導入の障壁は価格変動と会計処理
BULLヒロです。「3分で分かる仮想通貨」という、仮想通貨情報サイトを運営しております。
仮想通貨市場の将来を予測し、今後の投資に役立てていただくための情報をお伝えしていきます。今回のテーマは、仮想通貨決済が広く普及する日は来るのかです。
まず、仮想通貨決済が普及する日は来るのかについてですが、ビットコインの決済導入店舗は国内で5万店舗を超えており、大手ではビックカメラやHISなどを筆頭に普及は着実に進んでいます。しかし、国内の商店は160万店舗以上あるため、導入率はまだ高くないといえます。
今回は、普段立ち寄る店舗、いわゆる一般商店のどこに行っても普及しているような状態は来るのかを考察したいと思います。
実店舗で仮想通貨決済を導入する上での障壁は、実は既存の決済サービスよりはるかに低いです。まず、決済処理のためにPOSや管理システムを導入すると、1店舗あたり数十万円の投資コストがかかります。さらに、クレジットカード決済を導入する場合は、加盟店手数料が1%〜5%の範囲でかかり負担になります。現在、iPadで完結する決済サービスもあり、決済システムの導入コストは下がってきている状態ではありますが、運用にはそれなりのコストを支払う必要があるのです。
対して、仮想通貨決済についてはウォレットのQRコードを印刷して貼り出すだけです。手数料についてもユーザーがほんの少額負担するだけで済むため、店舗側の決済コストは圧倒的におさえられます。
このように、導入とランニングコストが低いにも関わらず、導入が進まない最大の障壁は価値の変動と会計処理です。企業会計基準委員会『資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い』には、保有する仮想通貨について、活発な市場が存在する場合、市場価格に基づく価額をもって当該仮想通貨の貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理する、とあります。価値が下がった場合は、当然、収益の下方修正となるため、下方修正を嫌う上場企業や利益率の低い零細企業で嫌われます。
会計処理についても経験のある経理担当者も相談先も少なく、初期導入の障壁になっています。
障壁をくぐり抜け一気に普及した「銀聯カード」の例も
このような状況から仮想通貨決済の導入は踊り場に来ており、導入は鈍化している状況です。しかし、過去にも似たような障壁をくぐり抜け、一気に普及が進んだ事例として「銀聯(ぎんれん)カード」(UnionPay)があります。
銀聯カードは中国で最も普及している決済代行銘柄ですが、2012年頃まで日本国内での普及は観光地の商店などの一部までに留まっていました。しかし、2013年に日本への訪日外国人が初めて1,000万人を超えたことをきっかけに、インバウンド消費に注目が集まりました。そこで、訪日中国人の主要な決済手段である銀聯カードを取り入れ、今では全国の電気店・ドラッグストア・コンビニどこでも取り扱っています。現在は、中国国内のスマートフォン決済がブームになっているため、「WeChatPay」「Alipay」も日本国内での普及が進んでいます。
小売などのリテール企業は、必ず競合他社の動向調査をしており、1社が新しいシステムを導入し、売り上げをあげていると追随する特徴があります。このような商環境から、現在は多様な障壁を理由に導入を見送っている各企業も、ひとつのきっかけで一斉に導入してくる可能性は大いにあります。
仮想通貨については、国をまたいだ共通通貨として「トラベラー」の利用や、値上がり益による高額商品の購入などが相性が良いと思いますが、その特性と関係なくても店舗数の多いチェーン企業の導入は小売業界への波及効果が高いです。大手コンビニエンスストアが仮想通貨決済を検討しているとの一部報道もあるため、今後の動向に注目です。きっかけさえ掴めば、一般店への普及はタケノコを生やすようにスピーディに進むので、筆者は楽観的な姿勢で見守っています。