実践的基礎知識 リスク編(5)<流動性リスクの重要性>

ピクテ投信投資顧問株式会社が、実践的な投資の基礎知識を初心者にもわかりやすく解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するコラムを転載したものです。

流動性リスクの重要性

「小さな市場は大きく動く」が市場の大原則です。例えば「1,000億円規模の売り」のインパクトは、各資産の市場規模によって異なります。小さな市場はまとまった資金の出入りで大きく変動する傾向があり、こうした市場に投資する場合は分散投資が鉄則です。

市場規模は気にする必要があるの?

今回は流動性リスクについてご説明します。流動性リスクとは、市場規模や取引量が小さい場合や、市場混乱時など買い手が少なくなった場合に、(1)換金したい時に換金できない、(2)換金したい量に対し需要が少なく一部しか換金できない、(3)買い手が少なく大幅な値引きをしなくては換金ができない、といったことが起こるリスクのことです。たとえば、「1,000億円の売り」というまとまった資金での取引をする場合、毎日10兆円の取引が成立する大きな市場と、毎日1,000億円の取引しか成立しない小さな市場では、インパクトが違ってきます。

 

 

図表1に、東証一部市場とJ-REIT市場の市場規模を比較しています。2015年8月31日現在の東証一部の時価総額は約554兆円、J-REITの時価総額は約9.7兆円と東証一部の約1/55の市場規模です。ではこの2つの市場から、それぞれ1,000億円の資金が流出したら、どのくらいのインパクトになるのでしょうか?

 

[図表1]東証一部市場とJ-REIT市場の時価総額と売買代金の比較

(2015年8月31日時点)
(2015年8月31日時点)

 

1,000億円が時価総額に占める比率は、東証一部で0.02%、J-REITでは1.03%で、ここでも約50倍の差があります。さらに、1,000億円が1日の売買代金に占める比率でみると、市場規模が大きい東証一部はわずか3.03%ですが、J-REITは約290%と売買代金の約3倍になってしまいます。このような状態では、投資している資産をすぐに現金化しようとしても、現金化できなくなるリスクが出てきます。これが一般的に言われる流動性リスクの例です。

 

市場規模の小さい市場では、購入したい価格もしくは売却したい価格で取引しようとする時は、市場の厚みを勘案した取引規模を常に念頭に置かなければなりません。市場規模を無視した取引規模で発注すると、想定していた取引価格とかけ離れた売買価額でしか取引が成立しないリスクがあります。

 

また、市場の混乱時には通常と違い買い手が極端に少なくなり、商いが薄い状態になることも注意が必要です。では、市場規模を確認するにはどうしたらいいでしょう。

 

日本の東証一部市場やJ-REIT市場の市場規模は、日経新聞等で簡単に確認することができますが、他の市場はどうでしょうか。市場規模というのは主に2つの指標で把握することができます。1つは時価総額で、全部でいくら分あるか、という数字です。もう1つは日々の売買代金で、毎日どのくらいの取引が成立しているか、という数字です。後者はデータを入手するのがなかなか難しいのですが、前者の時価総額は比較的容易に入手できます。投資信託のパンフレット等に記載がある場合もあります。

 

流動性リスクは普段は見過ごされがちですが、ひとたび顕在化すれば、非常に深刻な問題を引き起こしかねない重要なリスクです。しっかりと確認するようにしましょう。

 

[図表2]各市場を代表する指数の時価総額(2015年8月末現在、単位:兆円)

※当資料で使用したMSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。またMSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています
※当資料で使用したMSCI指数は、MSCIが開発した指数です。同指数に対する著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。またMSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています
 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『実践的基礎知識 リスク編(5)<流動性リスクの重要性>』を参照)。

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は2.11兆円となっています(2018年6月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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