2019年まで3.9%成長が続く見通しだが成長ペースにばらつき
2018年は先進国・地域で日本、ユーロ圏、英国が下方修正
■7月17日に発表された国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しによれば、実質GDP成長率は2018年、19年共に3.9%と、18年4月の見通しが据え置かれました。但し18年の見通しは、先進国・地域では、日本、ユーロ圏、英国の成長率が4月時点から下方修正されました。一方、米国は減税と政府支出の増加により堅調さを維持するとの見通しで、先進国・地域間で成長ペースがばらつく予想となっています。
新興国・地域全体は高成長が続く見通し
原油価格の動向などで明暗が分かれる
■新興国・地域では、中国の見通しに変化はありませんでした。しかし、インドが18、19年共に下方修正、ASEAN5も19年が下方修正となりました。ラテンアメリカもブラジルの18年、メキシコの19年が下方修正です。地政学的な緊張などから石油価格が上昇したことで、ロシアや中東はプラスの効果を得ましたが、石油輸入国のインドには逆風です。また、ラテンアメリカでは、大統領選挙などが不確実性を高める要因となりそうです。
貿易摩擦の激化と政治的な不確実性の高まりに警鐘
■IMFは、世界経済の成長にとって最も大きな脅威は貿易摩擦が激化するリスクと指摘しました。貿易摩擦が激化すれば、センチメントや資産価格、投資に負の影響が生じます。米国の需要の伸びが比較的大きいため、世界の経常収支の不均衡は拡大することになります。
■IMFは、貿易摩擦が激化し、企業のセンチメントが悪化した場合は、世界のGDPが2020年までに現在の予測値を0.5%下回る可能性がある、と指摘しました。
■また、IMFは、4月時点に比べ、移民政策や財政ガバナンス、欧州の政治的な不確実性の高まりなど他のリスクも顕著になっている、と指摘しました。こうした不確実性に対し、金融市場は概ね油断しているように見える、と警鐘を鳴らしています。
■このような不確実性が高まる中、IMFは、経済成長率を中期的に支えていくためには、改革を通じた潜在成長率の底上げ、財政の再構築、金融政策の慎重な運営が必要と指摘しています。
IMFによる世界経済見通し(実質GDP成長率)
(2018年07月18日)
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