▲トップへ戻る
子供たちを困らせる遺言とは?よかれと思って大迷惑…な話

本連載では、相続対策のスペシャリストとして知られる内藤克税理士に、知っておくと得をする「相続&税金」の話をタイムリーな話題と共に、ご解説いただく。第2回目のテーマは、「子供たちを困らせる遺言とは?」。

子供たちに内緒で「遺言」を作成する親が増えている?

超高齢化社会の日本。それを反映するかのごとく、最近では「相続対策」や「遺言」など、相続に関するビジネスが盛んです。大きなお金に関わることですので、それなりの年齢になってくると、親子共々、気になってくるのは当然のことともいえます。

 

それぞれの家族に、それぞれの事情がありますが、意外と多く見られるのが、親が子供たちに内緒で遺言を作成しようとするケースです。

 

秘密のつもりはなく、ただ伝えていないだけの場合もあるでしょう。しかし、子供は、親が内緒で相続対策を行っていることに気づいても、「教えてくれるまで待とう」と気遣ってしまい、なかなか話を切り出すことはできません。こんなとき子供たちは、自分たちが揉めないように準備してくれていると思ってはいても、一方で、コソコソ動かれるのは気持ち悪いとも感じてしまうものです。

 

相続に関して、いくら専門家に任せていても、専門家が家庭の事情をすべて把握しているわけではありません。本記事で「子供たちを困らせる遺言」にはどのようなものがあるか、具体的に見ていきましょう。

親族外への遺言 「もしかして…愛人関係!?」

故人が生前にお世話になった人へ遺言を書くことはよくあります。ただし子供たちにとって、面識がなかったり、まったく話を聞いたことがなかったりする人である場合、その人あての遺言を見せられたら、違和感を覚えることになるでしょう。

 

場合によっては「愛人関係?」「遺言を無理やり書かせた?」「財産目当てに近づいた?」と疑心暗鬼になることもあります。

 

相続争いは「自分がどれだけもらったら満足か?」という絶対額ではなく「他の相続人より少なくないか?」という相対額が原因となって勃発することが多いので、ここでトラブったらお世話をした人へうまく財産も残せませんし、子供たちには余計な心配事を残します。

 

生前に子供たちへ告白できない事情があるならば、いきなり「遺言で告白」するのではなく、死後に友人を通じて語ってもらうとか、別にお手紙を書くなどの工夫が必要です。遺言書には、追加で自分の気持ちを表現する「付言事項」もあるので、ここで説明するのもよいかもしれません。

偏った遺言 「遺留分の減殺請求」が行われる可能性も

遺言に何を書くのかは基本的には自由ですが、相続人には「遺留分」といって相続が発生したときに財産を受け取れる最低限の権利があります。

 

この「遺留分」の計算には過去において贈与を受けた金額(特別受益額)なども含まれるため、特定の相続人に贈与や遺言が偏ってしまうと、他の相続人の遺留分を侵害してしまい、その侵された部分を戻せという「遺留分の減殺請求」が行われる場合があります。

 

とくに父親は家族とのコミュニケーションが不足している場合が多いため、残された家族の人間関係などをよく理解していない状況で遺言を作成してしまいがちです。子供たちが「お父さんは僕たちのこと何も分かっていなかったんだね」と、発見された遺言を無視して、別な内容の分割協議を行ってしまうケースもあります。

 

もちろん遺言を破り捨てることは禁じられていますが、自筆証書遺言の場合、第一発見者がその遺言を勝手に開封して、破り捨てたり、隠したりすると、誰もその遺言の存在がわからないというケースも生じてしまいます。

偏った遺言書を書いてしまうと…!?
偏った遺言書を書いてしまうと…!?

2通以上ある遺言 気分に任せて書き直していると…?

遺言書は書き換えが可能です。1通目と2通目で内容が異なる場合、重複している部分については後で書いたほうが優先されます。重複していない部分については1通目も有効となります。

 

そのため気分に任せて何度も書き直していると、最終的には全部つなぎ合わせてみないと全体でどのような内容になっているのか把握できないという事態が生じてきます。専門家の指導を受けずに作成した自筆証書遺言などは、不備が多かったり、適切に保管されていなかったりするので、残された相続人は苦労することになってしまいます。

法人への遺言 法人には相続税の納税義務はないが…?

親が会社を経営している場合、その会社へ遺贈をすれば「相続税がかからないのでは?」と質問される場合があります。

 

たしかに法人には相続税の納税義務はありません。法人の収益(益金)となるだけの話です。また、法人税の計算上、欠損金は9年間繰り越すことができますので、これを使えば納税ゼロにすることも可能です。相続人が取得したあとに法人に寄付すると、相続税と法人税の両方が課税されますが、遺言があれば直接法人へ財産を移転することができるのです。

 

注意しなければならない点は、遺贈する財産が不動産だと法人に対してタダで譲渡したことになり、譲渡所得税がかかってくる点です(みなし譲渡)。またその遺贈により、株主たちの保有している株価が上昇するため、株主への相続税の問題が生ずることもあります。

 

いろいろな事情で法人に財産を移転したい気持ちはわかりますが、税務上のフォローを完璧にしていないと困ったことになるでしょう。

 

 

 

内藤 克

税理士法人アーク&パートナーズ 代表社員/税理士

著書に『残念な相続』(日本経済新聞社)など

税理士法人アーク&パートナーズ®️ 代表社員
税理士

弁護士会、銀行、証券会社、生命保険会社、後継者団体などで多数講演
日経マネー、マネージャパンなどの金融誌への執筆多数
著書に『残念な相続』(日本経済新聞社)、『会社の節税をするならこの一冊』(自由国民社)
日本初のiPhone iPad向け相続アプリ「スマート相続診断」リリース
政治資金規正法に基づく収支報告書監査
ハワイと日本の専門家で構成する「ハワイ相続プロジェクト」代表

著者紹介

連載知っておくと得をする「相続&税金」の話

本連載に記載されているデータおよび各種制度の情報はいずれも執筆時点のものであり(2018年8月)、今後変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

 

 

相続・事業承継セミナーのご案内 参加無料 主催:カメハメハ倶楽部

相続税の税務調査の実態とその対応策

~資産税専門のベテラン税理士が明かす税務調査の具体的な対応法と、将来の調査まで意識した万全な相続税対策の立て方

講師 服部誠 氏
日時 2018年10月31日(水)
内容

・ある日突然やってくる税務調査の実態

・税務調査の種類と違い

・税務調査は断ることができるか

・申告書の提出から税務調査の選定までの流れ

・どんな人が調査に選ばれるか

・調査当日の具体的な内容

・税務調査の最大ポイント

・税務調査まで意識した万全の相続税対策

会場 幻冬舎本社ビル内 セミナー会場

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