今後の動きが読みにくい「マネーロンダリングの防止」
BULLヒロです。「3分で分かる仮想通貨」という、仮想通貨情報サイトを運営しております。
仮想通貨市場の将来を予測し、今後の投資に役立てていただくための情報をお伝えしていきます。今回のテーマは、仮想通貨市場の規制はプラスかマイナスかです。
皆さまご存じの通り、「資金決済法」が改正され、いままでルールがなかった仮想通貨関連事業も法の下で管理監督がされることになりました。仮想通貨に投資をしている方にとっては、国内ICO規制など実感値のある法改正だったと思いますが、規制にはプラス面とマイナス面の両方が必ず存在し、プラスのバランスが大きければよい規制といえるかと思います。
今回は、仮想通貨市場の規制はプラス面とマイナス面のどちらが大きいのかについて考えたいと思いますが、このような大きなテーマは情報の限られた個人の意見はどうしても偏りが出てしまうので、あくまでも特定の個人の意見としてご覧ください。
細かくあげていくと長くなってしまうので、最も影響の大きい点だけ列挙しますと、「仮想通貨交換業者の認可」「マネーロンダリングの防止」「国内ICOの禁止」の3つの影響が大きいかと思います。
影響の大きい3つの項目のなかで、規制内容の線引きが現在進行形で変化しており、今後の動きも予想しにくいのが「マネーロンダリングの防止」です。
そもそもマネーロンダリングは、いわゆるブラックマネーを洗浄する事を目的としています。特性上、その洗浄された資金は、さらに悪い資金の流れを生み出すため、規制されて当然というのが筆者の意見です。
しかし、その余波が関係のない一般投資家にまで波及してきています。
ここ最近、仮想通貨の国内取引所でKYC(Know Your Customer:本人確認)を終えていない口座の一時凍結や、未送信アドレスへの送金停止などが行われています。KYCを終えていない口座の凍結に関しては理解できるのですが、未送信アドレスへの送金停止については、送金済だから信用できる先と判断できるものではないので、与えられている不便の割にあまり効果があるようには思えません。
マネーロンダリングは、それこそ大規模な資金洗浄でなければ、当事者も行う意味がないでしょうから、銀行の対策と同様に、1,000万円を超える送金の場合は送金アドレスの提出が必要といった量の規制が効果的なのではないでしょうか。
筆者が心配しているのは、このような非合理な取引によって「とりあえず規制」が増加し、「よく分からないし、面倒だから全部ダメ!」といった一律排他的な規制が動いて、また日本がガラパゴス化しないか心配する次第です。
ICO市場だけでも、国家の経済効果としてはマイナス!?
本題の仮想通貨市場の規制はプラスかマイナスかについてですが、そもそも規制とは問題のある行いを抑制するために作られるものなので、経済的観点のみで良い悪いを判断するものではありません。しかし、同じような目的を達成する規制でも、その内容によって副作用であるマイナス面の抑制もできるはずです。
今回は、あくまで国家の経済効果としてプラスかマイナスかについての持論ということになりますが、さまざまな根拠を提示するまでもなく、ICO市場だけでも明確に経済効果はマイナスだと考えています。
2017年に1,200%近い成長率で、年間3,000億円を超える規模まで発展したICO市場ですが、日本国内はICOの規制が入り国内の実績は0件です。
対して、2018年のグルーバルのICO市場はどうなっているのでしょうか? ICO市場については正確な調査データがないため推計値になりますが、今年(2018年)は2兆円を超すともいわれており、日本以外のICO市場は下火でもなく非常に活発なのです。
今回のICOの一律規制は、ICOにより調達された資金が国外に流出し循環するだけでなく、人材やアイディアの流出も顕著に発生しています。
筆者はITベンチャーの事業開発を本業としており、知り合いのなかに2ケタほどブロックチェーン関連のエンジニアがいるのですが、昨年(2017年)彼らと話していた際は国内マーケットに向けたサービスリリースを検討している方がほとんどでした。いま彼らにコンタクトを取ると、ほとんどが国外のブロックチェーンスタートアップで働き、国内に残留していてもビジネスのターゲットは海外に向いています。本来は国内で生まれていたであろう多様なサービスが続々と海外に逃げている姿を見ると、マイナスとしか感じることができません。
さて、ここまで仮想通貨市場に対する規制は国家の経済効果としてはマイナスであるという話をしてきましたが、今回の規制によるマネロン対策、個人投資家の保護という面では一定の成果を得ていると思います。個人投資家がしっかり保護された上で、今後の発展につながる施策改善が行われればこの上ありません。すでに引いたルールに固執せずに、柔軟に線引きを考え直していただきたいものです。