修正課題は「前さばき」をしてから伝えることが重要
テストフェーズに入ると、テストと並行して不具合やバグの修正作業に追われることになります。不具合やバグを発見することがテストの目的ですから、これは当然のことです。
私たちの業務は、日本のグローバル企業のグローバル・プロジェクトの支援ですから、日本のユーザー企業が実施したユーザー受入テスト(UAT)の結果生じた不具合を海外ベンダーに正確に伝えることが重要になります。
日本のユーザー企業から出てきたUATの結果レポートを、ブリッジSEに渡せば済むのでしたら話は簡単ですが、実際には言葉の問題で意図がうまく伝わらず、修正作業が難航することがあります。
中国のベンダーにオフショア開発を依頼したときも、修正作業が滞ったことがありました。そこで私たちが間に入って、課題(バグや不具合の内容)を前さばきしてからブリッジSEに渡すようにしました。
具体的には、個々の課題に対して必要な対応を明確化しました。そのために、かなり手間がかかりましたが、図表を作成して、修正依頼書に添付しました。
中国の開発メンバーは、アクションが明確であれば、極めてスピーディーに対応してくれます。発注元も中国ベンダーの能力の高さを認めて増員を承認してくれたので、滞っていた課題の山は瞬く間に解消されていきました。
図表の作成は、かなりの労力がかかります。そこで、最近ではリモート会議用のアプリケーションを使って、その場で簡単な図表を描きながら説明し、会議の結論を残しておいて双方が合意したというエビデンスにすることで、効率化を図っています。
直接会話するほうがモノゴトは早く進みます。リアルに会えなくても、リモート会議でかなり代替できます。
単独ベンダーとPMOが直接契約するのが望ましい
日本では中規模以上のプロジェクトになると、マルチベンダーで進めることが多いのですが、ベンダー同士の連携がいいと感じます。狭い国の中なので、次の仕事でも一緒になるかもしれないという気持ちが働くのでしょう。
ところが海外のベンダー同士では、日本のベンダー同士のような連携はあまり期待できません。時にはベンダー同士が対立することもありますが、現地語でやり取りされると私たち日本人には、そもそも何を揉めているのか分からず、仲介できないときもあります。
特に問題になるのは、私たちのお客様である発注元が直接契約しているベンダーと私たちPMOとの間に契約関係がない場合の調整です。この場合、発注元が契約しているベンダーは、私たちにはコントロールできない状況になります。
このような事情があるので、グローバル・プロジェクトではできるだけ単独ベンダーとPMOが直接契約すべきだと言えます。
とはいうものの、保有技術や業務知識の関係からマルチベンダーで体制を作らざるを得ないこともあります。その場合には、
●商流を1つにして、全てPMOの配下にする
●どうしても無理な場合は、発注元から権限委譲する旨の覚え書き等を交わす
以上の2点に留意して進めることがプロジェクト成功のコツになります。