これ以上の貿易摩擦激化は成長鈍化に

本連載は、三井住友アセットマネジメント株式会社が提供するデイリーマーケットレポートを転載したものです。

IMFは世界経済見通しを引き下げ、成長率は横ばいへ

インフレは一次産品価格上昇の影響で緩やかに上昇するがなお落ち着き

 

■国際通貨基金(IMF)は9日、世界経済の成長率予測を下方修正しました。18年と19年の世界成長率は17年と同じ3.7%となり、成長率は当面横ばいで推移する見通しとなりました。引き下げの要因は、激しさを増す貿易摩擦と米国の利上げ等が巻き起こした新興国市場の動揺です。

 

■貿易摩擦に関しては、既に実施されたものと、これから実施すると正式に発表されたものが反映されました。例えば、米国の対中追加関税については、2,000億ドルに対する10%の追加関税と、これが来年から25%に引き上げられ、中国が報復課税を課すことが反映されています。

 

■修正動向を先進国と新興国で比較すると、先進国は小幅な修正にとどまった一方、新興国は今年が0.2ポイント、来年が0.4ポイントと大きめの下方修正となっています。貿易摩擦に加え、米国の利上げに伴う新興国からの資金流出が強く影響していると考えられます。

 

■またインフレ率については、今年、一次産品価格の上昇などから世界的に高まるとの見通しを示しました。ただし、全体的なインフレ率は引き続き落ち着いたものになるとの見方となっています。

 

IMFによる世界経済成長見通し(実質GDP成長率と消費者物価上昇率)

(注)各年の修正幅は2018年7月時点の見通しとの比較。 (出所)IMFのデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
(注)各年の修正幅は2018年7月時点の見通しとの比較。
(出所)IMFのデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

 

 

幅広い国・地域に及ぶ下方修正

アジアへの影響は新興国の中では比較的軽微

 

■主要国の修正動向を見ると、米国は、今年の成長率予想は据え置かれましたが、来年は0.2ポイント下がり2.5%となりました。日本は今年の成長率予想が0.1ポイント引き上げられ、1.1%となりました。来年は0.9%に据え置かれました。

 

■アジアでは、まず、中国について、IMFは今年の成長予想を6.6%に据え置き、来年を0.2ポイント引き下げて6.2%としました。関税の影響は、今年ではなく来年により強く表れるとの予測となっています。

 

■その他のアジア諸国は、インドは18年度は変更なく、19年度が0.1ポイント下方修正にとどまった他、アセアン主要5カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)も同様です。これは、アジアでは他の新興国よりも経常収支が健全で、資金流出が比較的抑えられていることが背景にあると見られます。

 

IMFによる世界経済成長見通し(アジア・パシフィック主要国の実質GDP成長率)

(注1)各年の修正幅は2018年7月時点の見通しとの比較。オーストラリアは2018年4月との比較。 (注2)ASEAN5はインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの5カ国。インドは年度。 (出所)IMFのデータを基に三井住友アセットマネジメント作成
(注1)各年の修正幅は2018年7月時点の見通しとの比較。オーストラリアは2018年4月との比較。
(注2)ASEAN5はインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの5カ国。インドは年度。
(出所)IMFのデータを基に三井住友アセットマネジメント作成

 

 

貿易摩擦の影響試算:これ以上の激化は成長鈍化に

アジア市場では、2段階目の織り込みが進んでいる模様

 

■IMFは今回、貿易摩擦について5段階の分析を行っています。

 

➣ 現在既に実施されているものと実施すると発表されているもの(今回の予想に反映ずみ)
➣ 更に米国が中国からの輸入の2,670億ドル相当に25%の追加関税を課し、中国も報復を行う
➣ 更に米国が自動車やその部品などにも25%の追加関税を課し、相手も報復を行う
➣ これらを受けて企業のセンチメントが冷え、投資が控えられる
➣ 更に金融市場の混乱が企業活動に影響を及ぼす

 

■最悪のシナリオでは、世界経済は現在の予測から0.7ポイント下方修正され、成長率は3%程度に落ち込むと見られます。これは「チャイナショック」が起こった15年の3.5%や、16年の3.3%を下回るもので、貿易戦争が企業行動にブレーキをかける事態になると、かなりの影響が経済に及ぶことが示唆されています。

 

■現在のアジア市場では、二つ目のシナリオが実現するとの見方が高まっています。この場合、中国の来年の成長予想は今回の見通しから0.6ポイント引き下がり、5%台に落ち込むと見られます。逆の見方をすると、現在の中国などアジアの通貨や株式の下落は、この見方が織り込まれつつあると考えることが可能です。

 

(2018年10月10日)

 

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2018年10月3日 吉川レポート(2018年10月)新興国からの資金流出の特徴と見通し
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調査部は、総勢20名のプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの高度な分析を行い、それぞれの見通しを策定、社内外に情報発信しています。三井住友アセットマネジメントの経済・金融市場分析面での中枢を担っている他、幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、活動する機会や媒体は多岐にわたります。年間で約900本の市場レポートを作成し、会社のホームページで公開中(2016年度実績)。

※三井住友アセットマネジメントと大和住銀投信投資顧問は4月1日に合併し、三井住友DSアセットマネジメントになりました。

著者紹介

連載【デイリー】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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