年間20兆米ドルが対象に…「貿易金融」とは何か?

投資信託などにも組み込まれている、様々な種類の「オルタナティブ投資」。しかし、初心者には理解が難しいものも多く、リスクが見えづらいのが現実だ。そこで本連載では、オルタナティブ投資のプラットフォームを提供するTransAsia Private Capital Limited.(トランス・アジア)の創業者のひとり、ジェフリー・チャンドラ氏に、同社が中心として手がける「貿易金融」のリスクと特性について伺った。第1回目のテーマは「貿易金融が必要とされる理由」。聞き手は、ニッポン・ウェルス・リミテッド(NWB/日本ウェルス)のダイレクター幾田朋彦氏である。

原材料・部品の輸出入…支払いまでの資金需要は大きい

幾田 「貿易金融」について、どういった種類の金融業なのかを教えてください。

 

ジェフリー ファンドマネージャーの観点から見ると、「貿易金融」はプライベート・デット(流通市場が限られる流動性の低い債券やローンのこと)の一種として分類されます。

 

TransAsia Private Capital Limited.(以下、トランス・アジア)では特定の貿易関連取引に必要な資金を、サプライヤーに提供しているのですが、その取引の性格上、どちらかといえば短期的な資金使途に対して貸付を行うことが多いのが特徴です。

 

世界の貿易量は非常に大きく、金額にして年間20兆米ドルを超えます。取引されるものも幅広く、原材料から完成品まで、私たちが無意識のうちに日々使っているあらゆるものは、こうした国際貿易取引の末に手元にたどりついているのだとわかります。

 

幾田 貿易関連取引のどのあたりに資金需要があるのでしょうか? サプライヤーに貸付を行なっているとのことですが。

 

ジェフリー たとえば、ある携帯電話の場合、1台の端末を作るために世界中から100以上の部品を集めて生産が行われています。これらの材料は異なる場所で別々の生産工程を経ることが一般的ですが、商品の受け渡し時だけでなく、製品が完成する前に手元流動性が必要となる場合があるため、細かいものまで全部含めると、必然的に大きな資金需要が発生します。

 

貿易と一言でいっても、取引される品物の範囲は非常に広いので、取引案件あたりの規模が非常に小さいもの、コンテナサイズのもの、果てはタンカー丸ごとまで様々です。原油や鉄鉱石を含む原材料の輸出入は、特定の契約の下でタンカーが毎週、あるいは毎年移送に使われることがありますが、このような大規模でかつ周期の異なる資金需要に一様に応えるのは簡単ではありません。

サプライヤーに貸し出し、バイヤーから元利金を回収

幾田 貿易にかかる様々な資金需要に応えるのが「貿易金融」とのことですが、これをファンド化した際、投資家たちにとっての魅力は、どのような点がありますか?

 

ジェフリー 資金の貸し手として、投資家に付加価値を提供するには、世の中にいる数多の借り手を注意深く選別し、有望な投資機会に絞ってローンを実行する姿勢が何より重要です。 トランス・アジアが最初に立ち上げたファンドは、原材料の出荷に伴う非常にシンプルなローンに投資対象を絞りました。

 

簡単に仕組みを説明すると、まず、既に船舶に積み込まれている、あるいは積み込まれる準備ができている原材料に対して、トランス・アジアのファンドがサプライヤーに代金を支払います。それを受けて、サプライヤーは原材料に対する所有権をファンドに譲渡します。原材料は、30日から75日ほどの期間をかけてA地点からB地点まで運ばれます。原材料が目的地まで運ばれ、バイヤーがそれを受け取ったあとに、所有権を持つファンドにバイヤーが代金を支払う、というごくシンプルな形の貿易金融です。

 

ファンドがサプライヤーに対して支払ったお金は、実はローンとして貸し出している資金で、貸手であるファンドはバイヤーから元利金を回収し、余ったお金はサプライヤーに対して還元します。これは貿易業者間でよく用いられるごく普通の短期資金調達手段の1つです。

 

幾田 貨物(原材料)の引き取り、海上運搬から引き渡しまで、所有権を担保にサプライヤーに資金を貸し付けし、バイヤーから回収する仕組みですね。

 

ジェフリー はい。もう1つ、原材料と完成品の分け隔てなく、特定のバイヤーへの配送手配が完了している取引に対して資金を融通する形態もあります。

 

大手のバイヤーとの貿易ではサプライヤーに対する代金の支払いが、品物の受渡しよりもかなり後になることは珍しいことではありません。 一般的に、こうした取引では品物の受渡しから30〜120日程度の期間をおいて支払われ、その待機期間はバイヤーの規模が大きくなるほど長くなる傾向があります。

 

トランス・アジアは、この完了済みの取引、つまりサプライヤーにとって後日の支払いが約束されている売掛金、バイヤーにとっては支払い義務のある買掛金を担保に、サプライヤーに対して資金を貸し付けます。貸し付けるのはサプライヤーに対してなのですが、先ほどの例と同様、元利金の回収はバイヤーに対してもともとサプライヤーが保有していた代金の請求権を提示することで行います。

 

この金融取引の面白いところは、貸付先が中小規模の貿易業者なので、金利はそれに見合った水準を要求できるのに対して、元利金の回収は規模が大きく、信用力の固い大手のバイヤーであることが多いので、リスクを比較的小さく抑えることができることです。

 

もちろん、サプライヤーとバイヤーの両方が中小規模であるケースもありますが、そのような場合はローンに対して信用保険を掛けることによってリスクを軽減することもできます。

 

 

 

ジェフリー・チャンドラ

TransAsia Private Capital(トランス・アジア・リミテッド) 共同創業パートナー

 

幾田 朋彦

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) ダイレクター

TransAsia Private Capital(トランス・アジア・リミテッド) 共同創業パートナー

1998年から2013年まで、預り資産規模で15億米ドル、23年以上の実績を誇るアジア最大かつ先駆的なアジアの債券マネージャーの1つであるインカム・パートナーズ・アセット・マネジメント社の元パートナーとして アジア債券市場(プライベート・デット、スペシャル・シチュエーション、その他債券型ヘッジファンド戦略を含む)の運用を手掛ける。同社の前はINGベアリングスやチェース銀行の投資銀行部門にて当時のアジア地域ではまだ珍しかったハイイールド債券の組成に従事。1991年に米国バークレー校を卒業。2001年からCFA協会認定証券アナリストの資格を保有。 

著者紹介

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) ダイレクター

2006年より三菱UFJモルガン・スタンレー証券(入社当時は三菱UFJ証券)にてリテール営業、株式、仕組債、商品戦略等の幅広い業務に従事。2011年から2012年にはニューヨークのモルガン・スタンレー・ウェルスマネジメント(当時はモルガン・スタンレー・スミス・バーニー)でマネージド・アカウントをはじめとする米国の富裕層ビジネスの現場で経験を積む。2014年、現職であるNippon Wealth Limitedの商品およびビジネスデベロップメントの責任者として就任。国際基督教大学卒。
WEBサイト https://jp.www.nipponwealth.com/

著者紹介

連載オルタナティブ投資のジャンルで注目集める「貿易金融ファンド」の最新事情

本稿は、情報提供を目的として、インタビュー時点での経済データ等をもとに個人的な見解を述べたもので、TransAsia Private CapitalおよびNWBとしての公式見解ではありません。また、特定の金融商品への投資の勧誘を目的とするものではありません。

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