自社の都合だけで販売を思い切るのではなく、人気業種、周辺情報などに目を配ることで、理想的な売り時を見極めることができます。ここでは、売り時を決断する際に、どのような点に注目するべきかをご説明します。

自身や自社の都合以外に、業界の人気なども注視を

事業の業種・業態にはその時々の流行り廃りがあります。 
 
例えば高度成長期にはスーパーマーケットのような業態が長く健闘しましたが、消費が細分化・専門化してきた昨今は、「アウトレット」「100円均一」「セレクトショップ」のように専門店が求められるようになってきています。 
 
またバブル期には不動産販売業者、携帯電話の普及期にはその販売代理業が幅を利かせましたが、景気が後退し、携帯電話の普及が一巡した現在では、過当競争で振るいません。 
 自社内部の事情から最適なタイミングがあるのと同様に、自社とはいわば関係のない社会情勢や時流から見た際のタイミングもあることを知っておいてほしいのです。 

 

 

 
そのうえで、「環境、医療、少子高齢化、新エネルギー」といった息が長くて関連分野の裾野の深そうなテーマに注目すべきです。
 
例えば、「育児分野に企業が本格参入する1~2年後に、わが社の社員用の託児施設が注目されるはずだ」。こういった読みが生まれてくるはずです。 
 
そして自社内部の事情と外部の事情が一致したそのときが、理想的な売り時になるのです。 

自社の周辺地域情報にも目配りする

日本全体に共通する社会的なテーマのほか、地域の事情も見ておく必要があります。

自社保有地や工場周辺の都市計画はどうなっているでしょう。 
 大規模な再開発や企業誘致があれば、不動産価格は高騰し、飲食など小売業にも商機です。 
 
逆にシャープの亀山工場の縮小撤退ではありませんが、工場労働者が一気に減ってしまい、さらに周辺の下請け製造業や賃貸業、小売業などが廃れてしまうこともあります。 
 
自社周辺の情報は、自治体に問い合わせるなりして、よく把握しておくとよいでしょう。

M&Aの成立には最短でも3カ月、通常は半年~1年

以上のように、オーナー社長自身や自社で行える準備を重ね、時流も読み、売買タイミングを見計らっていくことになります。加えて、事務的な手続きにも日数を要することを理解しておきましょう。 
 
M&Aは、インターネットで株を売買するようにはいきません。アドバイザーを選び、買い手の候補を紹介してもらい、条件の交渉を行う。こうしたプロセスを考えると、M&Aの成立には最短でも3カ月はかかります。 
 
現実的には売り手と買い手の交渉は何度もアドバイザーが調整し、落としどころを探るのが通例です。一般的には交渉開始から売買終了までには、半年~1年はかかると見込んでおく必要があります。 

 

 

本連載は、2013年7月2日刊行の書籍『オーナー社長のための会社の売り方』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

オーナー社長のための会社の売り方

オーナー社長のための会社の売り方

編著 GTAC

幻冬舎メディアコンサルティング

オーナー社長にとって、会社人生の最後で最大の仕事こそが事業承継。 創業以来、長年に渡って経営してきた会社を次代に残す。また、従業員の雇用を守りつつ、買い手企業の新たな資本の元で、会社の価値をさらに高めていくこと…

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