ASEAN最大の貿易国で近隣諸国と取引も多い「タイ」
東南アジアは非常に広い地域なのだが、我々は今回カンボジア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの5つの国に絞ろうと思う。この5つの国はどれも現在エキサイティングな可能性と物価が程よくバランスとれているからだ。シンガポールには好機がない?いや、好機はある。ただ投資の観点では前述の5つの国を見て行く。他の東南アジアの国も取り上げる時がくるとは思うが、今回はこの5カ国に焦点を当てて行きたい。
この国々の通貨はとりわけUSドルと相対的な動きを見せている。要因は様々だが、この何年かはドル高といった結果だ。だが重要なポイントとして、カンボジアで開発者や小売店と取引をする際、両者ともドルでの支払いが可能であり、喜んでそれに応じてくれるということがある。つまり観光客は外貨両替所に行かなくとも取引できるという訳だ。
この国々はASEANの近隣諸国と定期的に貿易を行ってきたため、その結果国同士の結びつきが強く、また安定している。我々が取り上げる5つのうち、なんとタイがASEAN最大の貿易国であり近隣諸国と最も多く取引を行っている。2位はシンガポールで、すぐ後をマレーシアとベトナムが追いかけ、フィリピンとカンボジアはかなりひき離されている。少し遅れをとっているからと言って景気が悪いわけではない。単にこの地域以外の国との貿易が盛んだったり、所得の流れが他にあるということも考えられる。
タイは輸出でも1位だ。その後にマレーシアとベトナムが来てフィリピンは再び4位、そしてカンボジアが5位となっている。面白いことに、輸入に関しては順位の並びが同じになっている。貿易収支で先頭をいくのはマレーシアだ。ベトナムが後続し、そしてフィリピンとカンボジアだ。この両国は赤字を計上している。
東南アジア諸国は日本への輸出を行っており、群を抜いているのはタイだ。その次に、ベトナム、マレーシア、フィリピン、カンボジアの順となっている。タイは日本製品の最大輸入国でもある。
[図表1]2017年(1-12月累計)ASEAN対日貿易統計
最も直接投資の多い国はベトナム、次いでマレーシア
この地域には外国から多額の投資が舞い込んでいる。その投資額はASEAN外から980億USドル、ASEAN内からは220億USドルに上る。ASEANコミュニティが投資の面でも自らをサポートしていることは良い指標となりそうだ。この5カ国のうち、最も直接投資の多い国はベトナムで、そのすぐ後ろにマレーシアがいる。それに次ぐのはタイ、フィリピン、そしてカンボジアだ。
[図表2]対ASEAN直接外国投資トップ10
[図表3]2016年 対ASEAN各国直接外国投資額
ここで抑えておきたいのは、ASEANの報告によると直接投資(FDI)を国単位で見た場合、そのほとんどが日本からなされているという点だ。日本からの直接投資は全体の14.5%を占め、その投資額の割合はASEAN内およびEU圏に次ぐ。
一国の技術能力の高さは通信やインターネット接続によって情報へアクセスできているかどうかで分かる。インターネットの浸透率でいくと、シンガポールだ。次いでタイ、マレーシアとなっている。
[図表4]2017年12月時点 インターネット利用者(ブルネイ除く)
東南アジアはとても豊かで興味深い地域だ。天然資源に恵まれているし、人々はこの上なく歓迎してくれる。可能性をまだまだ秘めている。また、ある専門家の意見が正しければこの地域の未来は確実に明るい。
ここ数十年は特に暴動や政治的不和といった試練もあったのは確かだが、我々が注目している地域や5カ国については概して政治情勢も経済も安定している。近年では開発が進み、新しい産業やサービスが現地の人々にチャンスを与えている。またそのおかげで購買力も増加している。
投資が進む今、あなたも東南アジア諸国の成長に携わることを考えてみてはいかがだろうか。
本章(本書『初心者のための東南アジア投資ガイド2018 プロが教える5カ国の不動産投資環境(タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム、カンボジア)』、第1章)の冒頭で我々は東南アジア地域を太陽が輝く場所と述べた。それは間違いない。だが間違いないことがもう1つある。それはこの地域一帯の歴史から分かるように、1度沈んだ太陽が必ず上って来る場所であるということ。例え一国が低迷を経験しても、再び立ち上がるのに長くはかからないだろう。政治情勢、あるいは体制までもが変わることはあり得るが、いまだ共産主義のベトナムを見ても分かるように、特に貿易や投資に関して言えば、ある政治体制になったからといって世界との門戸が閉ざされるとは限らない。刺激的で前途有望な東南アジア。仮に減速したとしても、持ち直すのは時間の問題だ。一度その目で確かめてみてはいかがだろう?