今回は、宇宙ビジネスは私たちの暮らしをどう変えるのか、探っていきましょう。※本連載では、株式会社スパークス・グループ代表取締役社長の阿部修平氏と、株式会社ASTRAX代表取締役の山崎大地氏が、「宇宙ビジネス」の可能性について前編・後編に分けて考察します。後編は山崎大地氏です。

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一般人が「数万円」で宇宙に行けるようになる!?

魔法使いの格好をした人が、ほうきで悠々と空を飛ぶ――。これは合成写真などではなく、現実のワンシーンです。民間宇宙飛行士の私が代表を務める民間宇宙ブランド「ASTRAX」は、このような無重力企画フライトを年間約4〜5回プロデュースし、宇宙に行きたいという人たちの夢を叶えています。

 

 

無重力でほうきを飛ぶ夢を叶える人たち
無重力でほうきを飛ぶ夢を叶える人たち

 

宇宙旅行に行くなんて、宇宙飛行士と大金持ちにしかできない話だと思っている人は多いでしょう。しかし2018年以降に限って言えば、それは間違ったイメージです。一般の人が1回数万円で宇宙に行けるようになる日も、そう遠くないでしょう。

 

今、宇宙ビジネスは、私たちの暮らしをどう変えようとしているのでしょうか。世界の最新情報をお伝えいたします。

 

■2018年は宇宙が一般に開かれる記念すべき年

 

宇宙飛行士ではない一般の人たちが、次々と宇宙に飛び立ちはじめる。2018年はそんな記念すべき年になるでしょう。

 

実際に、私が代表をつとめるASTRAXがチャーターする企画フライトの一便は、すでに満席になっています。搭乗券を持っているのは、いずれも一般の人たち。何年も前から予約を完了し、フライト日を今か今かと待っておられます。世界中に10万人もいるこうした人たちが、今年一気に宇宙に飛び立ちはじめるのです。

 

Blue Origin社の宇宙船New Shepardと筆者(ASTRAX提供)
Blue Origin社の宇宙船New Shepardと筆者(ASTRAX提供)

 

現段階では、1回のフライトにかかる料金は、約数百万円〜数千万円です。ただし、これは開発費の回収を見込んだ料金設定。回収を終えれば、1回数万円という安価で宇宙に行けるようになるのは、間違いないことだと思います。これなら、新幹線に乗るような感覚で宇宙旅行に出かけられますよね。

 

宇宙に行った人たちは、思い思いに宇宙空間を楽しみます。結婚式をする人がいれば、魔法使いの格好でほうきにまたがって飛ぶ人もいます。「宇宙に行けるのは、宇宙飛行士だけ」なんて、もう古い話なんですね。

 

先日アメリカのフロリダ州で、月旅行に使う新型ロケットの打ち上げ実験が行われました。現時点で世界最大級といわれるこのロケットは、2018年末に月への周回旅行に使用予定とのこと。つまり、今年中には月旅行が始まるのです。

 

最初は行ってすぐに帰ってくるというので、1週間弱の月旅行からスタートになるかと思います。それを何回もくり返すうちに、今度は着陸できるようになるでしょう。こうなれば、月に街ができる日も近いと思います。

宇宙船が「身近な交通機関」になる可能性も

■アメリカまで30分で行ける時代はすぐに来る

 

月に行ければ、火星に行ける日もすぐそこです。実際に今、イーロン・マスク氏率いるスペースXが、火星までたったの80日で行ける、100人乗りの宇宙船を開発しています。早ければ2024年、遅くとも2028年には実用化すると言われています。

 

 

ヴァージンギャラクティック社の宇宙船ユニティと筆者(ASTRAX提供)
ヴァージンギャラクティック社の宇宙船ユニティと筆者(ASTRAX提供)

 

そうは言っても、まだまだ「宇宙旅行なんて夢物語だ」と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。でも、最初の1人が宇宙に飛び立った瞬間、そんな意識は吹き飛んでしまうでしょう。あの有名人も飛んだ、知り合いの何々さんも飛んだ。そんなことが現実になるのが、2018年という年だと思っています。

 

誰もが宇宙に飛び立てるようになるということは、宇宙船が身近な交通機関になる可能性も秘めています。飛行機や電車に乗るような感覚で、旅行や出張の際の交通手段として、宇宙船を利用するのです。

