前回は、相続物件こそ「オークション」で売却すべき理由を取り上げました。今回は、不動産オークションが「日本でメジャーではない」理由を見ていきます。

オークションが「解禁」されてから日が浅い日本

これまで不動産オークションの利点をいろいろ語ってきましたが、ではなぜ不動産オークションは、まだ日本ではメジャーな存在ではないのでしょうか。


まず日本では1999年まで、不動産をオークションで売買することが認められていませんでした。それまでは、オークションを開始するときのスタート価格と、最終的に競り落とす価格が違うことを、公正取引協議会が「価格の二重表示」とみなして禁止していたのです。そのため、オークションが解禁されてから日が浅いのです。なお、弊社の前身は、99年から不動産オークションをはじめていました。

なぜオークション開催には「ノウハウ」が必要なのか?

意外と知られていませんが、不動産オークションを開催するには、相当のノウハウが必要です。適切な入札者を集めて、オークションシステムを構築して、売主様とオークション概要を調整してと、どれも一朝一夕でできるものではありません。一方、最初から「この金額で」と価格を決めて、その価格で買主を探す方法は、1952年に宅建業法が施行されてより現在まで主流として業界に浸透しており、不動産仲介業者にとっては親しみやすくラクな取引手法なのです。


また、オークションの方式をどんなものにするかは、相当、考えねばなりません。たとえばヤフオクでは「即決価格」といって、オークションの出品者が「この価格で買ってくれるなら、オークションをストップして売る」という仕組みがあります。即決価格の仕組みは、あったほうがよいのか、そうでないのか。


私たちは即決価格の仕組みを今は採用していません。即決価格をつけると、せっかく競り上げの競争が起こっても、価格に上限を与えることになってしまい「高く売る」という目的に適合しないのです。こういうことをいちいち全部考える、というのは「ノウハウ」のひとつといえましょう。


オークションの方式の設計には、「神は細部に宿る」というようなところがあります。生兵法はケガのもとですから、私たちはオークションを専門とする大学の研究者と共同で「これが高く売れる」というものを設計し、用いています。私たち以外にも不動産をオークションで売る業者はいますが、ここまで本格的にオークション方式を入念に検討するところは無いのではないかと自負しています。

不動産仲介業者はオークションをしたがらない!?

これは少し申し上げにくいことなのですが、実はそもそも不動産仲介業者は、売主様の物件を高く売ることに、売主様ほど熱心ではありません。これは倫理の問題ではなく、インセンティブ(誘因)の問題です。


というのは、たとえば不動産仲介業者ががんばって、物件を本来より100万円高い金額で買主に売ったとしましょう。100万円は大きな金額ですから、売主様は喜んでくれます。しかしこのうち不動産仲介業者に加算される手数料は、3%、つまり3万円です。3万円の報酬増加のために、大きな労力と時間を費やすリスク(他業者がより条件の良い買主を見つけて来るかもしれない)を払って100万円高く売るより、しっかりと契約(インセンティブ)を確定させ、早く次の案件に取り組みたい、というのが本音でしょう。


以前、ベストセラーになった行動経済学の本『ヤバい経済学』(レヴィット・ダウナー著、東洋経済新報社)を読んでいると、まさにそれを示したデータ分析の結果が載っていて、「ああ、やはり」と膝を打ったことがあります。不動産仲介業者の人間は、他人の物件を売るときには早く売ることを優先し、逆に自分の物件を売るときは、時間をかけてでも高く売ることを優先する傾向があるという内容でした。


だからオークションのほうが高値になりやすいといっても、主流ではない取引手法で、そんな手間暇がかかることは、不動産仲介業者はやりたがらないのです。ではなぜ私たちは、そんなことをやるのか。これは、オークションで高値を追求することが、私たちが売主様に提供する価値だからです。市場における私たちの存在意義がこれだから、というのが一番の理由になります。

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