資産を分割できるほか、処理の自動化が可能
BULLヒロです。「3分で分かる仮想通貨」という、仮想通貨情報サイトを運営しております。
仮想通貨市場の将来を予測し、今後の投資に役立てていただくための情報をお伝えしていきます。今回のテーマは、資産の所有権などを管理するトークン「ABT」のメリットです。
仮想通貨は、世界的には「Crypto currency(暗号通貨)」と呼ばれ、あくまで通貨としてのイメージが強いブロックチェーンプロダクトですが、通貨以外の用途にも注目が集まっています。
今回は、その一例として「Asset-Backed Token」を紹介します。
Asset-Backed Token(以下ABT)とは、資産の所有権やその譲渡をブロックチェーン上に記録し、管理することを目的としたトークンです。
住宅や金(ゴールド)などの実態資産の管理に用いて不正改竄を防止した上で、権利の単位を細分化し、流動性を持たせることができます。
ABTは、今まで資産の移動の際に必要だった仲介業者をブロックチェーンで代用する取り組みです。仲介業者がいなくなる、または作業量が削減されるということは、その手数料が下がるのはもちろんですが、資産商品としてさらに利便性が高まる可能性があります。
◆大きな資産を分割して管理・譲渡できる
たとえば、絵画の所有権については、1人のオーナーに対して1つの現物がある状況が一般的です。絵画は完全な複製が困難で、一度発行された物が再発行されることはありません。そのため、将来的な資産価値の上昇が期待でき、大きな資本を持っている資本家には非常に好まれる資産です。
しかし、本当に価値があり今後も値上がりが期待できる絵画は1枚の価格が高く、一般的には手の出せないものでした。ここでABTを活用し、株式のように保有割合に応じた管理の議決権を持たせるようにすれば、他のオーナーの持ち逃げを心配せず、安心して共同購入をすることができます。
※議決権上位者が正しい保管ができるかという問題については、たとえなので割愛します。
◆インカムゲインの処理を自動化できる
株式のように所有資産の運用による配当がある場合、その配当の配布処理をスマートコントラクト(検証、執行、実行、交渉を自動化するプログラム)で自動化することができます。また自動化することで、累積分の定期処理だったものをリアルタイム処理にすることも可能です。
たとえば、あるビジネスの所有権を分割して持っている場合、その店の利益に応じた割合をリアルタイムで受け取るような契約や、その自動処理も可能ということです。プラスのインカムゲインだけでなく、赤字などのマイナス処理もトークンの自動譲渡などで自動化できると、より面白い契約の仕組みができるかと思います。
※このケースについては、利益の整合性などブロックチェーン以外のオンライン上のデータソースの真偽判定が課題です。
実物資産との「相対的な価値評価」が課題に
ABTについては、実物資産とトークンの価値が完全にイコールになり、その価値自体がトークン側で管理されることが求められます。しかし、その現物が現時点でどの程度の資産価値があるのか、正しく評価する方法がないという点が課題です。
これについては、Tether社が発行したUSDTというトークンでも、このような問題が何度も取りざたされています。
USDTは米ドルとペッグしており、Tether社が保有する米ドルと発行しているUSDTが同数であり、いつでもUSDTを全額米ドルと換金できるという設計から、常に1USDT-1ドルという価格を維持しています。
しかしTether社には、この価値の根拠になっているUSDT発行分の米ドルが保管されていないのでは、という疑惑があり、その保有米ドルとUSDTが完全に一致しているのかを確認する手段はTether社の公式発表の他にないため、問題視されています。
このように、実物資産が本当にトークン通りの価値であるのかを確認するには、第三者機関が必要であり、その時点でABTの利点である非中央集権による信用保証の分散処理は叶わないわけです。
また、評価時より価値が下がる可能性もあります。たとえば、絵画の価値とペッグしたとしても、現時点でその絵画に傷がないとも限りません。
このような懸念があるため、ABTに関しては実物資産と連動するような商品は、現時点では投資対象としては危険な存在です。現時点でABTを投資対象とするのであれば、オンライン上で資産管理が完結する、たとえばゴルフ会員権のようなものが望ましいでしょう。