退職金が損金扱いできれば利益圧縮に効果
長年オーナー社長として活躍した後、名誉会長や相談役になれば、役員生前退職金を受け取ることができます。税法上も合理的理由が認められ、損金扱いができる場合には、利益圧縮に効果があります。
通常、オーナー社長の退職金は多額になるため、当期の利益を大きく圧縮することができ、結果的に株価の引き下げにも大きく貢献します。
こうした多額の退職金は、引退後の生活資金だけでなく、私募債の引き受けや非後継者の遺留分に配慮するための資金などにも活用できるため、事業承継にとって二重の効果があります。したがって、遠慮することなく思い切った額をもらうことをおすすめします。
金額の合理性を証明する根拠があるか
とはいえ、役員退職金は青天井というわけにはいきませんので、注意が必要です。
通常の役員退職金の判定基準は「最終月額報酬」「勤続年数」「平均功績倍率」を基に決められます。このうちの平均功績倍率は、社長や専務など役位によって会社への貢献度を加味するもので、役員退職金規程としてあらかじめ会社で作成しておき、金額の合理性を証明する際に利用します。
平均功績倍率の求め方は、類似法人の功績倍率を使って算出しますが、データ収集が困難であるため、裁判所での過大役員退職金の判例などを基に、会長と社長の功績倍率は3.0~3.5を超えない範囲にとどめるのが一般的です。
また、名目だけの引退で退職金を支給した場合も、損金扱いにはなりません。通常は、
(1)常勤役員が代表権や実質的な経営上の地位をもたない非常勤役員になったとき
(2)取締役が監査役になったとき
(3)報酬が50%以上減少したとき
などが、税法上の役員生前退職金扱い条件になり、損金として扱われるため、利益を圧縮し、株価を引き下げることができます。