 

イーロン・マスク氏が去年929日に発表した計画によると、宇宙空間を最高時速2万7,000キロで移動すると、ニューヨークから上海は39分、東京からロサンゼルスは32分、ニューヨークからパリは30分と、あらゆる都市の間をおよそ30分で移動できるようになるそうです。

 

これが本当に現実になれば、海外の都市へ行くのも、東京から横浜にいくような感覚です。国境や各国の通貨にも大きな意味はなくなり、パスポートもいらなくなるかもしれません。

 

そういう世界では、人種も国籍も入り乱れてきて、みんなが仲間です。誰が敵で誰が味方という区別もないので、戦争も自然と無くなるかもしれませんね。

 

今まで遠い存在だった宇宙がこれほどまでに身近になるというのは、人類の長い歴史の中ではじめてのことです。ひとつの地域、ひとつの国という話ではなく、地球全体が一気に革新し、“開国”する――。

 

そんな劇的な進化の一瞬に、私たちは生きているのです。ただ指をくわえて見ているだけでは、あまりにももったいないと思いませんか。

 

■ロケットや人工衛星だけが宇宙ビジネスではない

 

ASTRAXではこうした流れを汲んで、国内外の民間企業数百社との事業連携体を構築しつつ、宇宙に関わるさまざまな施設や設備を使って、独自の宇宙サービスを提供しています。

 

今年5月、ASTRAX関係者20人で参加した米ロサンゼルスでの国際宇宙開発会議では、民間宇宙サービス事業の発表でASTRAXの存在を世界にアピールし、主催者や参加者から高い評価をいただきました。その際、アマゾンのCEOで宇宙船開発会社ブルーオリジンの創設者でもあるジェフ・ベゾス氏とも面会し、今後の民間による宇宙開発の時代への貢献方法を語り合ってきました。

 

ブルーオリジン創設者でアマゾンCEOのジェフ・ベゾス氏と筆者(ASTRAX提供)
ブルーオリジン創設者でアマゾンCEOのジェフ・ベゾス氏と筆者(ASTRAX提供)

 

これまでの日本の宇宙ビジネスは、ものづくりが中心でした。ロケットや人工衛星、ローバーの開発は、その代表例です。もちろんこれらのハード面の事業は重要なものですが、「それを使って何をするか」というソフト面も、同じくらい、あるいはそれ以上に大切になります。

 

ハード面については、世界にも日本にも取り組む企業が多く、資金も潤沢です。しかし、サービスなどのソフト面については、それらが不足していると感じています。

 

携帯電話にしてもパソコンにしても、ハード面だけでなくOSやアプリなどのソフト面やサービス面も充実しなければ、ただの箱です。私たちはただ宇宙船や人工衛星を作っているだけではいけないのです。それをどう使っていくかが大事なんです。

 

残念ながら、アメリカをはじめとする海外のスピード感に比べると、国策で進められている日本の宇宙開発は大幅に遅れをとっていると言わざるを得ません。そのためASTRAXでは海外のインフラを積極的に使い、最先端のサービスを提供するという取り組みを、続けてきています。

 

これからは、本当にいろいろな立場の人が宇宙に行くようになるでしょう。たとえばコックさんが宇宙に行けば、宇宙船を一瞬にしてレストランにすることが可能です。

 

しかし、本当にお客様に満足していただけるサービスを実現するためには、宇宙空間でも地上と同じように料理ができるような環境整備も必要ですし、コックさんをその環境に慣らすための教育も必要です。また、料理を運ぶウェイターや、片付けをするスタッフや技術も必要になるでしょう。

 

お客様1人ひとりのニーズに合わせて、当社ではこうしたソフト面をきめ細かに整えていっています。100人いれば100通りのニーズにこたえられるのは、宇宙を熟知している当社ならではだと自負しております。

 

ASTRAXは民間の、まだまだ小さな企業です。でもだからこそ、従来の宇宙プロジェクトではなしえないサービスを提供できると思っています。宇宙ビジネスはもう、国家や大企業だけのものではないのです。

 

あなたなら、宇宙に行って何がしたいですか? 宇宙が急激に身近になった今、ぜひ考えてみてください。

 

 

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取材・構成/大住奈保子(株式会社Tokyo Edit)

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