよいか考えてみます。財産のなかには相続人以外の人に渡したい財産があるかもしれません。
 
このような作業を一度行っておくことで、遺言を作成したほうがいいかもしれない、生前贈与をしたほうがいいかもしれないなどということが明確になってきます。

遺産分割協議にも役立つ「相続財産目録」

実際に相続が発生した場合には、相続人の間で遺産分割協議を行います。
 
そのときにこの「相続財産目録」があれば、相続人が「単純承認、限定承認、相続放棄」を選択するのに非常に役立ちますし、後々トラブルになることもなくなります。
 
「相続財産目録」には、とくにフォーマットはありませんので、それぞれの家族に合った財産目録をつくってみてください。
 
大きく分けると以下の通り。
(1)金融資産
(2)不動産
(3)その他の財産
(4)みなし相続財産
(5)贈与財産
(6)債務
 
このように項目別に整理すると、わかりやすく把握できると思います。「相続財産目録」を作っておき、それを基に相続税を試算。納税額に見合った現預金や上場株式や金融資産など、換金しやすい資産があるかを確認。足りないと感じたら、あらかじめ現金化しておくなどの手立ても必要でしょう。

 

 

本連載は、2012年12月19日刊行の書籍『オーナー社長のための税金ゼロの事業承継』から抜粋したものです。2015年1月1日施行の税制改正は反映されておりませんので、ご留意ください。

オーナー社長のための 税金ゼロの事業承継

オーナー社長のための 税金ゼロの事業承継

編著 GTAC

幻冬舎メディアコンサルティング

事業承継の成功は自社株式を制することにあり ムダな税金を払わずに後継者に事業を譲り渡す。その秘訣は自社の株価を極限まで引き下げることにあった。「一年分のオフィス賃料は一気に払う」「高収益部門を分社化して本体の利…

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